ビジネスモデルの10の基本パターンと、ビジネスモデルの作り方

ビジネスモデルには基本パターンがある

世の中には様々なビジネスが存在しています。

「ビジネスモデル」とは、あるビジネスが持つ付加価値の流れや商流・物流、そして収益構造の青写真のことを指す場合が多いと思いますが、ビジネスがあるところ必ずビジネスモデルが存在します。
ただ、すべての企業でビジネスモデルが全く異なるのかというとそういうわけでもなく、同じ業界にいると、ある程度似通ったビジネスモデルになる傾向があるようです。
これは、業界内である企業が成功すると、他の企業の経営者も同じ手法を真似しようとするからと考えられるからです。

ただ、ビジネスモデルは業種や業界ごとに異なるかというと、これも必ずしも正しくありません。実は様々な業界でも同じようなビジネスモデルが見られることがあるのです。
それは、十分に自由な競争が行われている環境下では、ある業界で成功したビジネスモデルが他の業界にも波及することで、その業界の競争構造を根本から破壊する「創造と破壊」が起き、もっとも高い付加価値を顧客に届けるビジネスが生き残る「産業の新陳代謝」が起きるからです。

このように、まるでつかみどころのない「ビジネスモデル」。一説には500以上のビジネスモデルがあるという学者もいますが、それほど多様で多彩なものなのです。
では、この無数にあるともいわれているビジネスモデルすべてを理解しないと新規事業を立ち上げることができないのかというと、もちろんそんなことありません。ただ、ビジネスモデルの代表的な基本パターンや原型をいくつか理解しておくことで、ビジネス・アイデアの発想の幅が格段に広がることは事実です。

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そこで、今回は、ビジネスモデルの10の基本パターンとビジネスモデルの作り方を簡単に解説したいと思います。
みなさんが「創造と破壊」を興すビジネスを興すための参考となれば幸いです。

ビジネスモデルの10の基本パターンとは

1.物販方式

製品やサービスを開発・製造し、顧客に提供することで対価を得るビジネスモデルです。
原材料や部品を商品に加工したり組み立てることが「付加価値」です。自動車や家電は原材料や部品だけでは価値を発揮しませんが、商品として加工された場合、利用者が求める機能を提供することができるようになります。自然、利用者が求める機能や品質を受け入れられる価格で提供できるかどうかが成功要因です。
飲食店や建築・建設業などのサービス業にも同じような構図が当てはまりますね。食材や材木を加工する工程に付加価値があるビジネスモデルです。

2.小売方式・再販方式

自社では製品を製造せず、メーカーから仕入れて販売するビジネスモデルです。
物販方式で開発・製造したメーカーの商品やサービスを仕入れ、エンドユーザーに販売するビジネスモデルです。メーカーに対しては販売を代行する付加価値を、エンドユーザーには最適な商品を購入しやすいように店舗を構えたり、価格を設定する付加価値を提供します。したがって、どれだけ安く仕入れて、高く販売できるかが成功要因です。
八百屋やスーパーマーケットといったハード商品だけでなく、電話回線の販売代行や広告代理店といったサービスもこのビジネスモデルに該当します。

3.広告方式

紙や土地などの空間を媒体にして、メーカーなどの商品やサービスを宣伝・広告するビジネスモデルです。
空間自体を商材として扱うビジネスモデルで、メーカーの商品などをエンドユーザーに広く知ってもらう場を提供することが付加価値です。したがって、いかに人目に付く空間を大量に作ることができるか、そして維持することができるかが成功要因です。
テレビや新聞といったマスメディア(media=「媒体」)が伝統的なプレーヤーですね。ちなみに、Google、Facebookもこのビジネスモデルで収益を上げています。

4.卸売り方式

商品やサービスを製造するメーカーと、それらを販売する小売店を仲介するビジネスモデルです。
日本のように物品を購入するときには、信頼できる人や会社から買いたいと思う文化が根付いている社会では、信頼できる人的ネットワークを持っていること自体が高い付加価値を持つことがあります。
メーカーがエンドユーザーに直接販売するのではなく、卸売業者がメーカーと多数の小売店とを仲介することで、大量の商品を売りさばくことが可能になるのです。
自然、幅広いネットワークを持っていることと、信頼性があるメーカーと小売店とつながりを維持できるかが成功要因となります。商社や代理店などがこの仲間ですね。

