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モチベーションの「クラウディング・アウト」

   

モチベーションの「クラウディング・アウト」って何?

まず、モチベーションの「クラウディング・アウト」の「クラウド・アウト(crowd out)」とは、「空間やスペースがないために、押し出されること。締め出されること。」です。

つまり、モチベーションの「クラウディング・アウト」とは、モチベーションがクラウド・アウトされること。つまり、あるモチベーションが、他のモチベーションによって、押し出されてしまうことを言います。
この時、押し出す側のモチベーションが、外発的モチベーションで、押し出される側のモチベーションが内発的モチベーションです。
要するに、金銭などの外的インセンティブが、本人の内面から沸き起こるモチベーションを阻害してしまい、結果的にパフォーマンスを下げてしまう現象を言います。

心理学的には、これまでは楽しみや達成感などをモチベーションとして自主的に行動していたのに、金銭的なインセンティブが加わったことで、まるで、お金の虜のようになっている自分に対して、嫌悪感をいただく心理が働くためだと言われています。
行動経済学の研究から、労働の「成果」に応じて与える報酬に差をつける、いわゆる成果報酬型のインセンティブが、労働者の「労働意欲」を落とすことがわかったことで注目を集めるようになってきました。

モチベーションには2種類ある

そもそも、人が物事をする際のモチベーションには2種類あります。
1つは外発的モチベーションといい、外部からの評価や金銭などの報酬が「やる気」の根源となり行動を起こす引き金となるもの、もう一つは内発的モチベーションといい、自らがそのもの自体を行いたいという欲求が行動理由の主たる要因である場合です。

外発的モチベーション

外発的モチベーションが最も有効に機能すると考えられているシーンは、例えば、本人が積極的に行動したくないようなことに対して、金銭的な報酬や、行動をしないことに対する懲罰がある状況が挙げられます。
典型的なケースは、上記の成果評価を取り入れている企業や軍隊などが挙げられるでしょう。

モチベーションを上げられる側から見て、自分が持っている知己や肉体的なリソース、そして心理的な負担などをお金に替える考え方ですね。
インセンティブには、金銭的な報酬だけではなく、社会的に認められたいといった承認欲求や、異性にモテたいといった欲望なども含まれます。

内発的モチベーション

このような外発的モチベーションを使う必要があると考えられる根拠に、「本来、人間の意思は弱く、誘惑に流されやすい」という思想です。アメとムチですね。
その一方で、そのようなアメもムチもなくても、自分自身の意思で行動をとることが「内発的モチベーション」であるといい、動機付けとしては、楽しみ、満足感、達成感といったことが挙げられます。

いつの間にか作業に夢中になる「フロー状態」や、圧倒的なパフォーマンスを発揮する「ゾーンに入る」ことを経験すること自体がモチベーションになっていることもあります。
たとえば、ダイエットのためにランニングを始めたら、いつの間にか夢中になってしまい、「痩せて見える」といった外的インセンティブよりも、ランニングを行うことが目的(自己目的化)となっている場合などがそれですね。

モチベーションのクラウンディングアウトの学術的根拠

「モチベーションのクラウディングアウト」が提示する成果主義や実力主義に対する批判は、まさに上記に挙げたような外的インセンティブが、内発的モチベーションを駆逐してしまうということです。

ある実験データによると、学生を2つのグループのに分け、あるグループには、結果が良ければ報酬を与えるという条件を与え、もう一つには、何も条件なしでパズルを解いてもらうという実験をした際、報酬を与えるという約束をしたグループの方がパズルを解く結果が悪かったといういものがあります。

これは、報酬を与えるという約束をしなかったグループの学生は、純粋にパズルを楽しんだために良い結果を残すことができたが、反対に報酬を与える約束をした学生たちは、報酬の額の小ささにやる気をそがれてしまったり、パズル自体に集中ができず、良い結果を残せなかったというものだそう。

また、驚くべきことに、金銭的な報酬といったプラスの外的インセンティブだけでなく、罰金や懲罰などのマイナスの外的インセンティブについても同様の結果が出た実験もあります。

つまり、外的インセンティブをモチベーションのトリガーに考える「外発的モチベーション」は、内発的モチベーションを排他的に駆逐してしまい、逆効果となってしまうのが、モチベーションのクラウディングアウトという現象なのです。

モチベーションの「クラウディング・アウト」の典型例

具体的に言えば、バブル期以前では「成果報酬」という制度を確立しておらず「固定給」制度で労働者を雇用していた会社が、バブル崩壊を機にある日突然「成果報酬」制度を取り始めたことで、企業のパフォーマンスが下がったケースがよくみられるようになったのが典型例です。

成果報酬制度の本来の目的は、「成果に応じて給料が変わるのであれば、より一層一生懸命に働かなければならない」という危機感や、「実力や結果が自分の給与に直結するのだ」という期待感を従業員に与えることでした。
しかし、むしろ労働者は、「常に監視され評価を付けられているようで、かえってやる気が起きない」、「お金のために働かされている気がして、嫌な気持ちになる」といった具合に、労働への「向上心」が落ちてしまう現象が、長期的な取り組みが必要な研究開発部門を中心に多発しました。

このような現象は、企業の従業員だけでなく、その仕事で働いていること自体が好きだという職人や、それ自体が周囲から評価されるような慈善団体、芸術家などにも多く見られます。
世間的に見れば多くの人が「働いた対価」としてお金をもらうことを求めているのに対し、「その仕事自体が好きだから」、「この仕事を通して、周囲に評価されることにやりがいを感じるから」といった理由で働く人にとっては、報酬が上がることに大きな価値を見出せないということでしょう。

もちろん例外もあります。
もともと「成果報酬」で雇用されていた労働者や、歩合で賃金が決まる契約となっていた場合に限っては、自分の実力を発揮した成果によって報酬がさらに上がるのであれば、「向上心」は高まることになります。

まとめ

如何でしたでしょうか?
「ニンジンという名の報酬」をもらえばもらうほどやる気が出るなんて人間ばかりではなく、ニンジンをもらえばもらうほど却って能力が低下したり、やる気がなくなってしまうなんて、人間はなんとも複雑で理解しにくい動物ですね。

もしかしたら、一筋縄にはいかない、簡単に理解できないからこそ「モチベーション」が上がるのかもしれません。
できることなら、モチベーション理論を理解して、人を動かす力を身につけたいですね。

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