なぜか会議だけは時間配分がなくても許されている
会議には議題やテーマが設定されているというケースが大半だと思いますが、最近では議題のことを「アジェンダ(Agenda)」と表記することも増えてきました。
議題やテーマを設定するのは理由があって、それによって議論すべき課題や問題意識を明確にすることができ、より効率的に会議を進めることができるからでしょう。
ところで、みなさんの職場では会議の議題にかける時間配分を決めているでしょうか?
おそらく「決めていない」と答える方がほとんどかと思います。きっと、時間配分なんて決めなくても特に問題ないとお考えかも知れませんが、甘く見てはいけません。
「一つの議題にかかる時間が不明」ということは、裏を返せば「どのくらい時間がかかるか分からない」ということです。そのようなことでは、ただやみくもに議論を交わすだけの状態に陥り、参加者が最も嫌う「ダラダラと時間ばかりがかかる会議」になりかねません。
会議以外では、こんな時間配分が決められていないことは許されないはずです。たとえば、製造ラインだったら、どうでしょうか?
あなたは製造工場に勤務していて、とある製品を初めて作るとします。
上司から「どのくらい時間がかかるか分からないが、取り敢えず作ってみろ」との指示を受け、まったくのノープランで製造に取り掛かります。
何の計画も無い行き当たりばったりの作業です。結局、予定時刻を過ぎても作業は終わりませんでした。
そんなときあなたなら、「今日は作りきれなかったけど、まぁいいか。明日また今日の続きだ!いつ終わるか分からないけど、俺たち頑張ってるからいいよね!」などという気持ちになれるでしょうか。
おそらく答えは「NO」だと思います。
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このような無計画な行為に対して嫌悪感をいただくのは、別に製造ラインに限った話ではないと思います。通常の業務や日常生活にでも、義務や責任が伴うことなら、誰もが時間配分を気にするはずですよね。もはや日本人の常識や慣習の範疇だと思います。
ところが、これが「会議」となると話が違ってしまうのです。なぜか、だらだらとした時間配分がない会議が許されてしまっているのです。
議題にかける時間が不明な会議とは、まさに生産性が低い状態を表しているのです。
これではせっかくの会議も、何も生み出さない時間の浪費となってしまいます。このような事態に陥らないためには、一体どのような対策を講じればいいのでしょうか。一緒に考えていきましょう。
どの議題にどれほど時間をかけるのか?
やるべきことは至ってシンプルですよね。「どの議題に何分かけて議論をするのか」を明確にする、これだけです。
一見単純なことのように思えますが、議題を洗い出すことに何分かければいいのかを考えるのが意外と難しかったりします。
10分で済む場合もあるかも知れませんし、はたまた一時間かかる場合もあるかも知れません。こればかりは実際にやってみないと分かりませんが、会議の種類によって、議論する内容はある程度予測することができるものです。
その会議の種類と全体の会議の時間に合わせて、議論の進行プロセスを予測したり、重要度の高いテーマに比重をかけたりすることで、あらかじめ時間配分をすることができます。
例えば、アイデア出しやブレストといった会議では、情報のインプットの時間、一人で考える時間、発表する時間、意見を出し合う時間、投票などによって意見を集約・収束する時間、合意形成といった感じで時間配分を考える必要があるでしょう。
一人当たりの持ち時間も考慮にいれる必要もあります。
定例報告会や意思決定会議であれば、発表者のテーマの持ち時間を先に決定し、その中で発表時間と質疑応答、今後のアクションの議論といった時間を見積ります。これも一人当たりの持ち時間を考慮にいれて考えます。
このように、具体的な時間配分の決定プロセスとしては、まずは会議の全体の所要時間を設定し、会議の種類から、どのような会議の進め方をすべきかを決定します。ブレストやアイデア出しであれば、全体としての議論プロセスごとに時間配分をします。定例会議であれば優先順位に応じて発表者毎の持ち時間を決めます。
次に、それぞれのプロセスや発表者の持ち時間内で重点的に議論すべき事柄(ブレストであればアイデア発表と投票後の議論の時間、定例会議であれば質疑応答の時間など)を想定して、全体の中で終わるように時間配分を見積もるのです。
実際にブレストをしていると、面白いアイデアが出た時などに場が盛り上がって、つい時間を超過してしまうものです。そういったことも考慮しながら、余裕を持った時間配分が必要となります。また、定例会議などの場であれば、発表者によってはたくさん時間が欲しい人もいるでしょうし、そうでない人もいるものです。そういった調整も、実際の会議運営においては重要な要素です。
こういった事前の想定と配慮は、ファシリテーターとして会議進行を担うのであれば、非常に気を付けておく必要があるポイントだといえます。
ファシリテーターの声掛けひとつで会議の生産性が変わる
実際の会議を進める場面では、どのようなタイム・マネジメントで進めるべきなのでしょうか?
