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自動車業界を例にして「PEST分析」の使いかたを解説してみました

      2018/10/23

自動車業界を例にして「PEST分析」の使いかたを解説

新規事業を担当している人であれば誰でも、既存事業の成長に限界を感じていたり、市場ニーズの変化やテクノロジーの発展にあわせて、収益構造を変化させなければならないと、危機感を感じていることでしょう。
このような危機感から、多くの方が、さまざまな情報収集をしたり、収集した情報を分析するといった「現状把握」を始めることになると思います。

現状把握に限らず、課題の本質の探究や、解決策の捻出、あるべき姿の模索といった一連の活動の中では、常に優れた分析手法が求められるものです。
それらの分析手法の中には、思考の手順や枠組みがあらかじめ定型化された「フレームワーク」と呼ばれる分析ツールがあります。
これらのフレームワークを上手に使うことで、適切な状況把握などを経て最適な意思決定ができるようになるはずです。

今回は、このようなフレームワーク中でも、とくに外部環境分析のフレームワークであるPEST分析について自動車業界の例を使って、具体的な使い方を解説していきたいと思います。

外部環境分析のためのフレームワークが「PEST分析」

いきなり自動車業界の事例に入る前に、すこしだけPEST分析の基本的な知識について解説しておきます。

まず、上述の通り、PEST分析は外部環境を分析する情報収集フレームワークですが、そもそも「外部環境」とは何でしょうか?外部があるということは内部もあるのでしょうか?簡単に言うと、外部環境とは「自分でコントロールできないこと」であり、内部環境は「自分でコントロールできること」です。
では「コントロールできる」とは何か?というと、それは、意思決定できること、実行できること、変えることができることなどを指します。
当然、外部環境と内部環境のいずれも把握したうえで、これから力を入れるべき領域は何なのか?といった意思決定を下すべきであり、その意思決定のための分析の一端を担うのがPEST分析なのです。

  • 外部環境 : 自分の意思でコントロール(決定・実行・変革)できない対象
  • 内部環境 : 自分の意思でコントロール(決定・実行・変革)できる対象
  • 外部環境と内部環境は二つで一つ

なお、ここでは詳しく述べませんが、内部環境分析にもいくつかフレームワークがあり、代表的なものとしてバリューチェーン分析、VRIO分析などがあります。これらのフレームワークを使い、自社の強みや強みの源泉などを把握することになります。

また、PEST分析の名前の由来ですが、代表的な外部環境である4つの要素の頭文字からとって命名されました。それらはP:政治(Politics)、E:経済(Economy)、S:社会(Society)、T:技術(Technology)の4つです。ちなみに、PEST分析はマーケティングの理論で著名なコトラー教授によって考案されたフレームワークです。

  • P:Politics(政治)
  • E:Economy(経済)
  • S:Society(社会)
  • T:Technology(技術)

要するに、ビジネスを取り巻く環境を大まかに「政治」「経済」「社会」「技術」の4つの領域に分けて、個別に情報収集・整理・分析を進めることで、現在の状況や今後の動向を調査していくことが、PEST分析ということです。

では、さっそく、PEST分析を用いた実際に「自動車業界」を分析してみましょう。

自動車業界でPEST分析をやってみよう

これまでの解説で、おおまかにPEST分析の概要はお分かりいただいたと思います。
4つの領域についての調査方法と問題点については、過去に記事に書いていますので、そちらを参考にしてください。
まじめにやると行き詰ってしまうPEST分析の目的とテンプレートを解説!
ただ、PEST分析の概要や個別の領域の内容を理解したところで、実際に自分でPEST分析をやってみるとなると、どうやって進めていけばいいのか、なかなか想像ができなものです。

そこで、今回は、自動車業界を例にとって、具体的なPEST分析の進め方のイメージをつかんでいただこうと思います。

政治面における自動車業界の現状と未来

PEST分析の基本的な進め方として留意すべき点は、以下の二つです。

  • 現時点で起こっていること、課題、トレンドなど
  • 将来起こりうること、予測、反応など

これらを念頭に置いて、政治面で自動車業界は現時点でどのようなことが起こっており、将来とのような対応が必要になってくるのか、ネットなどを使って調べてみましょう。
ちなみに、情報収集のコツは、時間を決めてやることです。インターネットの普及によって、いまでは調べようとすれば、どこまでも調べることができてしまいます。
そうすると、ずぶずぶと際限なく調査に時間をかけてしまい、目的を見失った情報収集となってしまうし、収集後の作業に苦しむことになってしまいます。
今回は、さらっと「政治的要因」や「規制」「緩和」10分程度の調査で分かったことは以下のような情報でした。

