読めばわかる!必ず成功する新規事業立ち上げの4つのステップ

組織の中でやりたいことを実現させたい!だから自分で新規事業を立ち上げてみたい!
そんな夢や目標を持っているのなら、まずは、事業の立ち上げ方を学ぶ必要があります。

学ぶ方法は数あれど、自転車や水泳と同じように、ビジネスの立ち上げも実体験で学ぶことがいちばん近道です。
とはいっても、いきなり起業するのはリスクが高いですよね。社内起業であっても、もし失敗したら、その後のキャリア形成に悪い影響を与えるのではないか、不安になってしまいますよね。

ケース・スタディはそんな人のために存在しています。過去の成功例や理論的な裏づけを学び、成功の確率を上げることに役立てましょう。
でも、ただ教科書を読んだり、人から聞いたりして学んでも、読み流し、聞き流しになってしまう恐れがあります。いきなり起業や社内起業に移せないのであれば、まずは、できるだけ沢山の過去の事例を頭に入れて、自分なりの視点で咀嚼し、新規事業が成功するために必要な要素を独自のフレームワークに再構成する作業が必要だと思います。
新規事業の成功要因を自分なりに再構成することで、腹落ち感が満たされ、挑戦する勇気もわいてくるはずです。すくなくとも、自分で再構成したフレームワーク(勝ちパターン)が正しいのかどうか、試してみたくなるはずです。

これまでこのブログでも、いろいろな業界の過去の新規事業の成功事例を見てきましたが、今回は、ここで独自で再構成したフレームワークの一例として、私が新規事業を企画する前に行った事例をお見せしましょう。

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新規事業には、成功しやすいパターンがある

MBA取得、戦略コンサルタントとしての経験、その後の事業会社での新規事業の立ち上げの経験、その他の自己研鑽など、私は、数々のケースの研究や経験から、新規事業には成功しやすいパターンがあるのではないかと考えています。
成功した事業の共通点としてはっきり言えるのは、業界の誰もがやっていない非常識なことを実現することができれば、真似されることなく利益を創出する可能性があるということです。
もちろん、顧客のニーズを満たしたり、創造したりする必要はあるのですが、新規事業にとってはライバルに勝てるかどうかがきわめて重要だと思っています。

簡単に言えば、業界の常識とは何か?なぜ常識になっているのか?それは顧客メリットがあるのか?さらに、可能であれば、スモール・スタートでリスクミニマムで実現できるか?に答えることができないといけません。

まとめると、1.業界の勝ちパターンや常識の把握 2.顧客価値の矛盾を把握 3.実現方法の構築 4.スモールスタート の4つのフレームに集約することができると思っています。

[audible]

1.業界の常識(KSF)の把握

新規事業を立ち上げるのであれば、商品やサービスが提供する価値と似たような価値をすでにどこの会社が提供しているのか、知る必要があります。競合となるプレーヤーはだれなのか?その商品やサービスがなければ、顧客はどうやって解決するのか?寡占市場であれば、トップ企業はなぜ強いのか?などを調べなければなりません。

もっとも重要なのは、その業界や市場の常識を調べる挙げることです。常識とはその業界にどっぷりつかっていては気づきにくモノです。新規参入する側の最大のメリットは、業界常識を持っていないことと、業界常識を攻撃することができることです。だから、その業界常識ができた背景をくわしく把握する必要があります。
新規事業の立ち上げを経験したことがない人は、このポイントがなかなか理解できません。業界のしくみや常識を調べて、それを真似しようとします。もしくは、より上手に業界常識をこなそうとします。それがいちばん確実な方法だと思うからです。
しかし、新規事業が成功するためには、すでに他社がやっていることを「よりうまくやろう」という考え方は危険です。レッド・オーシャンに突き進んでいくようなものだからです。

業界常識ができた背景と、その業界常識によっていちばん得しているプレーヤーは誰なのか?顧客に価値を届けるまでにいちばん利益を得られるのは誰なのか?といった視点で、どこをぶち壊せば、新規事業が成功する可能性があるのかを調べ上げるのです。言い換えれば、誰かの既得権益を剥ぎ取ることが、新規事業が成功するいちばん確実な方法であることを理解する必要があるのです。

業界常識を調べ上げる視点はいくつかあります。以下に代表的な分析の視点を挙げておきます。

マーケティングミックス

マーケティングミックスとは、商品、価格、チャネル、プロモーションのことです。マーケティングには欠かせない要素です。これらの要素の常識を覆せるかどうかという視点で、新規事業の成功の可能性を探ることはきわめて重要です。
たとえば「商品やサービスの機能の常識」では、レビットの「顧客はドリルを求めていない、穴を求めているのだ」という格言に集約されますね。穴を開けるための商品であれば、ドリルでなくてもよく、他の商品で代替できるという視点です。

