今回は、タイトルどおり「ブレスト」初心者向けに、ブレストの意味と進め方をまとめてみました。
「ブレスト」の意味。ちゃんと知っていますか?
ブレストはブレーン・ストーミング(brain storming)の略です。直訳すると「脳みそ嵐」のことですが、これでは意味がわかりません。簡単に言うと、ひとつのテーマについて数名が集まっていろいろなアイデアを出し合う会議のことです。
会議に参加しているメンバーの脳みそを、まるで嵐が吹き荒れているかのように、ひねって、ひねって、ひねりまくって出し合って、面白い斬新なアイデアを発見する方法なので、このような言い方がされています。
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ちなみに「ブレスト」でググると「平泳ぎ」と出てきます。私は学生時代に競泳をやっていたので、平泳ぎのことをブレストというのは当然知っていますが、入社して間もない新入社員が、上司や先輩に「こんどブレストやるぞ!」って言われてググってみたら「平泳ぎですよ」って言われると、きっとびっくりしますよね!でも、安心してください。水着の準備をする必要はありません。準備すべきなのは、フレッシュな「脳みそ」のほうです。
ブレストをやる意味
新しいアイデアというのは、すでに存在している何かと何かの組み合わせだといわれています。
ブレストは、できるだけたくさんのアイデアを出することで、ひとつのテーマについてあらゆる視点から考え直してみたり、他人のアイデアに付け足してみたりすることで、画期的なアイデアを生み出すことができるはずだという、「三人よれば文殊の知恵」の考え方に基づいています。
だから、できるだけ多くのアイデアを出さないと、ブレストをやる意味がありません。
したがって、ブレストでは、なんらかの結果をだすのではなく、アイデアを発散することに意味があります。
通常の会議だと、議題やアジェンダに沿って進行しつつ、ひとつひとつ対策や結論などの議論の結果を出しなら進めるものですが、ブレストではこのような進め方にはなりません。
結論は得られなくても、次のブレストまでになんらかのアイデアが各人の頭の中で自然と熟成されていくことが理想です。それによって、新たなアイデアを呼び起こすことができるかもしれないのです。
一度のブレストで結論をだそうとせず、継続的、断続的に続けることにブレストの本当の意味があるのです。
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ブレストの進め方とルール
少人数制
人数が多くなると発言する機会も少なくなってしまいますし、いつも同じ人が発言するようになってしまいます。経験上、5~6名程度の人数制限が最適だと思います。
ダイバーシティを確保
立場が変われば意見も変わるといいます。お客さまの立場に近い人、開発や製造の立場に近い人、営業がプロモーションに近い人など、メンバーの多様性を確保することで、これまで気づかなかった価値に気づくことがあります。
批判禁止
面白いアイデアを出すためには、リラックスした環境が必要だといわれています。それは物理的な環境だけではなく、心理的な余裕を持つことも含まれます。画期的なアイデアを発見するには、批判を恐れて発言できなくなってしまう状況だけは避けなければなりません。
どんなアイデアでも真剣に聞く
常識はずれのアイデアは、時に笑い飛ばされてしまうものです。しかし、「常識」は閉じられた環境にのみ通用するものです。自社や業界の常識は、世の中の非常識だということは良くあるものです。発言者が笑いを狙っていない限り、笑い飛ばさないようにしなければなりません。
発言の途中でさえぎらない
とくに地位が高いひとが良くやってしまう過ちが、ほかの人が発言している最中に話し始めてしまうことです。途中で話をさえぎられた人は、自分のアイデアは聞くに値しないものだと感じてしまって、二度と発言しないでしょう。
人のアイデアに便乗する
画期的なアイデアは、さまざまなアイデアの組み合わせだとも言われています。誰かのアイデアが面白いと思ったら、積極的に便乗して話を膨らませることが大切です。ブレストをやっている意味があるというものです。
「目」で考えられるように書き出す
ブレストで重要なのは、人の意見をメンバーに見えるように書き出すことです。ホワイトボードに板書する方法もありますし、ポストイットに書く方法もあるでしょう。箇条書きに書いておいて、それをグルーピング化したり、マトリックスにまとめたりすることで新しい視点が生まれることもあるはずです。
結論はださなくてもいい
繰り返しますが、ブレストをやる意味は、大量のアイデアを発散することであって、結論を出すことではありません。メンバーの頭の片隅に、ブレストででた議論がいつまでも居座って、いつのまにか新しいアイデアが醸成されていくことが大切です。むしろ中途半端で、モヤモヤしているほうがいいのです。
進行役がひとり必要 ファシリテーター
ブレストをスムーズに進めるためには、できれば進行役がひとり欲しいものです。進行役は、ファシリテーターと呼ばれ、メンバーの意見を促す役割を持っています。できるだけ、全員から意見を出してもらうことが望ましいです。
