マーケティング近視眼の対策に「PEST分析」が必要な3つの理由

マーケティング近視眼対策には「PEST分析」

PEST分析とは、経営戦略や海外戦略を策定する場合の自社を取り巻くマクロ環境つまり外部環境を把握する際に活用される分析手法のことを指します。
世の中全体の変化、つまり「マクロ環境」の現状や中長期的な未来の自社に与える影響を把握することにより、今後のリスクを回避することにつなげようという分析ですね。

ところで、「グレシャムの法則」をご存知ですか?
「グレシャムの法則」とは、「悪貨は良貨を駆逐する」で有名な概念で、同じ価値の硬貨であっても、金の含有率が多い硬貨(いわゆる良貨)は、誰もが自分の手元に持っていたいと思ってしまうため自宅の金庫に眠ってしまう反面、金の含有率が低い硬貨(いわゆる悪貨)の方が世の中に出回ってしまうという現象のことを指します。

このグレシャムの法則と同じような現象が経営でも存在するというのが、ハーバート・サイモンが提唱した「計画のグレシャムの法則」です。
ハーバート・サイモンは、計画のグレシャムの法則で「短期的な作業は中長期的なゴールを目指す活動を阻害する」ことや、端的に「ルーチン・ワークは創造性を駆逐する」と主張しています。

また、このような主張をしているのはハーバート・サイモンだけではありません。
セオドア・レビットも『マーケティング近視眼』という有名な論文の中で、鉄道会社を例に挙げて短期的な思考が企業の衰退を招くとしています。
かつてのアメリカの超優良企業であった鉄道会社は、自らの事業を「運輸会社」ではなく「鉄道会社」と規定してしまったため、トラックやバス、飛行機といった鉄道以外の運輸事業に拡大できなかったため、衰退したと分析したのです。

これらの短期的な視点や視野狭窄の活動とならないために、より大局的なものの見方をして経営のかじ取りをする必要があり、そのためにマクロ環境の情報を把握する必要があるのです。ずばり、そのための分析ツールがPEST分析なのです。

経験上、マーケティングやビジネス関連のフレームワークの勉強には、イラスト動画が一番効率的だと思うので、作ってみました。

PESTの変化に対応できないと生存競争に勝ち抜けない

PESTの基本的なコンセプトは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの視点で情報収集し、今後の自社のとるべき指針を分析しようというものです。
市場の競争ルールを変える主な要素として、一般的に政策の変更、技術革新、顧客ニーズの変化が挙げられますが、それに社会的背景の変化を加えて、それらの頭文字からPESTと名づけられました。
詳しくは、過去記事をご覧ください。

  • P(政治的要因):
    法律の制定や政治動向といった市場競争に影響を与える明文化された公的なルールの変化など
  • E(経済的要因):
    企業の売上やコストに直結するような、経済水準、所得変化、為替、金利などの要因の変化など
  • S(社会的要因):
    生活者の購買意欲や傾向に影響を与える慣習や文化、価値観、人口動態などの要因の変化など
  • T(技術的要因):
    企業による価値提供の実現方法に影響を与える技術の高度化や技術トレンドの変化など

これら4つの要因により、ビジネスの競争基盤は常に影響を受けていると言っても過言ではありません。実際に、これらのPESTの変化についていけず、市場から撤退した企業は数知れません。
つまりPEST分析をおろそかにすることは、取り返しのつかない結果を招きかねないということになるのです。

PESTは、いずれも独力でコントロールできない

マーケティングの考え方にもよりますが、マーケティング施策は、大きく2つに分類することができます。
一つ目が「外部環境の変化に対応する」ことを主眼に置く、受動型・消極型・適応型のマーケティング施策で、二つ目が「競争環境を成立させている前提(条件)を自ら作り出す、またはルールを変えてしまおう」という能動型・積極型・創造型のマーケティング施策です。

PEST分析としては、上記の二つのマーケティング施策を行う上で、必要な情報を提供することになります。
一つ目の環境変化にマッチするマーケティング施策においては、世の中の動きを察知することで、ニーズを追いかけたり、競争に追いついていけるために必要な情報を提供することになります。
また、二つ目の環境そのものを作り出す、またはルールを変えるマーケティング施策においても、そもそもの競争ルールや前提条件がわかっていないと、どのようなマーケティング施策であれば、競合に簡単にマネされないかがわかりませんし、ビジネスチャンスそのものにも気づくことができないでしょう。

当然、二つ目のマーケティング施策のほうはインパクトが大きいものですが、PESTは、(当然)一企業でコントロールできない要素ばかりなので、圧倒的に難易度も高いです。
このPESTを前提条件として、いかに自社に有利なようにできるかといった視点で分析することが必要となるのです。
このように、短期的な視点ではなく、中長期的な視点に立って、目先の売り上げや利益といったルーティンだけを追っていくのではなく、巨視的な視野で世の中の流れや変化に乗っていくための手法なのです。

PEST分析はすべての戦略や施策の起点だから

マーケティング戦略は「機会をとらえる」あるいは「脅威を避ける」ために行われることが多いものです。
そして「機会をとらえる」にせよ「脅威を避ける」にせよ、なぜそれらを「機会(あるいは脅威)だと見なすのか?」が説明できなければ、マーケティング戦略・施策の説明はできないはずです。
PEST分析の結果が、これらのマーケティング戦略の根拠や論拠となるべきであり、マクロ環境の情報把握によってはじめて、ファクトベースでの説明ができるのです。

PEST分析とはマクロ環境を分析することによって、さらなる戦略の具体化・詳細化、そして製品戦略、価格戦略、流通戦略、営業戦略といったマーケティング戦略の立案の論理的な礎となるのです。
言い換えればマーケティングの具体的施策であるはPEST分析によるマクロ環境要因を把握した上に成り立つものということです。
どんなに優れたマーケティング戦略や施策も、その前提が間違っていれば的外れなものとなります。「PEST」は、あらゆるマーケティング戦略・施策の前提となるために、決しておろそかにしてはならないツールなのです。

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著者情報

工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。

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