モチベーションって一体何でしょう?
モチベーションがあるのとないのとでは、仕事や学業の進捗や成績にも大きな違いが出るのは、私たちは身にしみて感じているはずですが、そもそもモチベーションって一体何なのでしょうか?
モチベーションはmotivationと書き「動機」とか「やる気」という意味ですが、言葉を知っているだけでは理解したことにはなりません。
ちなみに、「動機」でググってみると・・・
・人が心を決めたり、行動を起こしたりする直接の原因、または目的。
・行動・意欲を規定する根拠となるもの。
・倫理学で、対象または目的の観念に導かれた衝動や欲望。
・心理学で、行動を引き起こす意識的・無意識的原因。⇒動機づけ
(via)https://ja.wikipedia.org/wiki
とありますが、「動機」となるものはいろんな形をしていて、なかなか正体が見えにくいものです。
とくに「モチベーション」というカタカナになってしまうと、ますます漠然として捕らえにくいもののように感じてしまいます。
すくなくとも私はそう感じます。
とはいいつつも、日常生活の中でも頻繁に耳にするし、目にもする、この「モチベーション」。
正体もわからない、大変厄介なものなのですが、そもそも私たちはなぜ厄介だと感じしまうのでしょうか?
そして、なぜモチベーションのことが気になってしまうのでしょうか?
今回は、そういったところから、モチベーションのナゾを紐解いてみましょう。
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モチベーションの分類と視点
モチベーションという言葉は非常に幅広い意味を持っています。
なので、ここで簡単にモチベーションの持つ意味をざっくりと分類してみましょう。
「生きぬきたい!」という意味でのモチベーションの視点
植物や動物など、命のあるものがもっている生理的な現象の視点から捉えたモチベーションです。
食欲、睡眠欲から支配欲まで、自分が生きていくために必要だと「体」が生理的に反応して起きるモチベーションですね。
こういったモチベーションは、基本的には無意識にあるもので、自分がモチベーションを起こそうと思って起きるようなものではありません。
家族や恋人に対する愛情、友達に対する友情などといった社会的な関係維持に関するモチベーションもこの分類に入ると思います。
根源的な欲求といえますが、その一方でコントロールが不可能なモチベーションといっていいでしょう。
「目的や目標を達成したい!」という意味でのモチベーションの視点
いわゆる「成功」とか「達成」がモチベーションの源泉だという視点です。
物事の因果関係を、「原因」と「結果」で関連付けることができる能力を持つことで起こるモチベーションです。
人間がもつ合理性という特有の能力です。というより人間は、他の生物より、幅広く、より深く関連付けることができるといったほうがいいかも知れません。
人類が地球を支配するにいたった、ひとつの原因かも知れませんね。
受験やスポーツ、入試や夢をかなえることなど、(自分自身を含めて)誰かと競い合って何らかの目標を達成できたときの喜びや達成感は、このモチベーションを裏付けています。
栄達欲もこのモチベーションの分類に入ると思います。
努力を重ね、つらい時期を乗り越えて、ひとつの目標に向かって眠い目をこすりながら夜遅くまで勉強してみたり、チーム一丸となって励ましあいながら、がんばる姿がイメージできます。
でもゴールと現状が明確になって、利益がわかっていればモチベーションがあがるのでしょうか?
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「よくわからないけど夢中!」という意味でのモチベーションの視点
上の項の最後に出した質問の答えというわけでは在りませんが、成功や達成を望むモチベーションとは真逆のモチベーションもあります。
「よくわからないけど、これがスキ!」というモチベーションですね。
利害を超えて夢中になる趣味だったり、無意識のうちに熱中する仕事に対するモチベーションですね。
職場にも、この技術に関しては誰にも負けないというほど、夢中になって圧倒的な技術をもっている人もいると思います。
誰にも頼まれていないのに職場の業務課題を整理したり、会計ルールと処理についてはどこまでも詳しい人がいたりするものです。
これだけで何時間でも没頭できる何かを感じている人たちのことですね。
仕事以外の日常生活の中でいうと「買い物」や「趣味」が挙げられるかもしれません。
おたく、マニアという方たちもこの分類に入ると思います。
自分のやりたいことをひたすら集中してやっているイメージで、誰も(自分ですら)コントロールできない状態でしょう。
こういった人たちは、だれかに強制されて技術を磨いているわけでも、知識を増やしているわけでもありません。また、得てして栄達欲を求めているわけでもありません。
しかも、難易度が高くなったり、新しく複雑なものほどモチベーションが高まるという特徴もあります。
こういった人たちは、どこからモチベーションが沸き起こっているのでしょうか?
