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【入門編】PEST分析の4つの外部環境の構成要素を、例を使って説明します

      2018/11/05

PEST分析の4つの要素

変化の激しい現在のビジネスシーンでは、外部環境の把握は欠かすことができません。
成功した企業やその商品は、必ず世の中の流れや流行に逆らわず、波に乗っているものです。それまでの習慣や価値観にとらわれていては、時代の波に乗ることはできません。
PEST分析は、自社を取り巻く外部環境を、政治的要因(P)、経済的要因(E)、社会的要因(S)、技術的要因(T)の4つの視点で分析することで、環境変化を的確に読み解き、事業を成功に導くことを目的としたフレームワークです。
マクロ環境が自社に及ぼす影響を把握することで、ビジネスチャンスを見逃さず時代の波に乗ることを目的としているのです。

今回は、PESTの4つの要因について実際どのように読み解けばいいのか、基本的な分析内容、具体例、重要性など解説していきたいと思います。

政治的要因とは

政治的要因が自社に影響を及ぼす要素を例示すると、以下のようなものがあげられます。

  • 法改正・判例・規制緩和
  • 税制の変化
  • 政局の動向
  • 政治思想の潮流、変化
  • 補助金制度・交付金制度・特区制度の変化

規制など「市場のルールを変化させるもの」と捉えることができます。

政治的要因の分析例

2015年、食品業界では機能性表示食品が解禁となりました。
それまで「トクホ(特定保健用食品)」や自己認証が必要だった「栄養機能食品」は、個別認可が必要でした。この規制緩和により、機能性表示食品は、事前届出のみで機能性の表示が可能となりました。
2018年現在、数多くの機能性表示食品が販売されています。

この規制緩和が食品業界にもたらしたことは、食品業界内だけでの競争ではなくなり、他の業界例えばサプリメントの販売元などとも競争をすることを余儀なくされることとなりました。
この規制緩和による変化を察知し、早くから準備を進めたブランドにとっては大きなビジネスチャンスとなりました。反対に、対応が遅れたブランドにとっては自社の市場が縮小される脅威と向き合うこととなりました。
それまで法律によって守られてきた「食品の機能性表示」の解禁は、消費者に明確に示されることから、機会をとらえたブランドと課題を残したブランドに分かれることとなりました。

事例からも分かる通り、政治的要因の変化は市場の競争ルールそのものに変化を及ぼします。それまでの商習慣は通用しなくなる可能性があるということです。特に税制の変化は、消費者の経済活動をも変化させる可能性が高く、何もしなくても売れていたものがぱったりと売れなくなるということも考えられる事態です。つまり、政治的要因を無視して生き残ることはできないのです。

経済的要因とは

経済的要因がブランディングに影響を及ぼす要素を例示すると以下の通りとなります。

  • 景気動向の変化
  • 賃金動向の変化
  • 物価・消費動向の変化
  • 為替の変化
  • 金利の変化
  • 株価の変化

景気や経済成長など「価値観の連鎖に影響を与えるもの」と見ることができます。

経済的要因の分析例

すべてのビジネスは、働く人と商材(商品やサービス)があって成り立ちます。したがって、人や原材料の需要と供給のバランスは、自社に影響を与える経済的要因の代表的な要因のひとつといえるでしょう。

食品業界を例にとると、天候の変動により収穫量が変動するため、原材料として仕入れる側にとっては、価格の変動には常に気を配る必要があります。また、人件費は特に人手不足状態が続くとコストは上がり続けると予想されます。
食品の原材料を確保するためには、天候や災害に気を配るだけではなく、原材料の価格変動要因として人件費の変化や経済構造(第一次産業の産業構造など)にも注意する必要があるのです。
さらに、原料を輸入するとなると収穫量だけではなく為替の変動も価格に影響します。
このように、経済的要因を俯瞰的、網羅的に把握することが重要となってくるのです。

事例で示した通り、経済的要因の変動によって、これまでの常識が通用しない日が来ることも視野に入れなければならないとわかります。これまで企業努力で価格を安く保てていたり、品質を高く維持できていたものが、経済的な要因でそれらを維持できなくなってくることもあるのです。
収穫量の減少による輸入量の減少や原材料の値上がり、人件費の高騰による経営圧迫などで、瞬時にこれまでの自社の強みを失う可能性もあるということです。
常に、幅広い視野をもって経済動向を注視することが重要なのです。

