プライシングとは? 価格戦略と価格設定の方法について

プライシングとは価格戦略の目標に応じた価格設定のこと

マーケティングミックスには、製品、価格、チャネル、プロモーションの4つの機能がありますが、プライシングとは、この中の「価格」についての機能を言います。
つまり、マーケティングを進める上で、価格戦略の目標に応じて価格を設定していくことを言います。

プライシングにおける価格戦略 目標のきめ方

価格を設定するにあたり、高くするのか?安くするのか?といったことは、会社を経営するうえで死活問題です。
大前提として、会社が存続していくためには利益が必要です。
利益は売上から費用を除いたものでもあるので、利益を増やしていくためには売上を増やしていかなければなりません。
そのためには価格を低く抑えて、多くの人にたくさん買ってもらえるようにして売上を増やすのか?それとも、特定のお得意様に高い価格で買ってもらうようにするのか?といったことを決めておく必要があるのです。

このように、会社の成長や安定に対して「価格」は大変大きなインパクトを持っているのです。
では、価格をどのように決めていくために、どういったことに気をつければいいのでしょうか?
まずは何のために価格を決めるのか?といった価格戦略が必要になってくるはずです。
価格戦略の目標としては、以下のようなものがあります。

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売上の最大化

売上は誰にとっても一番わかりやすい評価指標です。
どれほど多くの人に買ってもらったのか?社会で認められているのか?といった感覚的にわかりやすい評価基準です。
そのため、上場している企業では、売上の成長を投資家と約束していることがありますし、上場してなくても、売上を最重視している会社も多いはずです。
こういった会社では、目標とする売上高を達成するために、最適なプライシング・価格設定を行うことが必要でしょう。ただし、むやみに高い目標を設定するのではなく、目標とする利益率を前提として売上高を増やすことが求められます。

目標利益率の達成

目標とする売上高と目標とする利益率の両方とも達成できれば言うことはありませんが、「二兎を追うもの一兎をも得ず」になっては意味がありません。
そこで、目先の売上成長よりも会社の経営の元手となる利益をより重視する場合は、目標利益率の達成を重視したプライシング・価格設定が必要となってきます。
こういった価格設定の方法としては、投資とリスクを検討したうえで、投資利益率(ROIといいます)から適切な価格を決めることもあります。

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マーケット・シェアの維持・拡大

市場が収縮していないのであれば、マーケット・シェアの拡大は売上高の増大に直接結びつきますし、商品の出荷量が増えることで商品単位あたりのコストを減らすことができるようになってきます。
これを規模の経済効果と呼びますが、シェアを拡大することで、売上も利益も増やそうという考え方です。
シェア拡大を念頭に置いたプライシング・価格設定を行う場合は、将来の市場の成長やニーズをもとに決めていくことが重要になってきます。

価格の安定化

商品の価格が発売してからすぐに値くずれしてしまっては、ユーザーにとってはチープな商品と見られてしまいかねませんし、利益も減ってしまいます。
だから、マーケット・シェアが高い商品の価格を安定させることは、利益の安定にもつながると考えられます。
また、企業のイメージやブランドイメージの維持と向上にも有効でしょう。
ただし、独占禁止法上の制約もあるので注意が必要です。

競争への対応

価格戦略は、競合企業との競争上でも大きな意味があります。
もし、ライバル会社が思い切った値下げで、自社の顧客を奪おうとしてきたら、同じような価格設定で顧客を守ることも、ときには必要かもしれません。
または、シェアが高いライバル企業からの乗り換えを進めるようなキャンペーン価格を設定することで、自社の顧客からの利益を守りつつ
、ライバル企業の市場シェアを奪うなどの戦略も考えられます。

プライシングでの価格設定の方法

プライシング・価格設定の基本は、これ以下の価格では利益がでないという価格と、これ以上の価格では誰も買ってくれないという価格の間で決定されます。
この価格帯を押さえた上で、ライバル企業の製品との機能と性能の違いや価格差、市場全体の需要の大きさと成長の度合いなどを考えながら柔軟にプライシング・価格設定していることが、会社が利益を生み出すためにもっとも必要なことだといえます。

コスト志向型価格設定方法 コスト・プラス法

このプライシング方法は、コストに一定の利益を加えて販売価格とする方法です。
当然、商品が売れさえすれば、一定の利益は確保することができます。
しかし、会社全体のコストをまかなえるだけの数量を販売できるかどうかは、売ってみないとわかりません。
つまり、この価格設定方法は、あくまでも自社の都合だけで決められているので、市場においてこの価格で受け入れられるどうかはわからないのです。

