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マイクロマネジメントを知っていますか? 部下への「過干渉」が生むパフォーマンスの低下と悪循環!

      2019/01/17

マイクロマネジメントとは

マイクロマネジメントって言葉知っていますか?簡単に言えば、上司の部下の行動に対する「過干渉」のことです。
組織の中で働いていれば、大なり小なり、よくある話ですよね。
代表的なマイクロマネジメントの行為としては、不必要なことまで詳細に報告することを義務付けたり、部下の行動を手取り足取り管理することなどですが、中には、部下の権限範囲内であっても自分に相談もせずに決めるような行為を嫌うなどといったケースもあるようです。

具体的なマイクロマネジメントとしては、たとえば、議事録の書き方をいちいちケチつけたり、報告書の書き方も自分のフォーマットに従わせたり、客先へのアポイントのとり方や会議の進め方、行動計画への内容への介入など多岐にわたって口出しする行為のことです。
もちろん、新入社員への教育や、はじめて経験する社員へのOJTの一環として行われている分については問題ありませんし、部下が自ら指示を仰いでくる場合において、このような指示をだすことはマイクロマネジメントとは呼ばれません。
上司の細部にわたる指示の出し方によって、組織のパフォーマンス全体を低下させたり、部下のモチベーションを下げるような過度の干渉行為を「マイクロマネジメント」というのです。

私は、このような上司の過干渉を勝手に「マイクロマネジメント砲」を呼んでいますが、この砲撃をうけた組織は、直撃を受けた本人だけでなくその周りにいる人たちも吹き飛ばすほどの破壊力があり、継続的に砲撃を受け続けてしまうと組織全体をぶち壊すほどの威力があると思っています。

マイクロマネジメントの症状と弊害

ではマイクロマネジメントによって引き起こされる症状と弊害について述べてみましょう。

長期的なパフォーマンスの低下

いちばん大きな問題は、組織全体のパフォーマンスが低下してしまうことでしょう。上司が部下の行動をいちいち管理することで、部下の自由な発想や創造性が阻害されます。その結果、主体性をもった行動がとれず、結果にコミットメントがない中で、萎縮した活動が強いられることになるのです。
パフォーマンスは、コミットメント効果によって影響されるので、コミットメントが少ない分だけパフォーマンスが低下することになり、結果に対して反省することも(逆に喜ぶことも)抑制されます。

短期的には、組織全体が上司の思う通りの行動をする(?)ので、運が良ければそれなりのパフォーマンスを発揮するかもしれませんが、そのためこの長期的なパフォーマンスの低下もしくは最適化を妨げている行為が隠れてしまい、後述するマイクロマネジメントの悪循環が発生してしまうのです。

部下のキャリア形成を妨げる

このような、指示の出し方を続けていると、部下は自信を喪失し自主性や自立性が低下してしまいます。その結果、部下は自分で考えて、自分で決定し、自分で反省するという「キャリア形成」のスパイラルを踏み外してしまいます。キャリア形成には、失敗できる機会と成功を体験できる機会が必要ですが、マイクロマネジメントによってこれらの機会が得られなくなってしまうのです。
上司がキャリアを形成してきたステップも、数多くの失敗と成功を繰り返してきたはずなのですが、部下にその機会を与えることを無意識のうちに妨げてしまっているのです。

リーダーシップのSL理論は、「上司のリーダーシップのあり方は部下のスキルの練度に柔軟に応じた対応が不可欠だ」という考えの理論ですが、マイクロマネジメントは、この思想を全力で無視する行為ですが、実は、上司も部下のスキルにあわせて指導の仕方を変えるべきだと思っているかもしれません。
いや、頭の中では、そういう風に思っている上司が大半だと思います。
マイクロマネジメント砲の怖いところは、上司が自覚することなく無意識のうちに発射してしまっているところなのです。