誰も手を出さない市場

誰も手を出していないということは、手を出せない事情があるからです。もしかしたら、業界常識に従っていれば、既得権益が保てるから、あえて新しい市場には手を出そうとしていないだけかもしれません。もしそうであれば、既得権益をむさぼっていたプレーヤーに打撃を与えつつ、新しい市場で独壇場を築くことができるかも知れません。だからこそ、業界常識ができあがった過程と、だれがいちばん得をしているのかを調査することが重要なのです。

その他暗黙の常識

常識については、マーケティングミックスや空白市場だけでなく、そのほかの商慣行や思い込みもあります。業界にどっぷりつかっていると、なかなか気づきにくいものですが、異業種の常識と比較してみたり、ふとした違和感から業界常識に気がつくことがあります。そんな機会は逃してはいけません。
今となっては常識でも、かつては非常識のものが多かったはずです。違和感がビジネスチャンスにつながるような視点を常に持って、自分が顧客であったときの不満点などを省みることができれば、新規事業のアイデアは浮かんでくるものだと思います。

2.顧客価値との矛盾を把握

業界の常識が供給者の都合で出来上がっている場合は、市場参入の余地があると思います。いわゆる業界の都合がボトルネックになって、顧客価値が高められないでいる状況です。
本来であれば、もっと高めることができる顧客利益を把握することが大切です。いわゆる顧客の「あるべき姿」ですね。商品の機能性ばかり追い求めていては、このようなあるべき姿は本当に意味において、実現することはできません。商品だけでなく、提供方法やUX(ユーザー・エクスペリエンス)までの幅広い視点で、供給側の独善になっていないか調べる必要があります。
顧客が本来求めている価値や利益は、供給者側からは見えにくいものです。
たとえば、QBハウスの1000円カットは、価格よりも時間により価値を置いたソリューションです。従来の理髪店では解決できなかった価値は、供給者側の都合だったのです。このような矛盾を解決することにこそ、新しいビジネスのチャンスがあると思います。

価格メリット

価格設定方法は、どのようなルールで決められているのでしょうか?もっと安価に提供できる方法はないのでしょうか?もしくは価格は安ければいいのでしょうか?顧客は、支払った価格に見合った価値を得られたときに満足するのではないでしょうか?
供給側の都合で高くなっている価格体系を、より顧客本位の価格帯に変更することで、ライバルには真似できない仕組むを作ることに成功することだってできるはずです。

手間、動線などのメリット

ASKULが成功した一因は、これまで業界が無視してきた中小企業の事務の女性の暗黙の悩みを解決したことでした。事務の女性は社員から事務用品や文房具などが不足したら、いちいち買出しに出て、重い荷物を持ちながら事務所が雑居ビルの階段を登ったりして、手間のかかる業務もやらないといけませんでした。そのような手間を、FAX一本で解決したのがASKULです。本質的な悩みは、利用者にもわかっていないことが多いものです。

安心感、驚き、喜び

顧客価値は価格や機能、手間だけではありません。安心感や驚きといった感情面でもありえます。
SONYはかつて、ウォークマンやプレイステーションで、業界のしがらみを越えた商品で、消費者に驚きを与えファン作りに成功してきました。そんなSONYを尊敬していたスティーブ・ジョブスも、APPLEで業界都合の価値観を破壊しながら、次々と世界を驚かせることに成功し、SONYを追い抜いてしまいました。百貨店王のワナメーカーは、商品に値札をつけて販売した「正札販売」を始めたり返品制度を設けることで、安心感だけでなく、ショッピングの楽しみを生み出しました。

3.実現方法の構築

業界の勝ちパターンや常識を知り、業界の都合で提供できていない顧客価値を見つけることができたら、新規事業の企画段階での作業の半分は終わっています。
残りの半分は、いかにして価値を届けるか。つまり、ビジネスモデルの領域に入ってきます。
このステップでは、業界の常識を逆手に取りつつ、顧客価値の矛盾点を付いたビジネスモデルを構築することです。それによって、ライバル企業からは簡単に真似されることのない、顧客にとって最高で唯一の価値を提供することができるようになるのです。
いま、ライバル企業に真似されにくいといいましたが、これは、レバレッジ(てこの原理)によるものです。顧客ニーズがあるにもかかわらず、もしくは、あなたの新規事業によってニーズがあることがわかったにもかかわらず、自社の既得権益や業界の都合を優先するため、簡単に真似することができない状況をつくることができれば、それがテコの役割を果たして(つまり競合に邪魔されないので)少ない力で市場を開拓することができるようになるはずです。
こうなれば、顧客にメリットを出しつつ、十分な利益を生み出すビジネスモデルの完成です。
ライバル企業に真似されにくく、さらに顧客価値を高めるような、具体的なビジネスモデルがあることはわかっています。以下の通りです。

中抜き、カニバリetc

中抜きは、メーカー企業による直販化です。中間マージンがないため低価格を実現できる上に、間接販売に頼っていたライバル企業には簡単に真似できないしくみです。多くの成功例があります。次にカニバリゼーション(商品の共食い)です。ライバル企業にとっては利益を上げていた商品を、利益が低い商品に置き換えてしまうため真似しにくい方法です。新規事業を立ち上げるときに、ターゲット・セグメントを巧妙に絞り込んだり、ずらして参入することで実現できます。

