SWOT分析をNIKEの成功事例を使ってやってみました。

SWOT分析の事例を実例を使って分析する

SWOT分析とは、企業が保有する内部リソースなどの強みと弱みや、その企業のおかれた外部環境から市場機会と脅威を探し出し、これからの取り組み考えるための分析手法です。

SWOT分析(-ぶんせき、SWOT analysis)とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである。組織や個人の内外の市場環境を監視、分析している。 フォーチュン500のデータを用いて1960年代から70年代にスタンフォード大学で研究プロジェクトを導いた、アルバート・ハンフリー(英語版)により構築された。
Wikipedia SWOT分析

要するに、企業の内外のポジティブ要素とネガティブ要素を洗い出して、戦略を立案するための分析ツールということです。
※SWOT分析については、過去記事がありますので、詳しくはこちらをご覧ください。
禅問答か!とにかく難しいSWOT分析に文句を言いたい!

言葉で説明するのは簡単ですし、マトリックスなんかで図式化すると、なんとなく理解できたような気がするのですが、使いこなせるようになるためには、実際にいろいろな事例を見たり、自分で情報収集したり、分析してみたりしないといけません。

ということで、今回は、フットウェアシューズ市場での世界的な巨人となったNIKEの成功事例を見て、SWOT分析のやり方を見てみることにしましょう。

経験上、マーケティングやビジネス関連のフレームワークの勉強には、イラスト動画が一番効率的だと思うので、作ってみました。

NIKEの強み

NIKEが取り扱っている商品は、フットウェアが中心です。フットウェアとは歩行者やランナー、スポーツ競技者向けの靴などのことです。つまり、NIKEの基本理念は、快適に歩くことや走ることを可能とする商品を製造するという原則に基づいて設立されています。

そのNIKEの最大の強みは、「Just Do It」というブランドスローガンです。
このブランドスローガンが、何事にもチャレンジする姿勢として、顧客または自社のビジネスに対する「あり方」や「態度」を象徴しており、NIKEのロゴ「Swoosh(スウッシュ)※」と相まって、多くのアスリートに愛され、非常に競争力のある組織の土台となっています。
※1971年に作った、翼をデザインしたロゴ・マークのこと。

とくに、注目すべきNIKEの大きな強みは、世界的な消費者(特に若者)に対するブランド認知度の高さを維持できていることであり、それによって安定的な市場の確保に成功していることです。
この高いブランド認知度を実現できたのは、宣伝広告による単なるプロモーションの成果ではなく、アスリート(特にプロスポーツ選手)から信頼されるような商品自身の耐久性と品質の高さにあります。プロスポーツ選手に選択されるほどの高品質な商品を研究し、開発し続けたことによってプロスポーツ選手に選ばれ、結果的にその選手にあこがれる若者を魅了することに成功しているのです。

さらに、ビジネスモデルの面でのNIKEの強みは、生産のあらゆる側面を海外にアウトソーシングしていることです。そのためNIKEは国内には製造拠点を持っていませんが、その結果、NIKEは商品開発や設計、研究などの付加価値の高い活動へリソースを注力することができ、同時に製造業の課題である人件費のコストダウンができています。
アウトソーシングによるコストダウンが高品質な商品開発の原資の確保につながり、好循環を生み出しているといえるでしょう。

NIKEの強みまとめ

  • ブランドスローガンととロゴ
  • 世界的なブランド認知度の高さ
  • 商品自体の耐久性と品質の高さ
  • アウトソーシングによるコストダウン

NIKEの弱み

NIKEの収益構造は、フットウェア事業によってほぼ独占されているので、NIKE自身の存亡もフットウェア市場の今後の動向に依存しています。

事業戦略上、利益とキャッシュフローの最大化のためにはリソースを集中することは大変意義のあることですが、1つの商品や市場セグメントに過度に依存することは、キャッシュの余剰を生み投資の非効率化が発生する可能性が増えたりして、リスク分散の観点からも、あまり適切なことではありません。
したがって、NIKEは垂直方向だけでなく水平方向にも多様化し、フットウェア以外のアパレルやその他のアクセサリーを含めた市場への展開を考えるべきかもしれません。

NIKEの強みの項で、製造面を完全にアウトソーシングしているという事実を強みとして述べてきましたが、ナイキが海外の工場や店舗で、児童労働や労働搾取といった側面で影を落としています。
これらのネガティブな要素な悪評へとつながり、ブランドイメージをひどく傷つけることになるかもしれません。

