ファシリテーションのスキルを学ぼう。会議の締め方ってどうすりゃいいの?

会議の締め方ってどうすりゃいいの?

「時間ですので始めます。早速ですが、今回はメールでお伝えしたテーマについて、自由闊達なご意見をいただきたいと思います。まずは、スクリーンの概要説明資料をご覧ください。…」
「全員揃ったようなので、そろそろミーティングを始めます。まずは、前回の打ち合わせの結果から持ち帰ってもらった宿題の進捗について、順番に説明してください。…」

いきなり会議を始めるシーンから入りましたが、今回のテーマは、「会議の締め方」です。
会議の締め方についての記事なのに、会議の始め方からはじめているのは、そこに重大なポイントが隠されているからです。
上記のような会議の始め方は、どこの会社でも見受けられる、ごく一般的な会議の始め方ではないでしょうか?しかし実はこれ、典型的な「やってはいけない会議の始め方」なんです。
では、一体何が問題なのでしょう?

答えはズバリ、「どうなったら会議が終わるのか分からないから」です。

ファシリテーターは、「意見をいただきたい」と冒頭に述べていますが、この発言では具体的な方向性が見えません。「とにかく始めてみよう」「まずは意見を聞いてから考えよう」といった行き当たりばったりな感じにも見えてしまいます。
これでは参加する側に「ダラダラ続くだるい会議」という印象を与えかねません。

そんな印象を与えないためには、すくなくとも、たとえば「面白いと思える意見が3つ以上出たら終了」とか、「全員から課題解決のアイデアが出るまで終わらない」とか、「有力な案を投票して一つに絞り込んだら終了」など、何をもって終了とするかを具体的に示すなど工夫することによって、参加する側のモチベーションを上げ、より効率的に会議を進めることができます。
まさに、これが会議をうまく締めるための秘訣なのです。

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会議にも「時間」と「ゴール」があるはずです

「いやいや、いいアイデアってというものは、井戸端会議みたいなノリから生まれるんだよ!」と思われる方もいるかもしれません。
確かに、そういうこともあるでしょう。
しかし、それは意図せずに集まった人たちが、リラックスした状態で自由気ままに(あるいみ無責任に)発言するために生まれる効果なのです。
それを、あらかじめ予定されていて、議題も決まっていて、それぞれが責任を持った発言が求められる緊張感のある会議に求めるのは、ちょっと違うはずです。

もしかしたら、サッカーに例えてみたらわかりやすいかもしれません。
サッカーには「決められた時間内に相手チームより一点でも多くとった方が勝ち」というルールに則った勝利条件がありますが、それでは、もしもサッカーにこのようなルールが無くなったらどうなるのでしょうか。
勝てる条件が分からないまま、ただひたすらボールを蹴り続けなければならないとしたら、あなたならどう感じますか?
「一体いつまでこんなことをしなければならないのだろう?」「いつになったら終わるの?」と、そんな不安や苦痛を感じるはずです。

会議にも同じことが言えます。どうなったら終わるのか分からない会議は、参加する側にとって大きなストレスになるのです。
会議もスポーツなどの競技と同じように、決められた「時間」と「ゴール」があるのです。

ファシリテーション・スキル向上のコツは「会議の締め方」を意識すること

そもそも、会議を成功に導く技術がファシリテーションであり、そのスキルを活かして会議を成功に導く役割を担っているのが、ファシリテーターです。
ファシリテーターは、会議を成功させるためにファシリテーションのスキルを磨く必要があるのですが、先ほども述べたように、会議を成功させるには、会議を終了する条件を設定することが大きなポイントとなります。
つまり、ファシリテーション・スキル向上のコツは「会議の締め方」を意識することが重要な要素であるといえるのです。

スキル向上の方法は至ってシンプルです。
会議を始める際にゴールを決め、参加者に明示するだけでいいのです。
どんな会議でも忘れずに、毎回繰り返し提示することで、次第にスキルアップが図れるはずです。

では、会議のゴールとはそもそも何なのでしょうか?何のために会議をおこなうのかを改めて考えてみる必要があります。
会議の関連書籍やコラムを読むと、中には、会議とは「目的を明らかにするためのもの」とか「情報共有することが目的」や「議論すること自体が目的」と書かれてあるのもありますが、正直って本末転倒だと思います。
会議をおこなう上での情報共有や議論はあくまでゴールへのプロセスにすぎません。
そもそも、そんな曖昧なことをゴールに設定してしまうと、会議を開くこと自体が目的となってしまい、消化不良で自己満足の、いかにも生産性のない時間を過ごすことになってしまいます。
不明確な目標をゴールに設定している限り、会議を成功へ導くことは不可能です。

そもそも会議とは、満足いかない状況を打破するために開かれているのです。
会議をすることで現況をどういう状態に変化できればいいのか、どういう状態を作り出せばいいのかを考えることが重要と言えます。だからこそ会議のゴール、すなわち終了条件を明確にすることが必要なのです。

具体的な例で終了条件を考えてみる

それでは、会議の終了条件について具体的に考えてみましょう。
たとえば、業務における課題と原因を調べるよう上司から指示を受けたとします。部下を集めて課題についての議論をするための会議を開く場合、あなたなら何をもって会議を終了としますか?