5.二次利用方式

商品を複数回再利用して利益を得るビジネスモデルです。
法律で保護された制作物や著作物自体が付加価値を持つと考えたビジネスモデルで、ハード商品だけでなくソフトウェアも対象とすることができます。一度制作すると長い間価値を発揮するので、とても効率の良いビジネスモデルですが、人気のある制作物や著作物を作ることができるかどうかが成功要因となります。
映画をレンタルDVD化したり、テレビ放映したりするときに使用権を販売たり、キャラクターを版権として販売して収益を上げます。製薬会社のビジネスモデルも似てますね。薬の特許が取れれば長年にわたり高い収益を得ることができる構造になっています。

6.消耗品方式

商品本体は低価格で販売し、部品などの消耗品を販売したりメンテナンスをおこなったりすることで収益を得るビジネスモデルです。
何度も何度も繰り返し利用する商品があることが前提です。繰り返し利用することで、商品のもつ機能を提供する要となる部品やパーツが消耗することで、追加的に買い替えが発生することで収益を上げるビジネスモデルです。
消耗品にいかに高い付加価値を持たせることができるかが成功要因です。
プリンターやコピー機のインク、コーヒーサーバーのコーヒー豆、髭剃りの刃などがそれですね。

7.サブスクリプション方式

利用者が商品やサービスを買い取るのではなく、商品やサービスを使用する権利を購入してもらうビジネスモデルです。
商品やサービスはあくまでもメーカーやサービス提供者の所有物であり、利用者は定期的に所定の金額を継続的に支払うことで、継続的に利用できるビジネスモデルです。利用者の購入金額を抑制することができたり、手間を削減することができることが付加価値です。したがって、利用者がどこに金銭的な負荷を感じているか、それをサービス化して継続的に課金できる仕組みを作ることができるかが成功要因です。
古くは、新聞や雑誌の年間購読や保険商品から、近年ではAWSやiCloudなどのクラウドを使ったストレージサービスがそれですね。

8.マッチング方式

商品やサービスを提供する側と利用する側を仲介する「場」を提供することで利益を得るビジネスモデルです。
広告方式と同様に、空間自体を商材として扱うビジネスモデルですが、根本的に違うのは認知度を提供することが本質的な機能ではないということです。マッチングした結果、双方が合意した場合に手数料をもらうのが基本的なビジネスモデルです。
したがって、双方の本質的な課題を解決できる「場」を作ることができるか、そして商品やサービスを提供する側の品質を維持することができるかが成功要因です。
不動産、人材紹介サービス、旅行代理店などがそれです。

9.フリーミアム方式

使用できる機能を限定した商品やサービスを無料でユーザーに提供し、それにより認知度を上げたうえで大量の潜在顧客を集めたのち、ユーザーがアップグレードした有料版を購入することを狙うビジネスモデルです。
当然、無料で商品やサービスを利用することができることが付加価値ですが、利用者の本質的な課題を解決するような機能を提供できることと、アップグレード商品などの有料商品を欲する利用者がどの程度いて、どれくらいの金額を支払う意欲があるかを見極めることが成功要因です。
GoogleのGmail、クックパッドなどは代表例ですね。ある意味、ちなみに駅前のティッシュ配りもこのビジネスモデルですね。

10.直販方式

小売り方式、卸売り方式、マッチング方式が利用者とメーカーの仲介をするビジネスモデルなら、直販方式はその仲介業者を飛び越えてメーカーが直接利用者に販売するビジネスモデルです。
メーカーが中間業者にマージンを支払う必要がなくなったことで、利用者への提供価格を下げることができることが付加価値です。従来の小売り方式、卸売り方式などを使ったビジネスモデルから転換する場合、これらのステークホルダーの反発をマネジメントできるかどうかが成功要因です。
パソコンのDELLや、プルデンシャル生命保険などが有名ですね。

ビジネスモデルの作り方

ビジネスモデルの基本パターンを理解したら、次は、ビジネスモデルの作り方を覚えましょう。
大きく5つのステップを踏むといいと思います。

1.ビジネスモデルの事例を大量に「詰め込む」

ビジネスモデルを作るために最初にやることは、まず10の基本パターンの大量のケーススタディを行い、ビジネスモデルと勝ちパターンの関係を見極めることです。簡単にいうと成功事例の「詰め込み」ですね。
「詰め込み」と聞くと、何やらクリエイティブではない印象を持たれるかもしれませんが、アイデア発想の成功のカギは、この「詰め込み」が握っています。
詰め込みがしっかりできていれば、あとはステップ2以降の「熟考」と「ふ化」を経て、斬新なビジネスモデルのひらめきを待つことになります。