チーム全体のモチベーションと求心力の低下

このような上司のある部下への指示の出し方や行動を管理する姿勢は、チーム全体から見られています。
チームの行動指針は、上司の価値観によって規定されてしまうものです。
したがって、上司がマイクロマネジメントをしてしまっているチームは、何事にも進んで取り組む気力が失われてしまい、チーム全体としても自発的な行為が萎縮されるようになります。
このような雰囲気がチーム内に充満すると、上司に対する求心力が一気に低下し、最悪の場合上司の指示にたいして面従腹背になってしまいます。

さらなるマイクロマネジメントと悪循環

上司がマイクロマネジメントを行うことで、部下のキャリア形成を奪い、チーム全体のモチベーションが低下します。その結果、上司の求心力が低下し、指示に対して面従腹背になってしまいました。
そうなってしまうと、もうチーム全体のパフォーマンスは大幅に低下してしまいます。
しかし、上司はパフォーマンスの低下を補うために、部下の仕事のやり方をこれまで以上に管理するようになります。
つまり、部下の業務のすべてのプロセスにおいて意思決定を下すようになってしまうのです。そうすると、上司の業務量は増大する一方となるので、部下を育成しようとして、さらにマイクロマネジメントを推し進める「悪循環」を生んでしまいます。

このようなマイクロマネジメントの短期的な目先の効果と長期的なパフォーマンスの低下が繰り返されることで、マイクロマネジメントの悪循環が止まらなくなってしまうのです。

マイクロマネジメントの発生要因

こういったパフォーマンスの悪化の悪循環を生み出してしまいかねないマイクロマネジメントですが、そもそもなぜマイクロマネジメントは発生してしまうのでしょうか?いくつか要因があるといわれています。

上司の過去の成功体験への固執

マイクロマネジメントがいちばん発生しやすい要因は、上司の過去の成功体験への固執だと思います。
自分がいちばんいいと思うやり方を、意識的、無意識的に部下に押し付けてしまうのです。
自分にとっていちばんいいやり方が、常に最適な方法とは限りませんし、最適な方法は自分で考えて実施しないと身につかないことに気づいていないのです。
よかれと思ってやっていても、上司の成功体験を押し付けるのは、部下にとってアリガタ迷惑なだけかもしれません。

権威主義的な組織文化

組織全体が、権威主義的(組織内の強者や権威を無批判に受け入れる考え方)である場合も、マイクロマネジメントがおきやすいでしょう。
上下関係が絶対的な組織では、部下の行動を管理に対して批判がおきにくいものです。
本来は「上司」も「部下」も組織上の役割や機能が違うだけなのですが、上司だけが一方的にもつ人事権などの権限によって権威が生まれているのです。
権力をちらつかせる組織では、部下は育たないということですね。

上司の自己顕示欲

マイクロマネジメントは、上司の心的な側面からも生まれます。
つまり、自分がいちばんできるプレーヤーだという自己顕示欲ですね。
部下に指示を与えて育成しているつもりでも、いつのまにか「自分はこれだけのことを知っている」とか「自分はいろいろ経験してきた」といったことを誇示しているだけになっているかもしれません。
上司がいちばん配慮すべきなのは、部下が自分で考えて、自分で決断し、自分で実行できる状況を作ることです。
チーム内でいちばんできるのが自分だと思っている限り、チームのパフォーマンスは高まらないのですね。

目標達成への過重な圧力

マイクロマネジメントは、上司の性格や経験だけから発生するとは限りません。
組織全体が覆う目標達成へのプレッシャーや、市場動向や競争の激化などの外部環境によってももたらされます。
失敗が許されない状況では、心理的な余裕がなくなってしまうものです。
そんな状況では、部下の行動のひとうひとつを管理して、最適な方法やいちばんの近道で成果を挙げたいと考えるはずです。
逆説的ですが、失敗が許されない状況で失敗を許容する「矛盾のマネジメント」が、パフォーマンスを高めるのですね。

上司の経験不足からくる不安

上司の経験不足からくる不安が、マイクロマネジメントを発生させている可能性もあります。
まったく新しい業務や、そもそも上司に経験がない業務では、部下に最適な指示を与えることができないかも知れないといった不安から、やたらと情報収集させてみたり、リスクをとらないようにするために部下の行動を逐一指示することがあります。
上司が自ら「新しいことを経験する」という経験が、マイクロマネジメントを抑制するのですね。

