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PEST分析の意味と存在意義と分析する必要性について解説しました

      2019/03/19

PEST分析の意味と存在意義

以前、PEST分析は、やり方によっては、大変作業量が多く、迷走してしまう危険性が高いフレームワークであることを解説しましたが、PEST分析の意味(用語としての意味だけでなく、分析をやる意味)と概要について、ここで触れておきたいと思います。

また、PEST分析の有意義さを最大活用する方法として、PEST分析の進め方と収集・整理・示唆の仕方、実践上での注意事項、そして問題点についても述べたいと思います。

PEST分析の用語としての意味

PEST分析の用語としての意味は、このサイトだけでなく、さまざまなサイトでも紹介されていると思いますが、簡単にいうと、外部環境を洗い出し分析するためのフレームワークです。
世の中にあふれている既知の情報から、現在だけでなく将来の自社の経営に影響を及ぼす可能性があることは何か?といった要因を判別し、分析するためのツールです。

PESTとは、政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Social)、技術(Tchnology)の英語の4つの頭文字ことで、外部環境をこの4つの視点で分析します。それぞれの視点から、自社になんらかの影響を与えると考えられる情報を収集し、整理し、どのような影響があるのか、今後どのような変化が予測されるのかといった示唆を出すことが求められます。

外部環境といっても様々ですが、とりあつかう情報は前述のとおり「外部情報」です。
外部情報とは、企業を取り巻く社外の情報のことですが、その外部環境にしても、様々あると思います。たとえば、顧客との取引情報や、仕入先から購入するある部品の価格情報なども外部情報ですよね。PEST分析ではそのような細かい情報を入手しても、あまり意味がありません。

PEST分析にとって意味がある情報

PEST分析にとって意味があるのは、企業を取り巻く外部環境の情報のうち、マクロ環境と呼ばれる情報です。部品の価格や特定の顧客情報ではなく、より大きなグループや、あるまとまりの動向の情報です。
たとえば、市場(顧客群全体)の嗜好の移り変わりや、業界を構成する技術トレンドの流れなどがそれです。
それらのマクロ環境のうち、現在または将来の自社の経営戦略や事業計画に特に影響がかかる情報を集めることで、ようやく意味のある分析がでいるようになるのです。

ここで気をつけなければならないのは、外部情報は探そうと思えば無限に探すことができるものなので、それらのうちどの情報が有益で意味があるのかを判断する必要があるのですが、PEST分析の目的はあくまでも得られた情報からの「示唆」にあるのであり、情報を正確に分類することではないと認識しておくことです。

マクロ情報に意味がある理由

前述のとおり、PEST分析が取り扱う情報は大きなまとまりの動きに関するマクロ環境の情報であり、いわゆる「世の中の流れ」や「業界動向」「市場動向」と言われるものです。
これらの情報を入手し、示唆を出すことによってPEST分析に価値が生まれる理由は、これらのマクロ環境の情報は、基本的には自社でコントロールできないものであるからです。

無知の知という言葉がありますが(自らの無知を自覚することが真の認識に至る道であるとする、ソクラテスの真理探究への基本になる考え方)、PEST分析においても、基本的に世の中の動きは未知であり、その中で自ら生存する方法を模索するという意味で価値があるのです。
自分がコントロールできない情報が何かを知っておくことで、環境適応するための道をさぐるということですね。

マクロ情報に意味がある理由

ここまでPEST分析の用語の意味やPEST分析をやる意味について述べてきましたが、ここで収集、整理、分析する情報についても項目例を少し触れておきたいと思います。

PEST分析の4つの環境要因

PEST分析は4つの要因について、自社に関わるマクロ環境を分類して分析するフレームワークです。それぞれについて押さえておきます。

Politics(政治的要因)

政治的要因とは、法律や税制、公的な支援制度や国際的な動向などを指します。市場競争の前提とも言えるルールそのものに多大な影響を与えます。

  • 政治体制の変化
  • 政策・税制
  • 法規制(規制緩和、規制強化)
  • 裁判制度、判例
  • 政治団体の傾向

Economy(経済的要因)

経済的要因では、景気や株価、物価また雇用情勢や賃金の動向などを分析します。
一見、社会全体の景気が良いように見えても自社業界はその波に乗れていないこともあるので、数値や事実に注意した情報収集が必要です。

  • 景気動向・経済成長率
  • 物価(インフレ・デフレ)
  • 経済成長率
  • 金利・為替・株価
  • 市場トレンド

Society(社会的要因)

社会的要因では、人口の増減、世帯構成の変動、文化・流行、犯罪や地球環境などの社会問題、世論、教育、宗教などが影響します。近年、SNSなどの広がりにより人間関係のつながり方も変化してきました。