これらの問題は「Sweat Shop(スウェットショップ)」と呼ばれ、世界的な大きな課題として注目されています。

(中略)スウェットショップの定義は、法律違反がある職場であり、また労働者が

    • 生活最低賃金の欠如を含む極端な搾取 
    • 健康・安全性の問題や長時間労働などの悪い労働環境 
    • 言語また身体的虐待等の懲罰 
    • 申し立て、組織化、労働組合の形成の試みに対する恐れや脅迫

などにさらされている職場をいう。

https://acejapan.org/blog/advocacy/7614

このように、世界的な問題となってきた状況下で、酷い労働環境を放置することは将来的なリスクと言えるでしょう。

そのほかにも、NIKEのシューズは一部の消費者には高すぎる高級ブランドであると認識されていることもあげられます。
このこと自体は必ずしも悪いことではありませんが、市場トレンドが品質重視から価格重視に移行した場合リスクがあると考えることもできるでしょう。

NIKEの弱みまとめ

  • 過度なフットウェア事業への依存 
  • Sweat Shop との批判とブランドの棄損 
  • 高品質・高価格志向 

NIKEの機会

NIKEの市場機会は、新しい市場の開拓の可能性ではないでしょうか?
たとえば、ヨーロッパ文化や西洋のライフスタイルを志向している中国やインドの若者層などがそれです。
NIKEが更なる成長を目指すのであれば、高品質のブランドイメージをそのまま活用して「新興市場の新たに裕福層の消費者(特に若者)」を獲得することは、同社にとって大きなチャンスと言えます。

さらに、近年NIKEは、フットウェア事業以外でもアクセサリーやその他の高級製品へと多様化し始めています。
これは、上で述べたブランドの「強み」の有効活用でもあり、一点集中の「弱み」の克服にもつながるでしょう。
この商品の多様化が、かりに正しい方向となれば、従来の製品を超えた収益源の確保につながり、会社を収益性を安定させるものとなるかもしれません。

NIKEの機会まとめ

  • 新興市場への進出 
  • ブランドの活用による商品の多様化 

NIKEの脅威

NIKEがグローバルなサプライチェーンを持っているという事実は、海外での労働ストライキ、利益率を低下させる通貨の変動、およびその周辺で発生する地政学的な出来事に対する予測不能で制御不能なリスクがあることを意味します。

NIKEは自身の強みである「世界的なサプライチェーン」がマヒしてしまうリスクを保有していているというイメージだけでなく、「弱み」の項で述べたような海外の工場での労働搾取のイメージも払拭する必要があるでしょう。

新しい世代の消費者の潮流は、モノからコトを重視するミニマリズムであり、社会的にも環境にも配慮しているため、疑わしいビジネスの結果である製品を購入したくないトレンドが生まれ始めています。

また、世界的な景気後退時期では、消費者がより価格を意識するようになり、小売業者の圧力が高まりNIKEにとっては利幅が大きく削られるでしょう。

NIKEの脅威まとめ

  • 海外サプライチェーンの予測不可能性 
  • 労働搾取イメージによるブランド棄損 
  • ミニマリズム等のニーズの変化 
  • 世界景気後退による値下げ圧力 

経験上、マーケティングやビジネス関連のフレームワークの勉強には、イラスト動画が一番効率的だと思うので、作ってみました。

NIKEのSWOT分析まとめ

ここで挙げたSWOT(強み、弱み、機会、脅威)は、かならずしも的を得ているものではないかもしれません。というのは、これらの分析は、あくまでも分析した人の主観的なものであるからです。
いかに厳格な事実を集めても、強みは弱みの裏返しであって、機会は脅威の裏返しである限り、分析者の考え方によって「正しい」戦略は異なるものです。

たとえば、ここでNIKEの強みとして挙げた「製造工程の海外へのアウトソーシング」は、もしかしたら将来の弱みになってしまう可能性があります。
そもそもNIKEがアウトソーシングを戦略の中心に据えているのは、高品質・高価格な商品開発のためでした。しかし、もしフットウェアとしての機能の過剰供給(消費者が「これ以上靴には求めることはない」という状態)が起きたとき、誰もが「自分にピッタリな靴」に高い料金を支払う世の中になったとしたら、アウトソーシングに依存していたことが「足かせ」となって多品種少量生産への移行が難しくなってしまうこともあるのです。そう。競争ルールが変わったとき、自社の強みが弱みへと変わってしまうのです。

だから、SWOT分析のやり方を覚えると同時に、何が正しい戦略と思うかは、分析者の主観(眼力)に依存しているということは忘れないようにしておくべきでしょう。

NIKEのことがわかる参考文献


経験上、マーケティングやビジネス関連のフレームワークの勉強には、イラスト動画が一番効率的だと思うので、作ってみました。

著者情報

工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。

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