PEST分析とは
PEST分析とは、自社の外部で起こりうる政治的側面、経済的側面、社会的側面、技術的側面からの4つの自社の力だけではコントロールが難しい要因について、どのような影響が考えられるのかを予測するための手法です。
教科書的に述べるとこのような解説が一般的ですが、実際に分析を進めていこうとすると、それほど簡単ではありません。
情報は集めたものの、それらを解釈することや、なんらかの示唆を得る作業というのは、難しいものです。
ここではPEST分析の手順を簡単に説明しながら、とくに、PEST分析で情報を集めてみたものの活用しきれない理由である「分類」について、具体的な方法を述べていきたいと思います。
有益な示唆を得るためには、得た情報を分類することが必要です。ここでは、そのポイントについてまとめます。
なぜPEST分析をする必要があるのか
PEST分析をするということは、集めた情報の中から今後起こりうる市場の変化を予測し、自社のマーケティングにどのように影響するのか、また同業他社に与える影響を明らかにし、今後の事業の方向性を探りだすという目的があります。
つまり自社を取り巻くマクロ環境が変化しても、勝ち抜いていくために必要な情報を集めるということです。
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PEST分析の手順と注意事項・ポイント
PEST分析を行い、上記で挙げた目的を達成するためには、ある程度系統立てて順序よく行うことが求められます。
実際には、大まかに次の3つの手順で実行することになると思います。
1.PEST分析の目的を再確認する
まず第一に「何のためにPEST分析をしたいのか」をはっきりさせます。
PEST分析の主な目的は、主に環境変化から「事業機会を見出す」か「自社にとってのリスクを見出す」のいずれかが中心的な目的です。
PEST分析を行い、競争環境を把握し現況をクリアにし、今後起こりうることを予測し、自社にとって最良の戦略を立てるための準備をするということですね。
自社を取り巻く環境を何のために調べるのかを明確にしておかないと、情報を集めること自体が目的になってしまいかねません。
頭り前のように聞こえるかもしれませんが、作業に没頭していると目的を見失うのは、よくある話です。
2.「PEST」の情報を集める
次が、情報収集です。新聞やネット記事などの各種媒体、あるいは関係各所からヒアリングするなどして、「P(政治的側面)」「E(経済的側面)」「S(社会的側面)」「T(技術的側面)」の各要素に該当する情報を集めます。
集め方は、ただ漠然と検索したり新聞を眺めたりするのではなく、ある程度的を絞って集めないと、情報の海を漂って漂流することになりかねません。
情報収集に慣れていない場合は、まずは、自社と関連のある業界団体や学会、業界リーダー(大手企業)の研究開発の動向などと市場調査のレポートを活用するなどするとよいでしょう。
ただ、情報は鵜呑みにせずに、ある主張に対しては、それに反対する意見も集めたり、根拠となる数字や論拠を探すなど様々な意見を幅広く集めることで検証しながら収集するようにします。
仮説と想定を繰り返し情報を分析していくことで、より今後の動きを正確に予測することができるようになるでしょう。
3.自分の主観で機会と脅威に分ける
第三に、分類した情報をさらに「機会」と「脅威」に分けていきます。
ここでポイントとなるのは、集めた情報というのは、発信者の主観が入っているということです。このような情報をうのみにしたり、一面的な見方をしないで、自分の主観に立って意思を持って情報を分類することが重要です。
少々わかりにくい表現になってしまったかもしれませんが、どういうことかというと、視点を変えると一見脅威に見えていたものが機会に変わることもあり得るということです。
インターネット通販を脅威としている小売店を例にとってみます。
技術的要因の変化で、消費者を通販に奪われた小売店にとっては、「脅威」と見えますが、注文が入ってから仕入れをすることも可能な通販は、在庫を抱えなくてよく、保管のための巨大な倉庫も必要がありません。
インターネットと実店舗の両方を持つ小売では、実店舗で試着だけをして、買うと決めたらタブレットで注文し送料無料で送ってもらうという方法も考えられ、技術の進化をうまく味方につけることができるかもしれません。
PESTの変化は、その状況の見方や解釈によって「機会」にも「脅威」にもなり得てしまうということです。
つまり情報を分析する際には、「脅威と見えるが機会とすることはできないか?」という点にも目を向ける必要があるのです。また「脅威を機会として生かすためには、どのような条件が必要か?」を意識することも必要です。
4.変化の蓋然性を見極める
PEST分析は、過去の分析をするのではなく未来の予測をするために行います。
PEST分析に対する蓋然性とは、PESTの変化が将来起こり得るか否かについての確実性の度合いを指します。これから起こることを正確に予測することは難しいですが、「どのくらいの蓋然性があるのか?」を予測することは不可能ではありません。
蓋然性の高さを検証する際の視点は、以下の2点です。
①「将来起こりうる変化」を示す証拠の多さ
例えば、少子高齢化を例にとってみます。
日本の総人口は幕末より近年まで増加を続けてきました。しかし1970年台の後半から少子高齢化の影響で、人口の増加率が低下しています。
具体的な人口の推移は、「日本の将来推計人口」に見ることができますが、今後も日本の総人口は急速に減少していくとみられます。
この事から未来の予測をする場合、親世代の人口減少による出生率の低下、そして高齢者の増加に伴って死亡数も増加していることから人口減少が裏付けられます。
つまり、予測した状況を裏付ける具体的な統計や指標があるかどうかなどの証拠の多さが、蓋然性を決める証拠となります。
②人間本来の根源的な性質に則しているかどうか
「人間本来の根源的な性質」というのは、以下のようなものです。
- 生活者がより得する方向の変化
- 生活者がより便利になる方向の変化
- 生活者がより直感的にわかりやすくなる方向の変化
- 生活者がより幸福になる方向の変化
上記の項目を複数満たしている場合、その変化の蓋然性は高くなります。
5.時間軸を意識して分類する
PESTによりマクロ環境の変化を見ていく場合、自分が考えているのが短期の見通しなのか長期の見通しなのかを区別しておくことが重要です。
短期的な課題は、施策の見直しで解決できることも多く重大な問題は起こりにくいものです。しかし長期的な課題は、構造的な問題をはらんでいるだけに方向性を誤って選択することにもなりかねません。人はとかく目先の課題に心を奪われる傾向にあり、長期的課題に目を背けがちです。
蓋然性の高いPESTの変化を捉えることができれば、中長期的な取り組みも可能となります。
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PEST分析の手順と実例まとめ
PEST分析では、世のなか全般にわたり情報を見極めることができます。
世の中全てのことのなかにビジネスチャンスが見出せる可能性があるということです。いかに多様な視点で物事の本質を捉えられるかにかかっています。
PEST分析を行うときには、より多くの視点があると良い、ということは少数ではなく可能な限りの人員を投入し、例えばワークショップ形式で分析を行うなどの形をとると生産性を高めることができます。
今回は、PEST分析の実務上の手順とその時の注意点やポイントについてまとめてみました。
いかがでしたでしょうか?お役に立てたでしょうか
経験上、マーケティングやビジネス関連のフレームワークの勉強には、イラスト動画が一番効率的だと思うので、作ってみました。
著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。