  • 国勢、人口動態
  • 世論、流行
  • 教育
  • 治安や安全保障
  • 宗教
  • 自然環境

Technology(技術的要因)

技術的要因では、技術の進化やビジネスの自動化、特許など多様なビジネスチャンスをはらんだ市場環境を表します。
技術の進化は、あらゆる分野でビジネスチャンスを生みます。進化のスピードも一定ではなく、時に想像を超えた進化をもたらすこともあります。

  • 技術開発(イノベーション)
  • 技術投資レベル
  • イノベーションの普及度
  • 特許

PEST分析の基本的な進め方

PEST分析の基本的な進め方として、注意すべきことは、PEST分析を始める前に自分たちが何のために分析しようとするのか、具体的な目的やゴールを再確認しておく必要があります。
そのためには、仮説を立てておくことがとりわけ重要となってくるでしょう。

詳しくは、【超初心者向け】PEST分析とは?PEST分析の基礎知識と進め方をご覧ください。

情報収集に際して、とくに自社に影響を与える重要な要因を見落とさないことが重要です。
また、いきなり情報収集をするのではなく、最初に必要な項目や想定される要因を書き出してから、PESTのフレームワークに沿って、グッドニュースやバッドニュースなどに分類する項目わけをしてから、抜け漏れがないかどうかをチェックしながら情報収集をはじめることが重要です。

1. PEST分析の目的を理解する

競争環境の変化を予測することで最良の戦略を描くには、そもそも自社の課題、自社が属する課題といった課題意識をもってPEST分析をすすめないといけません。PEST分析の目的として以下のような事柄が考えられます。

  • 市場の変化をつかみ事業機会につなげる
  • 市場の変化を見逃さず、自社にとってのリスクに備える

2. PESTの情報を集める

目的が明らかになれば、今度は実際に情報を集めます。
上述したP、E、S、Tの4つの要因について、できるだけ広範囲にわたって情報を集めます。
この段階では、情報の精査は行いません。

3. 分類する

集めた情報を活用するために、それぞれP.E.S.Tの4つの要因に分類します。
例えば、自社にとって<都合の良いこと>と<都合の悪いこと>に分けたり、<目先で変わりそうなこと>と<遠い将来変わりそうなこと>で分けたりするなどして整理します。

4、示唆を出す

上記の分類した情報を4つの要因について、「機会とリスクのどちらに該当するのか」を見極めます。
この段階が一番大切で、自社を取り巻く市場環境に潜むビジネスチャンス=機会とリスク=課題を明らかにすることで、より効果的なマーケティング戦略を打ち出すことができます。

PEST情報の収集時の意識の持ち方

PEST情報を収集する意味と価値がわかったら、実際に情報の収集と整理をし、4つの視点で集めた情報から示唆だしをしてみましょう。

とはいいつつも、情報収集の仕方や整理の指針といったものがなく漠然と始めても、混乱するだけですよね。
では、どういった整理の仕方が必要で、示唆を得るにはどういった着眼点が必要なのか、以下のとおり、まとめてみたいと思います。

詳しくは、PEST分析の基本、基礎知識や情報収集と整理の具体例です。をご覧ください。

問題意識を持つ

一企業が、全世界のすべてのPEST情報を集めることには、あまり意味はありません。その企業が抱えている問題意識や解決したいと思っている課題に対して、領域を絞って情報収集する必要があります。
つまり目的に応じて情報を収集するということですね。たとえば、自社が属している業界のPEST情報なのか、それとも新規参入しようとしている周辺領域のPEST情報なのか?といったことです。

変化の流れを知る

4つの視点で情報を集めるとき、もっとも重要な着眼点は「変化」です。
PESTの視点で、これまではの常識や固定観念は何か?、そして今、何が起きていて、何が変わろうとしているのか?といった、背景と変化の原因を知っておくことが、大局的な理解につながります。

先を読む

変化を理解していくと、次第とその変化の先が気になってくるはずです。
このまま変化がおこると、次に市場はどういう反応をするのだろうか?規制は緩和されるのか?強化されるのか?といった着眼点です。

他の要素との関係を見る

PEST分析でだれもが失敗してしまうことが、それぞれの4つの要素だけで完結してしまうことです。
PESTの4つの視点は、つねに連携を持って変化が起こっています。ある変化によって、時間の経過とともに、他の要素に影響が及ぼされていきます。
この関係を理解することで、先読みができるようになってくるでしょう。
その結果、一企業としてできる最適解を導き出すことが出来るようになるのです。