身の回りのモチベーション
自分のまわりを見渡してみると、「モチベーション」が日常的にあふれていることに気づくはずです。
では、わたしたちは、どういった状況で、どういった対象に対して「モチベーション」を意識するのでしょうか?見てみましょう。
「個人」のモチベーション
多くの人にとって、一番身近な「モチベーション」って、自分自身のモチベーションのことを指すことが多いのではないでしょうか?
自分のことなのに、なぜかやる気が出ない、体が動かないといったときの処方箋として使われることが多いと思います。
たとえば、夏休みが終わる間際まで宿題を始めることができない気持ちや、部屋の掃除をしないといけないと思っていながら、なかなか始められないような気持ちなどでしょうか?
もっと積極的な姿勢でいえば、努力を継続することができる要因や、なにかに夢中になれる条件のことかも知れません。
<キーワード>
・スキルアップ(英語学習、資格取得など)
・なかなか勉強や部屋の片付けを始められない心理
・危機意識、自己実現、夢中になる心理
・あきらめ、グロースマインドセット
「友人、恋人、夫婦、家族」のモチベーション
自分の半径数メートル以内にいるような、身近な人たちに対して意識する「モチベーション」もあります。
子供に宿題や部屋の片付けを自主的にやれるようになって欲しいと思う気持ちとか、好きな人に振り向いて欲しい、恋人に優しくして欲しいといった心理、夫に家事を手伝って欲しいとおもう気持ちや親にほめられたい気持ち、といったもっとも身近にいて大切な存在に対して抱く意識ですね。
相手の存在が「当たり前」の事実になってしまうことで、起きてしまう真理かもしれません。
<キーワード>
・共依存、相互依存
・愛情、友情
・自己評価、自己肯定感
・自己同一性
「集団や組織」のモチベーション
自分以外に対して「モチベーション」を意識する、または「モチベーション」という言葉を使うのは、集団や組織に対してつかうことが多いのではないでしょうか?
要するに、集団をコントロールしたいという気持ちですね。
たとえば、学校の教師であれば児童、生徒、学生たちが授業の内容をしっかりと理解して集団生活ができるようになったり成績を伸ばして欲しいとおもうはずです。
また、会社の社長や管理職であれば、誰だって自分が出した指示の通りの結果を出して欲しいと思うはずです。
メッセージを「ただしく」理解して、理想的な結果を出すように願う場合、集団をコントロールしたいと思うはずです。
いわゆるマネジメントという視点ですね。
このような思惑の場合では、教師や管理職が圧倒的な「何か」を持っている必要があります。
いわゆるカリスマや存在感、畏怖感、権威、権限といったものでしょうか。
ほかにも、こっちが指示を出さなくても、自分から率先して考えて、みんなを引っ張って、自律的に問題を見つけて解決できるようになって欲しいといった場合もありますよね。
そんなときって、モチベーションはどんな役割をするのでしょうか?
<キーワード>
・集団心理
・空気、文化、ピアプレッシャー
・報酬、賞与、表彰、誇り、自尊心
・無意識、夢中
「不特定多数の人」のモチベーション
さいごに、自分の周辺にいる人たちではなく、もっとも関係が薄い人たちに対して、影響を与えたいと思うときにも「モチベーション」を意識することがあります。
たとえば、企業活動の中で、顧客の行動を分析して、よりよりサービスや商品を開発しようとする場合は、得意先の顧客や市場全体の「モチベーション」を高めようとしているのに他なりません。
かんたんに言ってしまえば、マーケティングですね。
ほかにも、政治的に影響を与えようとする場合でも、「モチベーション」は意識されることが多いはずです。
不特定多数の人たちに自分のメッセージに納得してもらい、賛成してもらいたいといった心理のことですね。
プロパガンダと言い換えていいかもしれません。
いかに多くの人をコントロールできるかといった視点ですね。
<キーワード>
・希少性の活用
・期間限定の効果
・権威の活用
・社会的証明
モチベーションの理論的な意味、研究
上に挙げてきたようなモチベーションは、いろいろな視点から学術的にも研究されています。
自分がどの「モチベーション」を高めたいと考えてるのかを理解してから、より深く調べることが迷子にならない方法だと思います。
心理学でのモチベーションの研究
人がなぜモチベーションを持つのか?どうすれば適切なゴールを達成するためにモチベーションを高められるのか?どんなときに人は間違った(マイナスの)モチベーションを持つのか?といった研究です。
有名どころは、以下です。
マズローの5段階欲求
アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものです。自己実現理論ともいいます。