利益構造

ビジネスモデルの成功は、いかにして収益をあげることができるかにかかっています。ライバル企業に真似されずに、高い顧客価値を提供できたとしても、収益が生まれない限り事業として継続することはできません。どこから利益を得るのか、どうすれば事業が拡大して成長できるのかを事前に検討する必要があります。このとき、新規事業のビジネスモデルはどの経済効果を適用できるのかを理解する必要があります。つまり、規模の経済、範囲の経済、ネットワークの経済などの、どのようなモデルで収益をあげようとするのか検討しなければなりません。

技術・商品開発、規制緩和

新しいテクノロジーの出現が業界秩序を破壊することがあります。また、法制度の改正、規制緩和などによっても、新規参入者を呼び込み競争が激しくなることもあります。自助努力だけでなく、こういった外部環境の変化にすばやく反応できるようにしておくことも重要です。これは、商品開発だけの話ではなく、個々の戦術(たとえばプロモーションやロジスティクス)やビジネスモデル全体にもかかわってくることです。つねに、外部要因の変化に気をつけておかなければなりません。

4.スモールスタート

業界の勝ちパターンも熟知して、高い顧客価値も提供できて、真似されにくいビジネスモデルも構築できそうなら、あとはいかに新規事業を立ち上げるかです。ここまでくれば、あとは楽チンなんてことはありません。ここからが本番です。業界の常識を無視するようなビジネスモデルを実現するんだから、当然、社内外からの反対意見もあるでしょう。
一般に新規事業は成功する確率がめちゃくちゃ低いので、「本当にうまくいくのか?」といったナンセンスな質問も飛んでくることでしょう。それらの調整をすべて終わらせて始めて、新規事業の立ち上げにいたるのです。
私の経験や文献研究では、スモールスタートが成功の鍵のひとつのようです。
どんなにライバル会社が業界のしがらみに縛られていても、いつの日か真似されてしまうものです。だから、できるだけ早く始めて、早く失敗して、早く改善するスピードがないと、新規事業でライバルを出し抜きつつ成長を続けることが難しいようです。

初期投資

初期投資を低く抑えることはマストです。社内でも他の事業との予算の取り合いになるでしょうし、よっぽど理解のある上司でない限り、新規事業にいきなり巨額の投資をしようなどとは言わないはずです。また、投資が大きすぎた場合の弊害もあります。もし利益がでないとわかったとしても、投資額を惜しむあまりサンクコストに縛られて、撤退できなくなってしまう可能性もあるのです(コンコルドの誤謬)。
あまりあせりすぎず、テストマーケティングをしながら、社内を説得する材料を集めつつ「小さく始めて、大きく育てる」心構えが重要ですね。

スピード

初期投資で書いたことと矛盾するように思われるかもしれませんが、いつまでもテストマーケティングをしながらゆっくりしているわけには行きません。上に書いたとおり、いつの日かライバル企業が同じことをやってくるのだから、それまでにできるだけ先行しておかなければなりません。そのためには、仮説検証のスピードを速めることと、意思決定を早めることです。できれば、社長直属のプロジェクトにしてもらうなどして、専任化、隔離化、フラット化が望まれます。

事前調整

最後がいちばん思い話です。新規事業を立ち上げるまでには、仮説立案や市場調査から始まって、戦略やビジネスモデルの検討とすすみ、最後は社内の利害関係者への説明と協力の要請にいたりますが、実は、新規事業がうまく行くかどうかは、最後の社内外の事前調整によるといっても過言ではありません。
新規事業の発案者は、いろいろな反対工作や理不尽な言動や態度、誹謗中傷と戦っていかなければなりません。これらに対処する有効な方法は、正直私にはいまだにわかっていないのですが、すくなくとも、まずは利害関係者へのインパクトが小さく、効果が大きいと考えられる領域から開始して実績を積みながら、地道に説得していくしかないと思います。

さいごに

ここで述べたフレームワークは、私が勝手につくったフレームワークです。私はいつも、このフレームワークにしたがって、新規事業を検討したり、戦略を練っています。みなさんの参考になれれば幸いです。

著者情報

工学系の大学を卒業後、大手通信キャリアでシステム開発、データ分析、マーケティング支援に従事。私費MBA留学し戦略コンサルファームに勤務。その後大手通信メーカーで新規事業立ち上げを10年以上。専門は新規事業立案、イノベーション、マーケティング全般。PEST分析やSWOT分析などのビジネスフレームワークの研修講師も担当。その他スキルに英語、ウェブ開発、動画制作なども。ブログは10サイト以上/ウェブサービスもいくつか開発経験あり。英語はTOEICは955点保持。結構変わった経歴だと思っています。詳しくはプロフィールをどうぞ。

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