2.自社の業界のビジネスモデルを「知る」

ビジネスモデルの検討を進めるにあたり、個人的には、まず、自分たちのことを知るから始めることをお勧めします。いわゆる「無知の知」ですね。
市場と業界にインパクトを与えるビジネスには、業界の常識を疑うことが重要です。
したがって、自社が所属する業界でとられているビジネスモデルが基本パターンのどれに該当しているのか、そして、なぜそのビジネスモデルが使われているのかといった理由を探すことで、今まで気づかなかった業界の常識や商慣習、そしてしがらみなどに気づくことができるようになります。

3.業界内で採用されていないビジネスモデルを「洗い出す」

ステップ2で、自分たちのビジネスモデルが何か、そして、そのビジネスモデルを使っている理由がわかってきたら、いろいろな気づきが得られると思います。
たとえば、もっと顧客に高い付加価値を提供できるビジネスモデルがあるのに、「業界のしがらみ」が自分たちのビジネスモデルを規定しているとしたら、しがらみのないスタートアップや他業界からの参入機会が高く、破壊的なプレーヤーが現れてくる可能性があることがわかってくることがあります。
ここでは、ステップ2で得られたこれらの発見をもとに、自社が所属する業界で、まだとられていないビジネスモデルを洗い出すことです。基本パターンの中から見つけることもできるでしょうし、それらを組み合わせてみることで新しい発見が生まれることもあります。

できるだけ大量のアイデアを出すことをお勧めします。
ステップ1で、十分な量のケーススタディを詰め込んでおくと、新規事業のアイデアに適用できるビジネスモデルが自然と頭の中に浮かんでくるようになるはずです。

4.最も高い付加価値を提供するビジネスモデルを「練る」

これまで業界で採用されていなかったビジネスモデルをピックアップしたら、次のステップは、最も顧客に高い付加価値を提供できるビジネスモデルを選んでブラッシュアップすることです。
思いつきのビジネスモデルは、一見「無敵か?」と思ってしまうこともありますが、かならずそも顧客の真の解決すべき「課題」や「期待」にこたえることができるとは限りません。

時間をかけ、時には寝かせてみるなどして、もっとも高い付加価値を提供できるビジネスモデルとは何か?を見極めることが重要です。

5.実現できるビジネスモデルを選ぶ

最後のステップが、新しいビジネスモデルの実行を阻害する要因(法律的・技術的・商習慣的制約条件)を探し、実行可能性を検討することです。
いかに美しいビジネスモデルに至っても、やはりどうしても超えることができない業界のしがらみや、技術的な課題というのはあるものです。ビジネスモデルを実現するために、いかにそれらの課題を超えるかといった議論が不可欠なのは明確です。

ちなみに、私は、このステップを最後に持って来ることがポイントだと思っています。
ここまで来て、すべてがゴワサンになってしまうことも多々ありますが、このステップを最初に持ってきてしまうと、アイデア発想の幅が狭まり、予定調和的なこれまでの常識に従ったビジネスモデルになりがちです。

ビジネスモデルの10の基本パターンとビジネスモデルの作り方まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、ビジネスモデルの10の基本パターンとビジネスモデルの作り方を簡単に解説してみました。

「ビジネスモデル」という言葉は比較的新しい用語ですが、言葉が独り歩きしていて、きちんと理解できている人は多くないと思います。調べてみればみるほど主張する学者によっても定義や分類が違っているので、なんとなくつかみどころがない概念であり、まさに多様で多彩なものなのです。

新規事業を立ち上げるためには必ず検討すべきことである一方で、ビジネスモデルの作り方はどこにも書かれていなかったので、今回の記事では、いくつかビジネスモデルの代表的な基本パターンや原型と合わせて自分なりのビジネスモデルの作成のコツを紹介させていただきました。
基本を押さえておくだけでも、ビジネス・アイデアの発想の幅が格段に広がることは確実だと思っています。

みなさんが「創造と破壊」を興すビジネスを興すための参考となれば幸いです。

著者情報

工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。

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