社会的要因とは

社会的要因がブランディングに影響を及ぼす要素を例示すると以下の通りとなります。

  • 人口動態の変化
  • 社会インフラの変化
  • ライフスタイルの変化
  • 社会事件
  • 流行

人口の動態など「需要構造に影響を与えるもの」です。

社会的要因の分析例

2018年現在、未婚者の増加、離婚者の増加、単身高齢者の増加が顕著で単身世帯への対応が必要となっています。
食品業界では、この単身世帯の増加を好機として「小容量化」や「小分け包装」の商品を増やすなどの動きが盛んです。また働く女性の増加により、買い物に時間がかけられないなどのニーズから、ネットスーパーの利用者が増える、時短商品の需要が生まれるなどの変化が見られます。
それまでの「まとめて買うとお得」な商品は、時代に合わなくなってきています。

生活者の価値観は刻々と変化しています。
流行の変化や少子高齢化などの家庭環境の変化だけではなく、不要不急なものは買わないというような購買活動そのものの価値観の変化などもあります。給与の上昇が見込めないなどの環境下では、どんなに魅力のある商品を提供をしても効果が出ない場合があります。
また正規雇用が減り、時間外労働がブラック企業として嫌われるようになったことなどから労働力の不足も深刻です。時間給労働者の増加でサービス早出やサービス残業などはもってのほかで、そういった時間に片付いた業務が事業そのものに使える時間を減らし、経営を圧迫する一要因にもなっています。
消費者の購買活動もバブル期のような「大きく稼いで大きく使う」流れは去り「少なく働いてつつましく暮らす」というような価値観の若年層が増えていることも消費行動の変化として現れています。正社員でも昇給が見込めない、時間給で給与収入が増えない若年層が増えていることからそれまで当たり前に売れていたものが、簡単には売れない時代になりました。
これらのすべてが需要構造の変化につながっています。

技術的要因とは

技術的要因がブランディングに影響を及ぼす要素を例示すると以下の通りとなります。

  • ビッグデータ
  • IT・デジタル技術
  • 設計技術
  • 研究開発技術
  • 生産技術

ITなど「企業間の競争」に影響を与えます。

技術的要因の分析例

食品業界における技術革新として代表的な動きにAgTech(アグテック)があります。
AgTechとは、農業とテクノロジーを組み合わせた造語であり、ITやロボット・AIの活用による生産性向上を図る技術革新のことですが、農林水産省も技術革新にとどまらず、経営者の生産性向上に対する意識向上といったことを目的として研修会等を開催するなど、非常に注目を集めている活動です。
これまで経験や勘などで対応してきた耕作を、蓄積したデータの分析を活用することで、品質のばらつきや収穫量の格差をなくすなど、より効率的に生産することが可能になるだろうとされています。

このように、技術的要因の変化は、生産活動や競争の土台となる産業構造の大幅な変化を招き、業界内のKSF(キーサクセスファクター:重要成功要因)をも変えてしまいます。
インフラやイノベーション、特許などで新技術が次々と導入されていくことで、これまでの価値観が通用しないということになりますので、技術的要因は特に情報が必要となります。
小さな変化と見えていたものが、しばらく目を離したすきに大きな変化をもたらし、時代に取り残されるというのはありえない話ではありません。技術の進歩は、その進化のスピードにも注意する必要があります。

まとめ

PEST分析は、自社ブランドを取り巻くマクロ環境の変化をいち早く捉えて、自社の生き残りを図る上で大切な分析手法です。国内にとどまらず海外を視野に入れている事業体の場合は、特に自社の置かれている環境を分析する必要に迫られます。
国内で習慣化されてきた商習慣は通用しないと考えなければなりませんし、自社のこだわりが足かせとなる場合も考えられます。
自社の努力だけではどうすることもできない外部要因を、脅威として捉えるばかりではなくビジネスチャンスと捉えていくことは、それまでの事業の幅を大きく広げ自社の可能性を広げることにつながります。海外進出の際にも、足場を作ることにつながります。
国内外の変化を繰り返す時流に乗っていくことは、事業体としての体力を身につけていくことであり、変化に振り回されない体質を作ることにもつながります。
時代の流れを味方につけるためにも、より精密な分析をするためにも、各要素について理解し有効に活用することが必要です。

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