ビジネスモデルとは何か
私たちの生活に欠かせない製品やサービス。これらは企業のたゆまない努力によってもたらされています。
事業として何をおこない、どのような層をターゲットにし、いかにして利益を上げるのか。ヒット商品を生み出すため、企業は日夜研究を重ねているのです。
ビジネスモデルとは、このような製品・サービスに関する具体的な事業計画や収益の仕組み、商流や物流、情報の流れや付加価値の流れを表したビジネス用語です。
ビジネスと一口に言っても、サービス業や小売業など、世の中には実に様々な業種が存在します。最近ではインターネットを利用した新たなビジネスも増えてきました。
そんな幅広い分野、業界で使われているビジネスモデルですが、ビジネスがあるのであれば必ずビジネスモデルは存在します。
今回は、そんなビジネスモデルについて、ごく一般的な概要の説明をしてみたいと思います。
ビジネスモデルとは?いやいやビジネスとは何でしょう?
「ビジネスモデル」と専門用語で聞くと何だか複雑な仕組みのように思えますが、中身はいたってシンプルです。私たちが普段おこなっている「商品を購入する」という行為も、実はビジネスモデルのプロセスの一部です。
ビジネスとは基本的に価値の交換によって成立しています。
ここでいう「価値」とは、貨幣に変換できるものを指していますが、必ずしも金銭的な貨幣でなくてもお互いに交換できる「価値あるもの」があれば成立します。物々交換もそうですね。
このように、ビジネスが価値の交換によって成立しているのですから、その流れや収益の構造を図式化するビジネスモデルも要全、価値の流れを説明できるようになっていなければなりません。では、価値の流れをここでは貨幣を使った場合で説明してみましょう。
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大まかな価値と貨幣の流れとしてのスタートラインは、まず、私たちユーザーが企業から製品やサービスの提供を受けたいと思うことから始まります。実際に商品を貨幣と交換したり、サービスを受けるために(または受けた後に)その対価として、ユーザーは企業に代金を支払うかどうかは、製品やサービスがいかに購入者が抱える課題を解決するか、または期待に応えることができると考えられるかに依存します。
このとき、同じような機能や価値を提供する商品が、他の企業などによって提供されているのであれば、それらの競合製品のもつ価値を超える必要があります。
ビジネスモデルの話をする以前に、①購入者の課題や期待(ニーズ)をつかむこと、②競合商品との競争に勝てること、そして③利用者にそれら商品やサービスを適切に届けることができること整っていることが、前提であり、これらの3つの前提がクリアできていないと、市場で生き残ることができません。
ビジネスモデルは、これらの3つの前提を乗り越える仕組みであり、企業が利益を得るという仕組みとなっています。この一連の流れと仕組み全体のことを総じて「ビジネスモデル」と呼ぶのです。
構造としてのビジネスモデル
ビジネスモデルの定義は様々な学者がそれぞれの定義をしていますが、大まかに、経営者や事業者が事業をどのように運営しているか、または計画しているのかといったことを表現する構造であるという見解で間違っていないでしょう。
そんな中、ビジネスモデルを構成する重要な要素として「戦略」「オペレーション」「収益」があると考えられています。
ここでいう「戦略」とは、いかに魅力的な要素をプラスして提供するかを決めるための計画のことを言い、商品やサービスに付加価値を付けて提供するには、最初のプランニングが重要だということです。
「オペレーション」とは、商品やサービスによって付加価値を生み出すプロセスを運営するための業務の工程計画や運営を指します。事実、戦略を立てるだけでは利益を得ることはできません。それをいかにして実現させるか、具体的な業務工程を決めていく作業です。
「収益」についてはもはや説明不要かと思いますが、どのようにして利益を生み出すのかを考えることを言います。勿論、コスト面を考慮することも忘れてはいけません。純利益を常に意識することが事業成功の秘訣と言えます。
これらの3つの要素は、競合他社に勝ち、効率よく製品やサービスを届けることで対価を得るという考え方ですが、これらは、ある大前提の上に成り立っています。その前提とは、「ビジネスとして成立するためには、市場のニーズを満たす必要がある」という大前提です。