ファシリテーターには、その道の権威者や物知りよりも、逆の視点を提供できたり、まったく新しい思考の軸を提示できる人のほうがいいと思います。ファシリテーターがあくまでも黒子に徹し、メンバーが非常識なアイデアを出したり便乗したりできるようにブレストをコントロールすることで、ブレストは楽しく有意義な会議になるはずです。
ブレストの失敗とデメリット
ブレストは、目的、人数、場、役割、ルールで定義されていました。これらの定義に従わないでブレストをやっても、ただの時間つぶしの雑談で終わってしまいかねません。そんなんじゃ、せっかくメンバーに時間を作ってもらってブレストをやった意味がありませんよね。
しかし、上の条件を満たしていても、ブレストがうまく行かないこともしばしばです。有益なブレストを行うためには、気をつけておかなければならないことはたくさんあります。以下はこれまでに経験した中で、こういった視点がないとブレストが失敗してしまう、決定的に注意が必要な事柄を書いておきます。
メンバーが対等でないと、批判を恐れて意見が出てこない
地位の違いはブレストの大きな障害です。ここでいう地位とは、上司部下の地位の関係だけでなく、専門家や有識者との知識レベルの違いも同じです。
ルール上では誰かのアイデアを批判したり、否定してはいけないとは知っていても、どうしても興味がないアイデアには冷淡な態度をとってしまい勝ちです。たとえ上司が言葉で批判しなかったとしても、態度で伝わってしまうと急速にアイデアの広がりがなくなってしまいます。その結果、上司好みのアイデアを出してしまうという最悪のパターンに陥ってしまうでしょう。
批判しないというのは言葉で批判しないということだけではありません。話者と視線を合わせないことや無言、腕を組んだ態度や早く結論を出そうとする態度も同じです。
メンバーの育った背景や考え方や同じだと、飛躍的な意見が出てこない
過去の成功体験や失敗体験が、発想の飛躍の邪魔をするものです。そもそも、集まってアイデアを出そうとすること自体が、すでに過去の成功体験や失敗体験に縛られて、発想の飛躍が滞っている証なのかもしれません。なぜなら、努力をしなくても良いアイデアに満ちているときには、ブレストなんて必要ないですからね。
そんな過去の成功体験や失敗体験に縛られているときには、予定調和のアイデアに落ち着くことがしばしばです。みんな目の前の業務や顧客の顔が浮かんでしまって、無意識のうちに、できるだけ「リスクが低いアイデア」という制限付のブレストになっているものです。画期的なアイデアには発想の飛躍が必要です。そのためには、できるだけ育った環境やバックグラウンド、価値観やスキル・ノウハウが違うメンバーを集めなければなりません。
ブレストのルールに気をとられ過ぎると、会話がはずまない
ブレストはリラックスした環境で雑談のような感覚でアイデアを出すのが理想です。でもそんなリラックスした環境だと、ついルールを忘れてしまうこともあります。そんなとき進行役のファシリテーターや同僚から注意ばかりされていたら、雑談できない雰囲気になってしまいます。ブレストは雑談の延長線であることが理想です。あまり杓子定規になりすぎないようにしなければなりません。
さいごに ブレストの本当の意味
ここまで書いていてなんですが、個人的にはブレストはアイデアを出す方法としては、あまり有効ではないと思っています。
上に書いたブレストの失敗とデメリットの中でも、とくに日本の会社ではメンバーが必ずしも対等ではなかったりすることが多いのです。
また、情報の非対称の問題もあります。お互いが持っている知識を共有できていないと、議論がなかなかかみ合いません。たとえば、私が戦略的な知識を前提に話していても、戦略論を知らない人にとっては、私が何を話しているのかさっぱりわかりません。スムーズに議論を進めるには、まずは知識を共有するところから始めなければならないのです。これはけっこう労力がいるもので、こっちが重要だと思っていることをわかってもらうのに骨が折れるのです。
とはいいつつも、私も意見を集めるためにブレストはやっています。ただ、画期的で斬新なアイデアを生み出すためというよりは、情報収集という側面が強くなっています。現場の意見をヒアリングするために、「どうすればもっと良くなるか」というブレストをやって、アイデアを出す会議という体裁はとっていますが、本当はそれほど期待はしていません。
むしろ、ブレストで集めた情報を自分の頭の中に叩き込んで、ブレスト以外の情報と混ぜ合わせて時間をかけながら、新しいアイデアを生み出すようにしています。
要は、ブレストは使い方しだいだということです。あまりブレストを信用し過ぎないで、自分の頭で考えることが大切だと思います。
アイデアというのは、会議や話し合いの中ではなかなか生まれないものです。結局は、それこそ自分の頭を信頼するしかないと思っています。
著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。