まず最初の第1段階の欲求は、人間が生きていくために必要な根本的で本能的な欲求である「生理的欲求」。
次が、安全で秩序立って予測可能な暮らしを求める第2段階の欲求として「安全の欲求」。
続いて、自分が社会に受け入れられ、社会的な役割を果たす欲求である第3段階の「社会的欲求」。
そして、自分が価値ある存在と認められ、尊重されることを求める第4段階の「承認の欲求」。
さいごが、自分の能力によって自分のなりえるものになりたいという第5段階欲求である「自己実現の欲求」の5つの段階があるとされています。
この理論でいうと、モチベーションは人が生きている限りは、かならずその人に内在しているという考え方で、同一人物内においても、おかれた社会的環境やライフステージによって欲求段階は変わるといいます。
つまり意識的にコントロールできるようなものではなく、外的な環境(ストレス)によって決定付けられるものだとしています。
勉強する「モチベーションがなくなった~!」としても、生理的欲求や承認欲求がなくなるということはないということですね。
フロー現象
フローとは、人が勉強や仕事など、そのときしていることに完全に浸りきって、精力的に深く集中し、のめり込んでいる精神状態をいいます。ゾーンということもあります。
フローに入ると、あまりにも深く集中しているため時間の感覚がうすれたり、無我の状態に近くなってモチベーションがあってもなくても作業が自動化されるようになります。
もはや、作業の目的は存在せず、かつ無意味であり、作業自体に意味があるようになります。
いわゆる手段が目的になってしまっている状態(自己目的化)ですね。
そうなると、その作業に関する技術が研鑽され、より高度化されていきます。
目的や目標といった外的なモチベーション要素や物的なモチベーション要素はいらず、自分自身の内的な(よくわからないけど、やりたい!という)モチベーション要素が、行動を支配するのです。
夢中になれるものを見つけてそれに没頭することで、外的な環境の存在を無意識的に捨象することで、自分をコントロールする必要から開放しているともいえると思います。
こういったフローに入れる何かを持っている人にとっては、モチベーションは無用のものでしょうね。
グロース・マインドセット
同じ作業や課題でも、人によっては捕らえ方が違うことを分析した研究です。
たとえば、こどもに難しい問題を出したとき、喜んで目を輝かせるこどもと、やりたがらないこどもの違いは何か?といった研究です。
そもそもマインドセット(mindset)とは、習慣した考え方のことを言いますが、「スキルや能力は成長できる」という考え方が習慣になっている状態をグロース・マインドセット(Growth mindset)といい、逆に「スキルや能力は先天的に決められていて変えられない」という考え方が習慣になっている状態をフィックスト・マインドセット(fixed mindset)といいます。
何事にも挑戦して、難しければ難しいほど楽しめるようになるには、習慣的な思考方法が影響を与えているといいます。
まさにモチベーションをコントロールしているのは、自分自身のものの考え方や捕らえ方といういるわけですね。
この理論によると、高いモチベーションを維持するには、結果よりもプロセスを重視し、自分が優秀か賢いかということよりも、前よりも良くなったか何かわかったことはあるかを重視し、「やればできる」「失敗は成功の元」を口癖にすることが大切だということです。
グロース・マインドセットによって、しなやかな心を持つことができ、意識せずとも常に高いモチベーションを維持することができるはずです。
経営学・組織論でのモチベーション研究
組織の目的や目標を達成するための集団の在り方を調査した、もしくは集団はどういったときに誤った判断をするのかというモチベーション研究です。
モチベーション理論、リーダーシップ論
モチベーション理論、リーダーシップ論については数々の研究結果がありますが、有名な理論として、マクレランドの欲求理論があります。
これは、メンバーのモチベーションを次の3つの欲求に類型した理論で、まるで求道者のように困難なタスクをこなすこと自体に価値を求める「達成欲求」、権威をもつことなどによって他者に対して影響力を持ちたいという「権力欲求」、頻繁にコミュニケーションをとるなどまわりとの関係を友好的に保ちたいという「親和欲求」の3つがあると指摘した理論です。
人によってはモチベーションになるものは違うので、適切な欲求に気づくことで上手にモチベーションを高めることができるかもしれません。
以前モチベーション理論とリーダーシップ論についての記事を書いています。
ぜひ、こちらも読んでみてください。
モチベーション理論とリーダーシップ論は二つでひとつということ
リーダーシップについて、どこよりも分かりやすく、詳しく書いてみましたが、どうでしょう?