軽く3記事程度をピックアップしましたが、これらの記事内容が将来にどのような影響を及ぼすのか?それは短期的な影響なのか長期的な影響なのか?そういった今後の予測を交えながら、自社の戦略を考えることがPEST分析の進め方の基本です。
たとえば、EV(電気自動車)を国が推し進めるということは減税の対象となり、普及スピードが増すのではないか?また、TPPでは自動車は影響が小さいと考えられるので、米国でのシェア拡大がこれまで以上に進むのではないか?その一方で中国の規制緩和のため成長著しい中国市場では苦戦が強いられるのではないだろうか?といった具合です。

経済面における自動車業界の現状と未来

次に経済的側面で自動車業界に影響を及ぼしている情報は何かないでしょうか?
「景気」や「設備投資」「購入」などのキーワードでネット検索してみましょう。

自動車業界に限らず経済的要因で影響力のあるキーワードは、世の中の景気や、企業の設備投資、そして消費者の購買意欲に関するものでしょう。ほかにも採用や失業率といったキーワードなど、日ごろの情報収集活動の中で、特に気になるキーワードで情報収集することで、産業を絞り込んだ検索をすると有益な情報を収集することができるでしょう。

これらの記事を読んでみると、現時点では国内での生産が縮小する傾向にあり、そのうえ設備投資が海外で活発に行われるのであれば、もしかすると将来的に国内景気に与える影響が小さくなってしまう可能性があるかもしれません。また、国内の購買傾向や普及予測を鑑みると、特定の車種へのニーズの変化が読み取れるかもしれません。
このように情報収集した結論を組み合わせていくことで、なんらかの示唆を出すことがPEST分析では求められるのです。

社会面における自動車業界の現状と未来

あくまでも個人的な見解ですが、PEST分析をするときに、実は一番難しいのが社会面での情報収集だと思っています。なぜなら、ほかの領域であれば比較的簡単に検索するキーワードは思い浮かぶのですが、社会面であればキーワードが思いつきません。
たとえば、上述のように政治面であれば、「規制」「緩和」「政策」「政府」といったキーワードですし、経済面であれば「景気」「不況」「労働」「貿易」「購買意欲」といったキーワードが思い浮かびます。
技術面での情報収集が一番楽で、「技術トレンド」「テクノロジー」、「スタートアップ」といったキーワードで調べることができるでしょう。

その一方で社会面となると、「社会課題」といったキーワードは大きすぎますし、「犯罪」や「少子高齢化」「女性の社会進出」といったキーワードでは、産業によっては的外れの場合もあります。ということで、社会面に関しては、ニュースなどである程度の業界特有の知識を持ったうえで検索する必要があると思っています。
たとえば「車離れ」「高齢者事故」などはどうでしょうか?

技術面における自動車業界の現状と未来

さて、最後が技術面での自動車産業の現状と未来です。ここでは上で述べたように「技術トレンド」「テクノロジー」などのキーワードで調べることでたくさんの情報を得ることができるでしょう。

技術面で情報収集するときに気を付けなければならない点は、なんといっても大量の情報が集まってしまうことです。
いままで上げてきた3つの領域とは桁違いの情報を仕入れることができると思いますが、PEST分析の目的は情報を集めることだけではありません。
仕入れた情報を分類・整理し、因果関係を紐解き、示唆をだすことにほかなりません。
技術的なトレンドを理解するだけでは意味がなく、技術トレンドの背景がどのようなテクノロジーの文脈に沿っているのか、そしてそれらの技術が他の3領域とどのような影響を及ぼしあっているのかを、洞察する必要があるのです。

たとえば、政治面で出てきた「次世代自動車の戦略会議でEVを重視」は、おそらく排ガスなどが自然環境にあたえる社会的な文脈が隠されているはずですし、貿易といった経済面とも深く関係していることでしょう。
10メーカーによる公道での自動運転技術の実証実験も、技術的な発展の裏付けがあってできることです。
さて、これらの領域の因果関係がわかったとしたら、このさき自動車産業としてはどのような未来が待っているのでしょうか?

このように、PEST分析では、それぞれの領域がお互いに影響を及ぼしあっている現状の相関関係から、将来を予測することに大きな意味があるのです。

今回は、ここまでとさせていただきます。
自動車産業を参考例としてPEST分析を進めてきましたが、いかがでしたでしょうか?
お役に立てればうれしいです。

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