つまり、「市場や顧客」の課題を解決すること、または期待に応えることが前提であるべきです。そのうえで、競合他社よりも自社を顧客に選んでもらうための「戦略」、効率よく付加価値を生み出す「オペレーション」、そして運転資金を生み出すための「収益」の多寡がこれらのビジネスモデルのアウトプットの一部となるのです。
様々な形態を持つビジネスモデル
「モデル」という言葉から連想して、ビジネスモデルとは、ある一つの「型」であるように感じる方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
ビジネスモデルは業界や商品ごとによっても違うこともありますし、一つの業界の中でも企業毎に異なるビジネスモデルである場合もあります。
たとえば、パソコン業界のNECや富士通は似たようなビジネスモデルですが、HPやDELLとは異なるビジネスモデルですし、アパレル業界のユニクロとZOZOTOWNは異なるビジネスモデルです。
一説には、ビジネスモデルは500以上もあるという学説もあるほどです。
このように多様なビジネスモデルがありますが、基本的なビジネスモデルはいくつかに限られますので、これからビジネスモデルを考えたいと思っている初心者は、まずは以下の10個の基本パターンを覚えておけばいいでしょう。
1.物販方式
製品やサービスを開発・製造し、顧客に提供することで対価を得るビジネスモデルです。
製造業の大半がこのビジネスモデルですが、飲食店や建築・建設業などのサービス業にも同じような構図が当てはまります。
2.小売方式・再販方式
自社では製品を製造せず、メーカーから仕入れて販売するビジネスモデルです。
八百屋やスーパーマーケットといったハード商品だけでなく、電話回線の販売代行や広告代理店といったサービスもこのビジネスモデルに該当します。
3.広告方式
紙面や土地などの空間を媒体にして、他社の商品やサービスを宣伝・広告するビジネスモデルです。
テレビや新聞といったマスメディアが伝統的なプレーヤーです。Google、Facebookもこのビジネスモデルです。
4.卸売り方式
商品やサービスを製造するメーカーと、それらを販売する小売店を仲介するビジネスモデルです。
伝統的な卸売業者や商社などがそれですね。
5.二次利用方式
商品を複数回再利用して利益を得るビジネスモデルです。
映画のDVD化や、キャラクターの版権販売、製薬会社の特許などがそれです。
6.消耗品方式
商品本体は低価格で提供し、部品などの消耗品を繰り返し買ってもらうビジネスモデルです。
プリンターやコピー機のインク、コーヒーサーバーのコーヒー豆、髭剃りの刃などがそれですね。
7.サブスクリプション方式
利用者が商品やサービスを買い取って所有するのではなく、定期的な支払によって商品やサービスを使用するようにするビジネスモデルです。
古くは、賃貸アパート、貸新聞や雑誌の年間購読や保険商品から、近年ではAWSやiCloudなどのクラウドを使ったストレージサービスがそれですね。
8.マッチング方式
何かに困っている人に解決できる手段を持っている人を紹介したり、商品やサービスを提供する側と利用する側を仲介する「場」を提供するビジネスモデルです。
不動産、人材紹介サービス、旅行代理店などがそれですね。
9.フリーミアム方式
まずは無料で使える商品やサービスを提供しておいてから、アップグレードした有料版を販売するビジネスモデルです。
GoogleのGmail、DropBoxなどが代表例ですね。
10.直販方式
メーカーた消費者や利用者に直接販売する方式です。伝統的な卸業者や小売店を介さない手法ですね。農家の産地直送モデルがそれです。ユニクロなどが採用しているASPもこれにあたります。
ビジネスモデルの基本概念まとめ
このように、ビジネスモデルの基本的な概念をまとめると以下のように言えると思います。
- 「ビジネスモデル」とは、企業の収益構造であり、「商流」・「物流」・「情報流」・「価値の流れ」を図式化したものである。
- 「ビジネスモデル」が成り立つ前提として、「購入者の課題や期待(ニーズ)をつかむこと」、「競合商品との競争に勝てること」、「利用者にそれら商品やサービスを適切に届けること」がある。
- 「ビジネスモデル」の評価の視点とは、「ニーズ充足度」「戦略」「オペレーションの効率性」「収益」である。
- 「ビジネスモデル」は、企業の戦略や事業構造によって多様性がある一方で、基本パターンがある。
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著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。