集団浅慮
集団浅慮とは、個人が単独で意思決定をする場合には決して選ばないようなリスクの高いアクションでも、集団で話し合った場合では非合理でリスクの高いアクションを選んでしまうことがあることを分析した研究です。
一般に、団結力のある集団または凝集性の高い集団が、公平なリーダーの不在などといった構造的な組織上の欠陥を抱えていて、組織の外部からの強い攻撃や脅威などの刺激が多い状況に置かれるときに、発生しやすいといわれています。
組織内のメンバーが同じような経験をしてきて、育ち方も考え方も価値観も似ている組織では凝集性は高くなります。
凝集性が高くて、みんなが同じ方向を見ている場合は、場の空気を読みすぎて、賛同を得やすい意見しか言わなくなってしまいます。その結果、ますます過去の経験を否定したり、とっぴなアイデアをだしにくい空気が組織内に充満してしまいます。
もし、そんな組織の中に、メンバーから公平に自由なアイデアを聞きだせるリーダーがおらず、市場の変化や技術の革新、ライバル会社との激しい競争が巻き起こったときには、競争相手のことを甘く査定したり、極端な行動をとろうとしたりして、より危険なアクションを選らんでしまうというのです。
長い間同じ価値観の仲間どうしでいる環境では、これまでと違った、まったく新しいことを言い出しにくい空気になっていて、「変えてみよう!挑戦しよう!」というモチベーションが上がりにくくなることを示しているのではないでしょうか?
何か新しいことに挑戦するのであれば、慣れ親しんだ環境から飛び出すことが必要なのかもしれませんね。
ゲーム理論
ゲーム理論がモチベーション研究の中にあることに違和感をもたれるかもしれませんが、人の次にとるべき行動を決める場合に影響を与えているという概念なので、ここに分類しました。
ゲーム理論とは、簡単にいうと「相手の人の行動を読んで、自分の行動を決める」理論です。
彼我の意思決定が相互作用が及ぼしている状況が、チェスや将棋のようなゲームと同じなので、ゲーム理論と呼ばれています。
競争相手に勝つという目的が目標がある場合では、ゲーム理論に基づいて考えることで、いちばん被害がすくなくて勝てる方法や、競争自体を避ける方法を見つけ出せれば、次のアクションへのモチベーションの源泉や根拠になるかもしれません。
そういいう意味でいうとゲーム理論は、モチベーションの源泉である「次にやることがわかっていること」、「それが実行できること」、「ゴールが見えること」を明らかにする理論ですね。
行動経済学でのモチベーション研究
人が(自分も含めて)人の行動をコントロールするためには、どういった要素が影響を与えているのか、または、合理性をもったがゆえに繁栄してきた人間が、合理的な判断をしようとするがゆえに間違った選択をしてしまうことを研究した分野です。
行動経済学の研究結果は、人が、ときに認知的な誤解から様々なモチベーションを持つことがあるということを示していると思います。
これらの研究は厳密にはモチベーション理論ではありませんが、たとえば市場や顧客のモチベーションをあげる手段といった側面でも研究されているという意味でも行動経済学を取り上げました。
ここでは研究、理論の紹介だけにとどめておきます。
認知バイアス
アンカリング効果などが有名です。始めに感じた印象がその後のアクションに対するモチベーションを左右することを示した理論ですね。
たとえば、以下のような例があります。
「商品が2つあったら安いほうを選んでいたのが、3つあると真ん中を選びたくなる」
「9000円が8000円に値引きされたら安く感じるが、199000円が198000円になっても変わらないと思う」
「得している株はさっさと売り、損している株は持ち続けてしまう」
「採算が取れなさそうでも、途中まで建設した施設を完成させてより赤字が膨らむ」
「1万円得するより1万円損するほうが感情の揺れ幅は大きい」
(via)『経済は感情で動く』マッテオ モッテルリーニ著
プロスペクト理論
物事の言い方や捉え方によって次のアクションのモチベーションが異なることを示す理論です。たとえば、以下のような例があります。
あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
選択肢A:100万円が無条件で手に入る。
選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。どちらの選択肢も手に入る金額の期待値は100万円と同額である。にもかかわらず、一般的には、堅実性の高い「選択肢A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされている。
(via)https://ja.wikipedia.org/wiki/プロスペクト理論
影響力の武器
誰かのモチベーションをおこしたいときに有効だと考えられる法則です。
ここでは代表的な法則として、返報性の法則と一貫性の法則をご紹介します。
【返報性の法則】