漏れダブりを探す

PESTの4つの情報を何らかの軸(時間、空間など)で切って情報を整理していくと、これまで気付かなかった漏れに気づくことがあります。また、時間をかけて同じ情報を集めていることに気付くこともあるでしょう。漏れダブりに気をつけることは情報収集と整理には不可欠な着眼点です。

PEST分析を効率よく成功させるために覚えておくべきこと

PEST分析の難しいところは、教科書的な進め方をすると、まったく役に立たない情報の集まりができてしまうことです。

詳しくはをまじめにやると行き詰ってしまうPEST分析の目的とテンプレートを解説!ご覧ください。

そもそもPEST情報は多岐にわたり、集めようと思えば際限なく集めることができるものです。また、得られた情報を基にSTP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを決める分析手法)をし、さらに4P分析(マーケティングミックス)していくなど様々なビジネスフレームワークを活用して更なる分析を進めることができるものです。
しかし、私の経験から言うと、際限なく情報を集めて、できるだけ深い分析をしようとすると、いわゆる「情報の海の中で漂流する」ことになってしまうので特に注意が必要です。

PEST分析では情報の海での漂流と自己目的化に注意

また、実務上でいうと、ただ情報の海で漂流する危険があるだけでなく、経験がない人がやってしまうと、手段が目的化してしまう危険もあります。
情報収集と情報の整理はそれだけでも多大な工数がかかりますが、効率的な情報収集や整理には、やってみると結構職人並のノウハウや工夫が必要であり、いつの間にか技術を駆使し美しくまとめることに夢中になってしまい、たいていの場合、示唆を抽出するという大切な作業が忘れ去られてしまうからです。
このように、PEST分析は、テンプレートの進め方ややり方をきちんと理解しないと、当初の目的を途中で見失ってしまったり、情報収集と整理が目的化されてしまい、間違った方向に行ってしまいかねません。

PEST分析の各要素間の相互依存関係を探す

PEST分析に限ったことではありませんが、ビジネスに関するフレームワークでは、テンプレートのそれぞれの要素(PEST分析でいう政治、経済、社会、技術)が独立して記載されていては、まったく意味がありません。
アウトプットを得る示唆を出すためには、テンプレートのそれぞれの要素に横たわる相関関係や依存関係を紐解くことが、何よりも重要です。
ただ単に、規制緩和がありそうからチャンスだ!とか表層的な情報収集をするのではなく、規制緩和の背景にある社会の変革と顧客ニーズの変化や経済活動の動きがどのようにリンクされているかを理解しないと、外部環境の変化の本質が見えなくなってしまいます。

PEST分析からはアイデアは出にくい

個人的な経験でもそうですが、社内で苦労している人が多いことから見ても、PEST分析の結果からいいアイデアが思いつけるという期待は捨てたほうがよさそうです。
現在の業界のしくみや、外部環境の構造を把握することは出来るかもしれませんが、そこから新しい発想を得ようとしても、すでに業界内の制約条件ばかり情報収集してしまっているので、なかなか発想を飛ばすことが出来ないようです。

PEST分析まとめ

これまで、PEST分析の存在意義、PEST分析の基本的な進め方、PEST分析の情報収集時の留意点、そして効率よく成功させるために覚えておくべきことについて述べてきました。

まず、PEST分析をやる意味は、そもそも世の中は、自分でコントロールできないことばかりであることから、外部環境とくにマクロ環境の変化などの情報を入手し、整理、示唆を出すことによって、自社が生き抜く道を見出すことでした。
こういった考え方は、環境適応理論(コンティンジェンシー理論)と言いますが、なにも企業活動に限定された話ではなく、生物学的にも同じ考え方があります。ダーウィンの進化論ですね。

企業を取り巻く環境は日々変化するため、外部環境の変動やトレンド動向を確実にとらえることが必須です。

基本的な進め方についてまとめると、
・PEST分析は、政治、経済、社会、技術の4つの視点で、自社を取り巻く外部環境情報を収集し、何かしらの示唆を得る手法であること。
・お勧めの手順としては、まず仮説やアイデアがある状態から始めること。
・PEST分析の出番は、仮説やアイデアの裏づけや新しい課題を見つけること。
・4つの視点の相互関係を気をつけながら示唆を出すこと。
でした。

また、注意すべことは、
・情報の海でおぼれないように気を付けること。
・アイデア出しのツールとしては使わないこと。
を述べさせていただきました。

ここで書かれたことは、一般的には、あまりいわれていることではないと思いますが、実務上私がいつも思っていることですので、みなさんのお役に立てれば幸いです。

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