マイクロマネジメントへの対処方法

部下からマイクロマネジメントを改善するのは、ハードルが高い

部下が上司のマイクロマネジメントに嫌気をさして反抗してばかりだと、さらにマイクロマネジメントを招く悪循環に陥る危険があります。
上司からみると、チームのパフォーマンスを低下させる阻害要因だとみなされて、さらに管理を強化する原因になってしまうからです。

一般的にマイクロマネジメントを改善・解消させるには、部下が上司から信頼を得ることが、もっとも効果があるといわれています。
上司も人間だと思って、「誰だって経験がないことには不安だ」とか「上司も過去にうまくいった方法に縛られることもある」とか、「プレッシャーもあって大変だな」という同情と理解、そして何よりも行動と定期的な報告がマイクロマネジメントを緩和するかもしれません。
要するに、上司をマネジメントする意識と技術が必要になってくるといわれています。

上司の気づきが、マイクロマネジメントを改善する

そもそも、上司は自分がマイクロマネジメントをしていることに気づかない場合が多いと思います。
上司は、かならずしも悪意を持っていないことが多いはずです。
組織の目標を達成するために必要な行為だと思っていたり、自分の成功体験を部下に伝えることで、成長を促せるはずだと感じているはずです。

それでも、上司が、もし「自分だったらもっとうまく早くやれる」という意識があったりするのなら、そういった行為がマイクロマネジメントが発生してしまうということに気づかなければいけません。

そのためには、上司自身が部下に指示を出す場合のルールを設けて、自制することが肝心なはずです。
たとえば、「この程度の小さな業務までは、部下に丸投げして一切口出ししない」とか「重要顧客の業務は、部下がこのスキルを身につけるまで経験を積んでから与える」など自分をコントロールする訓練が必要なのだと思います。

組織全体のパフォーマンスが停滞していると感じたときや、自分の業務が増える一方だと感じたときには、自分がマイクロマネジメントに陥っていないか振り返ってみるほうが良いでしょう。
自分の干渉行為が、最終結果に対してどの程度影響を与えるか、良いインパクトを与えるかを考えて指示を出すようにすべきなのですね。

「マイクロマネジメント砲」をうけたらどうなる?経験談

何を隠そう、この記事を書いている私も、実際に上司のマイクロマネジメントをうけた被害者です。
誰もがマイクロマネジメントをうけてしまう可能性がありますから、もしかすると、この記事を読んでいる方の一番の興味は、マイクロマネジメントの被害をうけた体験談ではないでしょうか?
そんな読者の方々のために、私がうけたマイクロマネジメント砲の被害を簡単にご紹介したいと思います。

官僚出身の天下り上司

かつて、私がうけたマイクロマネジメント砲の砲撃手は、中央官庁出身の天下りで非常にプライドが高い上司でした。
官僚なので、臨機応変な対応がとっても苦手な人で、現場のやり方や判断を許さないタイプの人でした。
また、いわゆるヒエラルキーを重視し、パワー(権力)を駆使して部下を駒使いするタイプで、部下からの反論を許さず、現場には判断させず、すべて自分が承認することに固執するような人でした。
この上司には、このようなスタイルで官僚として出世してきた成功体験があったのです。

既存事業であれば、ヒエラルキー構造とパワーを駆使した指示命令は効率的な組織運営に向いているのですが、状況がころころ変わる新規事業には向いていません。
運悪く、この上司は新規事業を担当する組織のトップとして天下ってきました。

権威のあるコンサルタントが大好き

このマイクロマネジメント砲の砲撃手は天下りでしたので、ビジネスのことがよくわかっていませんでしたし、自ら事業を起こした経験もありませんでした。しかし、ヒエラルキーの中で自分のパワーを維持するためには、何らかの権威と新規事業創出の論拠が必要です。そこで目を付けたのは外部コンサルタントでした。