人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。この「返報性の原理」を利用し、小さな貸しで大きな見返りを得る商業上の手法が広く利用されている。
至近な例では、試食がある。試食は本来は、無料で食品を提供し、その味を客が確かめ、購買に値すると判断した場合に買ってもらうプロモーション戦略のひとつであるが、客は店員から直接食品を手渡されることによって、その味いかんにかかわらず商品を買わなければいけないという気持ちになることが多い。
(via)https://ja.wikipedia.org/wiki/返報性の原理
【一貫性の法則】
人は自身の行動、発言、態度、信念などに対して一貫したものとしたいという心理が働く。この心理を「一貫性の原理」と呼ぶ。この心理の根底には、一貫性を保つことは社会生活において他者から高い評価を受けるという考え、複雑な要因の絡み合った社会生活での将来的な行動決定においてより簡易に行動を決定することができるなどの要因があるといわれる。
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と呼ばれる手法は「一貫性の原理」を利用している例である。これは、顧客に対して小さな(一般的には顧客にとって損失のない)要求を行い、それが受け入れられてから大きな要求を行うという手法である。
試食というプロモーション戦略には(中略)試食を受け入れた顧客が、自身の行動の一貫性を保ちたいがために購入の要求も受け入れてしまうという、「一貫性の原理」が強く働いていると言える。
(via)https://ja.wikipedia.org/wiki/一貫性の原理
こういった無意識の認知バイアスにうまく働きかけることで、自分、メンバー、顧客、市場などのモチベーションをコントロールできるかもしれませんね。
ちなみに
※ここでは、私がわかりやすくするために恣意的に分類していますので、分類の仕方になんとなく違和感をもたれたかもしれませんが、もちろん「モチベーション」はあるひとつの学問分野に閉じた研究ではありません。
たとえば集団浅慮は心理学の分野に分類したほうが、よりしっくり来る方もいらっしゃると思いますが、「集団」というキーワードから恣意的に経済学・経営学に分類しています。
逆にマズローは現在では経営学の分野で頻繁に使われることが多くなっていますが、生命維持というステップから網羅的に研究しているという側面で、心理学の領域に分類しています。
あくまでもひとつの分類の視点と思ってください。
モチベーションの意味まとめ
結局、モチベーションはストレスとの対比の中で語られるべきことで、そのストレスを取り除きたいがために、私たちは自分や他人の「モチベーション」のことが気になって仕方がないのです。
「なんとかして、業績悪化のストレスを避けるために、組織をコントロールしたい。そのためには、チームのモチベーションをあげたい!」
「このままでは単位が取れない。でも気が散って勉強する気持ちを高めることができない。なんとかしてモチベーションをおこしたい!」
「子供が部屋を散らかしたままでイライラする。なんとかして自主的に片づけができるようにさせたい!」
こんな感じで、自分にかかっているプレッシャーやストレスを緩和するために、相手(もしくは自分自身)をコントロールしたい気持ちが「モチベーション」の言葉の裏に隠されているのです。
ですが、当たり前のことですが、誰だって、自分のやることを誰かにコントロールされたいなんて思っていません。
その事実を理解しないまま、チームへの指示の出し方が横柄で強権的であったりすると、モチベーションが逆に下がったり、相手から反発があったりするのです。
広告だったら都合のいいところだけを誇大に強調すると、顧客や市場からは胡散臭い印象をもたれてしまうのです。
自分自身にしても、いくら勉強をがんばろうと思っても、楽しいことに流れてしまって、いつまでたっても勉強を始められなくなるのです。
モチベーションを高める具体的な方法は、人や組織によって千差万別かもしれませんが、根底に「ストレス」と「コントロール」という関係があることは間違いありません。
であれば、モチベーションをあげたいと思っているのなら、まずは、自分が一体何に対してストレスを感じていて、そのストレスから解放されるために本当に相手や自分をコントロールすべきなのかどうかを自問すべきだと思います。
もしかしたら、「モチベーションがないと結果はでない」という誤った固定観念に縛られているかもしれません。
むしろ、最適な環境と条件の下であれば、たとえモチベーションがなくても最適な努力と最高のパフォーマンスを発揮できるかも知れないのです。
そういう意味でいうと、逆説的ですが「モチベーション」という言葉や概念がない世界こそが、理想の世界なのかもしれませんよね。
著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。