MBA留学での最大の失敗は、前もって勉強しておかなかったことでした。
ビジネス・スクールはケースメソッドが主流なので、できれば現地ではケースの勉強に集中しておきたいところ。そのためにも、重要な教材は、あらかじめ渡航前に日本語で読んで頭に入れておきたいものですね。
そこで、今回は、日本語訳されているMBAの教材をご紹介しようと思います。実際には大学によってつかう教材は違うと思いますが、基本的なエッセンスはそれほど大きく変わらないと思います。現地の教材の読みこみ時間短縮にご利用ください。
また、もしテキストとして使われなかったとしても、MBA取得後でもかならず役に立つ基礎教材ばかりなので、いずれにしてもそれぞれの分野で1冊ずつはこなしておきたいとことです。
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経済学
マンキュー・シリーズの和訳本は、とってもわかりやすかったです。私の場合は留学先のビジネススクールであつかった教材が、たまたまマンキューだったのですが、和訳の書籍を取り寄せることができたのでとっても助かりました。
会計学
MBAで学ぶ会計(アカウンティング)は、経理の実務を教えるようなものではなく、会計上の仕分けルールなどの基礎知識が中心です。資格を取れるようなレベルではないですし、日本の会計制度と違うので、渡航前の段階では基本的な考え方を頭に入れておけば十分だと思います。もし簿記2級程度の知識があるようでしたら、あらかじめ用語を英語で知っているだけでも事前準備は十分だと思います。
簿記2級の書籍を紹介します
『スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 第7版 [テキスト&問題集] 』
財務
こちらも、日本とは会計制度が違うので渡航前の段階では基本的な知識を入れておくだけでいいと思いますが、財務会計では財務諸表の分析指標とか、投資判断の手法とか出ててきて結構複雑なので、英語で混乱するようだったらできればあらかじめ日本語で済ませておきたいところですね。ヒギンスのテキストはとにかくわかりやすいです。財務会計はとりつきにくい印象があったのですが、分析指標をつかいこなせるようになると面白いだろうなぁと思ってしまいました。
『ファイナンシャル・マネジメント』
[audible]
マーケティング理論
おそらく、どのビジネス・スクールでもマーケティングの授業は人気が高いと思います。そんな人気教科の中でも、コトラー/ケラーのマーケティング・マネジメントは長らくMBAの教材として使われ続けています。基本的な概念が要領よくまとまっていて、わかりやすく解説されているためでしょう。また、マーケティングの長い歴史の中でもレビットの『マーケティング近視眼』は、マーケティングの本質をついた研究であるとして、脚光を浴びた書籍(論文)です。マーケターを目指すなら必読の書です。
『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』
『マーケティングの革新―未来戦略の新視点』
イノベーション理論
イノベーションはシュンペーターという経済学者が唱えた概念が起源です。経済は新しい組み合わせが起こることで発展するという説なのですが、イノベーションの研究は今でも盛んです。とくに優良企業は、正しいことをするためイノベーションについていけずに衰退するという、有名なテーゼを提唱したクリステンセンの『イノベーションのジレンマ』ははずせません。
『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』
戦略論
戦略論は経営戦略と競争戦略に大きく分類されますが、企業の戦略とはその企業の産業内の静的な位置づけにによって決まることを主張した戦略論が、マイケル・ポーターの『競争優位の戦略』と『競争の戦略』です。この2冊は戦略論を大きく飛躍させたことでもとくに有名です。このポーターの考え方に異を唱えて、企業の戦略はその企業のもつリソースに左右されることを主張して一大論争を巻き起こしたのがバーニーです。代表作が『企業戦略論』です。また違った側面で企業間の競争をゲームに見立てた分析もあって、戦略論はかなり面白い研究分野です。ケーススタディで議論するためには、この辺の基礎理論は、前もってしっかり頭に叩き込んでおきたいものですね。
『競争の戦略』
『企業戦略論』
『はじめてのゲーム理論』
起業/ビジネスモデル
起業論で取り扱われる課題は、起業家の精神論的なものから具体的なビジネスモデルの立て方まで幅が広く、テキストも玉石混交です。授業もテキスト中心というよりは、起業家の経験談を聞いたりすることも多いので、これといったテキストをご紹介するのが難しいです。ただ、ドラッカーの『イノベーションと起業家精神』は、比較的近いと思いますのでここでご紹介しておきます。
『イノベーションと企業家精神』
組織論、経営管理論
人によって好き嫌いはあると思いますが、私のMBA留学では、いちばんためになった教科のひとつでした。組織内の人間を取り扱った教材ですので、身近な問題ということもあったと思います。リーダーシップ論、モチベーション理論から組織設計などの各理論を学べることができて、面白かったです。この科目ばかりは、社会人を数年以上経験していたほうが、より実感がわいていいと思います。
『組織行動のマネジメント』
そのほかにも読んでいたほうがいいのは、教材以外の本です。たとえば、ケースメソッドは議論が主役なので、議論できるようにロジカル・シンキングの本とか、プレゼンテーションの本とかを読んでおくといいかもしれません。
著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。