社外で著名なコンサルタントを自分のブレインとすることで権威と論拠を確保し、そのコンサルタントの発言をもとに組織運営の舵を取ることにしました。
このとき、外部のコンサルタントが新規事業の立ち上げ経験が豊富な人で、現場の判断を重視するタイプであればよかったのですが、残念ながら一般論ばかりで自らリスクをとって組織の中で事業の立ち上げをやった経験がない人でした。

つまり、新規事業の立ち上げ経験のない外部コンサルタントを信じて、新規事業の立ち上げ経験がある社内のメンバーを信じないマネジメントをやってしまったのです。
ここまでで、マイクロマネジメント砲を発射する準備は、ほぼ整ったといえるでしょう。

「マイクロマネジメント砲」と「嫌味」の十字砲火

マイクロマネジメント砲の被害は甚大でした。
また、マイクロマネジメント砲だけでも結構きついんですが、それに嫌味が加わって最悪でした。

上司が外部コンサルタントを信じきっていたため、メンバーたちの考えがコンサルタントの考えとあっているかどうか、進め方が間違っていないかどうかを、いちいちその外部コンサルタントにお伺いを立てることになったのです。
そう。自分たちがやりたいこと(またはすべきこと)を企画するのではなく、コンサルタントが考えた進め方に従っているかどうかが、最も重要な課題となってしまったのです。

コンサルタントが決めた進め方でなければ嫌味を言われますし、すこしでも段取りが遅ければ嫌味を言われます。
企画書の書き方がおかしければ嫌味を言われますし、すこしでも報告が遅れれば嫌味を言われます。
現場の判断でプライオリティを見直せば嫌味を言われますし、すこしでも検討領域を広げれば嫌味を言われます。

要するに、上司の思う通りのやり方でなければ速攻で嫌味が降ってくるため、自分たちで考えて臨機応変に決めて動くことができませんでした。
現場が勝手に判断すると嫌味を言われるので、ひとつひとつ報告と承認をお願いしなければなない状況に陥ったのです。

上司のマイクロマネジメントの無自覚さが組織崩壊を招く

こんな中、私は新規事業の企画をつぶされてしまいました。
その理由は、ビジネスチャンスがあるかどうか、実現可能性があるかどうか、競合に勝つ戦略があるかどうかといったことではなく、数か月前に、私がその上司に「新規事業には、コンサルタントが考えた手続きなんかよりもアイデア出しのほうが重要だ」と反論したからでした…。

ただその上司は、どうやら悪気はなかったようなのです。
プライドが高く部下の意見を聞けず、部下の行動をひとつひとつ監視して、反論した部下を叩き潰さないと組織目標が達成できないと、かたくなに信じていただけだったようなのです。

また、この上司には、マイクロマネジメントをしている自覚のなさがはっきり見られました。
口では「楽しくやろう」と言っているのですが、自分の過干渉が組織を暗くよどませているのに気づくことができないのです。

その結果、メンバーのやる気は急速に低下し、暇さえあれば上司の文句ばかりが飛び交う組織に変貌してしまいました。
ここまで行けば、組織崩壊です。なにひとつ成功した新規事業を生むこともなく、多くのメンバーが去っていくことになってしまいました。

さいごに

私の体験談も交えながら、マイクロマネジメントの恐ろしさを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

マイクロマネジメントへの対処法の中で、部下が上司をマネジメントすることがマイクロマネジメントを改善できると述べましたが、個人的には、これは机上の空論かもしれないと思っています。
そもそも本来マネジメントされるべき部下が、上司をマネジメントすることがすでに機能上の矛盾をはらんでいますし、部下にはマネジメントできる経験も手法も持ち合わせていないはずです。
個人的な意見としては、部下が上司のマイクロマネジメントを改善するのはハードルが高いのではないかと思っています。

マイクロマネジメントに陥る前に、長い時間をかけて過去の成功体験を否定できる「自己否定」の企業文化を育てることや、権威主義的な組織内の空気を排除したり、新しいことに挑戦する風土や失敗を許容する評価制度が必要なのではないでしょうか?
これらのような組織内の価値観を醸成することで、マイクロマネジメントが生まれにくい仕組みを作っておくことが肝心なのだと思います。

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