リーダーシップ研究「マネジリアル・グリッド論」とは何か?
リーダーシップ論で欠かすことができない論点として、リーダーシップのタイプや型の研究があります。
ここではテキサス大学の教授だったロバート・ブレイクとジェーン・ムートンの2人が提唱した『マネジリアル・グリッド論』をご紹介します。両氏はリーダーシップにおける行動理論としてこの理論を研究し、リーダーシップの重要な評価基準を「人」と「業績」の2点に絞りました。
『マネジリアル・グリッド論』の「グリッド」とは「格子」のことをいいます。
この理論では座標を用い、縦軸を組織やチーム内の「人への関心度」、横軸を「業績への関心度」とし、それぞれ9段階に分け、真っ直ぐ線を引きます。
すると座標上に81個の四角いマスが出来あがります。この出来上がったマス目ひとつひとつをマネジメント・グリッドと呼び、リーダーがどういうタイプなのかをこのグリッドに当てはめて考えていきます。
理論の中では座標の四隅と中央の5つの典型モデルとして分類しました。
座標上の位置を型として提唱しており、5つとも「X座標.Y座標型」と表示します。それぞれ「○が横軸=業績関心度の値」「△が縦軸=人間関係の関心度の値」を表し、数字が大きいほどその方面を重視した考え方、という見方をします。
- 1.1型(放任型リーダー):
座標の左下。業績にも人間関係にも無関心。 - 1.9型(人情型リーダー):
座標の左上。業績を犠牲にしてでも人間関係への関心が高い。 - 9.1型(権力型リーダー):
座標の右下。人間関係を犠牲にしてでも業績最大化への関心が高い。 - 9.9型(理想型リーダー):
座標の右上。業績にも人間関係にも関心が高い。 - 5.5型(調整型リーダー):
座標の中間地点。業績にも人間関係にもほどほどな関心を示す。
では具体的に5つのパターンを見てみましょう。
[audible]
1.1型(放任型リーダー)
放任型リーダーは、仕事にも人間関係にも無関心で消極的なパターンを表しています。
チームのメンバーが何をしていても気にしないため、無関心リーダーとも言えます。無責任な態度をとり「自分だけ大丈夫ならそれでいい」という考え方なのでメンバーからの信頼はほぼゼロです。
リーダーとしての機能が果たされていない状態ですので、組織にとっては危機的な状態とも言えます。このタイプの人はリーダーとしての素質を考える前に、チームのメンバーとしても不安を感じます。
1.9型(人情型リーダー)
人情型リーダーは、人間関係を重視しているが業績には無関心なタイプです。
業績・成果を上げることは二の次で、人間関係が円滑に進むことを一番に重視しています。利益を求める普通の企業というよりは、仲良しクラブやサークル活動であればリーダーとして人気が出るタイプかもしれません。
しかし通常の組織であれば、チームワークは抜群でも成果が上がらない場合、すぐでなくてもいずれはメンバーの生活を脅かすことにつながるでしょう。今は楽しいかもしれませんが、このタイプのリーダーがいる組織は時間が経てば崩壊するといえます。
9.1型(権力型リーダー)
権力型リーダーは、周りの事は見ないでひたすら業績を伸ばすことにのみ注力する、バリバリ仕事人間タイプです。
組織のメンバーを犠牲にしても成果をあげたい、というリーダーですので、トップダウンで物事が進み成果は上がるでしょう。
しかし全てのメンバーがこのリーダーの仕事ぶりについていけるかといえば、それは無理だと思います。メンバーがどう感じているかなど全く気にせずに仕事をしますから、部下の育成ということには関心がありません。
いざ後継者を、という時にこういったリーダーがいる組織ではとても困る可能性があります。また最悪の場合、メンバーが組織から離れていくことも考えられるので注意が必要です。
9.9型(理想型リーダー)
理想型リーダーは、リーダーのあるべき姿として理想形であると理論提唱者の2人が言っているタイプです。
組織の目標達成に尽力し、またメンバーの人間関係にも気を配る、まさに理想の上司像です。リーダーとメンバーとの間で密にコミュニケーションが取られるため、お互いに信頼関係が芽生え、活発な組織運営ができることでしょう。
人間関係が良好だと組織内の空気も良くなり、成果がスイスイ上がっていく、というように物事がスムーズに進むので、きっと無理なく成果を上げられると思います。
5.5型(調整型リーダー)
調整型リーダーは、「何事もほどほど」という省エネバランスタイプと言えるでしょう。
これといって突出するものはありませんが、仕事面でも人間関係面でも上手くバランスを取っているリーダーです。リーダーにがむしゃらさや押しつけがましさといった無理がないので、一緒にいるメンバーも負担に感じないところにメリットがあります。
「無理はしない」と言っても、業績や目標達成については適度に意識していますから、リーダーとして果たすべき最低限度は何だかんだでクリアしているのが特徴です。上昇志向は無いが、過労ペースになることもない、とても現代的な「ゆとり感リーダー」とも言えるかもしれません。
マネジリアル・グリッド論 まとめ
今回は、リーダーシップのタイプを分類した研究である「マネジリアル・グリッド理論」を紹介しました。
さまざまなタイプのリーダーシップがいると思いますが、みなさんの組織でよく見られるリーダーシップのタイプはどのタイプが多いと思いましたか?
リーダーシップのタイプは、組織の置かれた環境によっても、頻出するタイプやめったに見られないタイプなど、きっとばらつきがあることでしょう。
そのばらつきの程度によって、組織文化が形作られるのかもしれませんね。
一度、リーダーシップのあり方をマネジリアル・グリッド理論の表を見ながらディスかションしても面白いかもしれません。
どうでしたでしょうか?お役に立てたでしょうか?
著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。