マージン率によるコストプライス法

製造業では、製造原価に一定額または一定率の利幅(マージン)を加えて販売価格として決める方法が主流です。
過去の実績や業界の慣習などをもとにプライシング・価格設定されます。

マークアップ率によるコストプライス法

流通業者では、仕入原価に一定のマージンを加えて販売価格をとして決める方法が主流です。
仕入原価に加えるマージンをマークアップといいます。

需要志向型価格設定方法

ユーザーがある商品に対して、どの程度の価値を認めてくれているかによって販売価格を決める方法が、需要志向型価格設定法といいます。
市場調査やアンケートなどを基にして、この商品ならいくらくらいまでなら支払う意欲があるかを判断して、プライシング・価格設定します。
プライシング後は、この目標価格に対して十分な利益を生み出せるような製品の開発や原材料の調達を行います。
スーパーマーケットなどでは、これらの手法を取ることがあります。
たとえば、弊店間際の生鮮品の値下げは、在庫をなくすという目的とともに、生鮮品の鮮度に見合った需要に対する値下げという意味ありがあります。

競争志向型価格設定方法

競争業者との競争を意識したプライシング・価格設定方法です。
競争業者が設定している価格を目標にして、同じ価格で販売したり、それよりも安い価格にしたりします。
安く設定することで、シェアの拡大を狙ったり、売上の拡大を図ったりします。
それ以外にも、競争入札方式により、価格を設定する方法もありますが、基本的にコストや需要の関係をあまり考慮にいれないで価格を決定する方法だといえるでしょう。

心理的価格設定方法

プライシング・価格設定は、基本的にコスト、需要、競争が主な要因となって決定されますが、それ以外の要素として消費者の心理的な側面を重視した方法もあります。

名声価格

バッグや装飾品を代表とするブランド品や高級品は、消費者に品質の良さや持っていることのステータスの高さを印象付けるために、意識的に高い価格で販売しています。

習慣価格

一定期間の長い間価格が変更されない商品などは、価格の変更が難しいものです。
たとえば、チョコレートなどのお菓子やジュースなどの飲料品は長い間、ほぼ同一価格で販売されているはずです。

端数価格

わざと切れの良い価格ではない、中途半端な価格を設定する場合があります。
たとえば、98円、1980円などといった場合がそれです。
心理的になんとなく、割安感を与えやすいプライシング技術です。

新製品の価格の決め方

いままで売りなれている商品であれば、比較的価格設定については上記の通りの方法でできるはずですが、新しい商品を販売する場合は、これまでの実績がないために参考にすることができません。
また、業界の慣習に従ってプライシングしていては、新しい市場でシェアを拡大したり利益を拡大したりできないでしょう。
そのため、新商品・新製品においては、以下の価格の決め方を考慮に入れて決定する必要があるのです。

上澄み価格戦略(スキミング)

上澄み価格戦略とはスキミング価格戦略とも呼ばれますが、新製品の製品ライフサイクルの導入段階では、高い価格を設定しておき、市場が成長するにしたがって、価格を下げていく戦略です。
これにより、販売当初に利益を稼いでおき、商品の認知度が高まるにつれてシェアを拡大し、さらに利益を増やしていこうという考え方です。
ライフサイクルの導入時期では、あまり注目を集めないため、高い価格でも支払い意欲のある特定のニーズの顧客に絞って、販売活動をする必要があるので、高い営業力が必要になってくることと、ニーズをもった顧客がどこにいるのかを的確に把握するマーケティング・スキルが必要となってきます。
最初の段階で製品開発投資を回収することができれば、非常にすぐれたプライシング・価格設定であって、とくにリーダー企業には向いている手法でしょう。
開発された商品が顧客ニーズにマッチして、技術的にも高度で、ライバル会社から真似されにくい商品である場合には、有効な手法です。

市場浸透価格戦略(ペネトレーション)

市場浸透価格戦略は、ペネトレーション価格戦略とも呼ばれ、スキミング価格戦略とは真逆のプライシング・価格設定の方法です。
新製品・新商品の販売当初から思い切った価格設定でマーケットシェアを獲得していこうという考え方です。
安い価格を維持し続けることで、ライバル企業の追随をかわし、シェア拡大による利益増を狙ったプライシング手法です。
このプライシング・価格設定では、大量生産によるコスト削減や、他の市場で培った技術を転用することで、圧倒的な価格で商品を開発することができるといった場合に有効です。
ターゲットとなる市場は、基本低に価格の変化に敏感な顧客を狙っています。
ライバル企業の商品を比較的かんたんに真似することができる市場や、短期間で市場に参入できそうな業界であることが予想される場合には、有効だといわれています。

著者情報

工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。

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