具体的には、ファシリテーターは常に時計を見ながら、一つの議題に対する時間配分を確認しつつ、残り時間と議論の盛り上がり状況確認して、「あと◯分です」とか「◯分経ちました」と声を掛けながら会議を進めていきます。
このような進め方をすることで、参加者は会議の経過時間を把握でき、会議に対する意識も変わります。
これは心理学でいう「締め切り効果」と呼ばれるものです。終了期限が設定されているとその時間に収めようと意識が向き、自然と参加者の集中力が高まるのです。
「あと10分で結論が出るように集中しましょう!」とか「このペースだと絶対終わらないので、別のやり方にしますか?」などお互い声掛けをしながら会議を進行することで、参加者全体の集中力をより高めることができます。
時間配分はあくまで目安です。予定時間を大幅にオーバーするようなら、時間を延長したり日を改めたりして、少しでも参加者の負担を減らすよう配慮を心がけましょう。
大切なのは、会議中でも時間配分を常に気にかけておくことです。当初の予定時間よりオーバーしているのに気づかず会議がズルズルと長引いてしまうと、せっかく立てたプランが無駄になってしまいます。
たとえば会議中に「残り◯分です。このままだと当初の予定時間をオーバーしそうですが、どうしましょう?」などと確認することをお勧めします。
このように、時間配分を確認、活用しながら進行することで、会議を成功へと導くことができるのです。実際のところ、時間配分を気にしながら会議をおこなっている企業というのは、とても少ないのが現状です。
是非一度、この方法を取り入れてみてください。明日からの会議が、より良いものになるはずです。
実際のタイム・マネジメントでの声掛けの注意点
これまで会議における時間配分が重要だということをお話してきましたが、だからといって議題ごとに、しょっちゅう「あと◯分です。どうしますか?」と声掛けをするのはお勧めしません。
言われる側からすれば、常に時間に追われているような気がして落ち着かないものです。
また、ファシリテーターも議論に参加しているうちに、気づかないうちにタイムマネジメントがおろそかになってしまい、いつの間にか時間がオーバーしてしまったということもよくある話です。
そんな時、あらかじめ会議の種類に応じた対応方法を知っておくといいでしょう。
たとえば、ブレストのような会議であれば、プロセスごとにタイマーを設定するのがお勧めです。
ブレストのような会議では、みんなで競争してアイデアを出し合うといったゲームの要素も取り入れたり、上述した「締め切り効果」を生み出すためにも、時間制限を設けたほうがむしろ効果的ですので、タイマーを使うことで時間制限の声掛けを積極的にやるといいでしょう。
逆に、定例会議のような場では、決めなければならない重要事項が時間制限のために十分な議論がなされないことになってしまっては、本末転倒ともなってしまいます。そういった場合は、ある程度、間隔を決めて声掛けすると良いでしょう。
たとえば終了30分前に一度、次は15分前、5分前などといった具合です。時間が迫ったら、必要に応じて時間を延長するかどうか、会議のオーナーに問いかければいいのです。
このような時間配分を意識した会議を繰り返し実施することによって、ファシリテーターだけでなく、会議のオーナーも会議への参加者も大幅に議論のスキルを上げることができるはずです。
時間配分を意識するだけで、ファシリテーション・スキルが磨かれるという事実を知っていただければうれしいです。
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著者情報
工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。