「課題を議論すること」を終了条件とするのはどうでしょうか?
当然、これは間違いです。「議論すること」は会議の過程の一部に過ぎないので、終了条件としてはふさわしくありません。ただ話し合う場を作るだけなら、先ほど挙げた井戸端会議と同じです。何をもって会議を終了とするのかを明確にすることが重要です。

「課題や解決策が出たら終了とする」のはどうでしょうか?
何をもって終了とするかを明確に示してはいるのですが、これは正しい終了条件とは言えません。そもそも会議に参加する全員が「何が課題なのか」または「解決策はないか」といったことを話し合うために集まっています。
どのような状態になれば「課題が出た」または「解決策が出た」ということを、判断できるでしょうか。より具体的なゴール設定が必要なようです。

ゴール設定や終了条件の設定には、いくつか基準を設けることが有効です。
その基準の設け方として、たとえば、以下のような方法があります。

  • メンバーにノルマを与える
  • 投票などによって合意形成を図る
  • 判断する人を決めておく

メンバーにノルマを与える

課題や解決策の発言数をあらかじめ与えておいて、全員から意見を出してもらう方法です。合意形成までいかなくても、たくさんのアイデアを集めることをゴールに設定する場合に有効です。

投票などによって合意形成を図る

参加者の納得感や共感を優先するのであれば、投票などを使って、解決策の絞り込みを行うことも有効です。必ずしも全員が賛成にならないかもしれませんが、一つの結論を出せるということでは非常に意味がある方法です。

判断する人を決めておく

終了条件として、終了のジャッジをできる人(会議オーナーが多いと思います)を決めておくことも有効な方法です。そもそも誰が何のために集めた会議なのかという基本に立ち戻ると、この方法が最も有効かもしれません。

まだまだ、いろんな基準があると思うので、工夫をこらして自分たちにあった、そして会議の内容にそった終了条件を設定することができると思いますが、このように会議の終了条件を明確化することで、参加者の発言も質問の観点も変わり、より質の高い議論へと変化していくはずです。
また、会議のゴールがはっきりと示されているので、全員の足並みが揃い、団結力が生まれます。
終了条件が曖昧なままだと、何をどのくらい議論すればいいのか分からないままに会議が延々と続く状態に陥ります。参加者はそれぞれ好き勝手に話し始め、収拾がつかなくなってしまうでしょう。このような会議に参加したいと思う人はいないはずです。
終了条件の設定こそが、スムーズかつ効率の良い会議を進める上で大切なことと言えます。参加者が終了条件を意識して会議に臨むことで、全体のモチベーションを上げることにも大いに役立つでしょう。

もちろん、毎回毎回、すべての会議で終了条件を厳しく決めておく必要があるわけではありません。
いつもうまく締まらない会議があったり、ダラダラして時間がもったいないといわれている会議があったりすれば、試してみるのも手だと思います。
当然、開催する会議の種類や参加メンバーによっても変わってくると思います。
終了条件を設定するのかしないのかも含めて、時と場合、そして内容に合わせて柔軟に対応すればいいと思います。

ゴールに向かっていないと感じるときにも使える

会議に参加しているとき、「この議論は果たして今やるべきことなのだろうか」とか、「話が横に逸れている気がするけど、このまま続けてもいいのだろうか?」と感じることはありませんか?
いわゆる、議論が「脱線」している状態です。
そう。せっかく会議のゴールと終了条件を決めても、このような問題が起こることがあるのです。

明らかな脱線なら議論の軌道修正を図ればいいのですが、多くの場合、脱線しているかどうかの判断に迷いますよね。また、強引に軌道修正しようものなら場の空気を損ねかねません。

このようなときでも、終了条件を明確にしていると判断がしやすくなります。
判断方法は至って簡単です。今まさにおこなわれている議論が、「終了条件を満たすために必要かどうか」「今議論すべき内容かどうか」を問いかけるだけです。
答えがNOの場合、その議論は脱線状態と言えます。それがどんなに重要な話だったとしても、本会議には必要のない話なので早々に話題を切り替えるべきです。
Yesであれば、時間などの一定の条件を改めて設定しなおして議論を継続し、その条件に合致したとき軌道修正を図るのです。

会議の終了条件を明らかにするということは、一見単純で当たり前のように思えますが、実は奥が深いのです。
終了条件を的確に設定できると、会議のスピードが上がり、所要時間の短縮を図ることができます。下手な図解や付箋に頼るより、ずっと確実で効率的です。会議を開く際には、是非お試しください。

このように、終了条件を明確化するとともに議論が脱線していないかもあわせて確認するようにすることがファシリテーションのスキル向上に直接的に結びつくと思いますよ。

今日はここまで。いかがでしたでしょうか?
お役に立てたらうれしいです。

著者情報

工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。

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