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残念な人のフレームワークの使い方

      2017/11/10

3C、4P、5forces、SWOT、VRIO、バリューチェーン・・・。ビジネスで使われるフレームワークは山のようにありますよね。
中長期計画などの説明資料でも使われますし、日ごろの会議でも頻繁に飛び交っていると思います。
ある意味、一般常識になりつつあって、言葉の意味をしらないと恥ずかしい思いをすることもしばしばです。

そんなフレームワークですが、自信をもって「ちゃんと使えている」と言いきれる人はどれほどいるのでしょうか?フレームワークを使ったおかげで新商品は大成功!市場シェア逆転することができました!って言えた人は、まずいないのではないでしょうか?

フレームワークは便利。だからこそ、不便になった。

フレームワークはあまりに普及しすぎたため、ある意味、思考停止ワードになっていると思います。これらの用語を知ってさえいれば、資料も読み取れるし、一応会議で交わされている内容も理解することができます。
しかし、ほとんどの場合は、いろいろな飛び交う情報をひとつの図式にまとめることができるという、整理整頓上の美しさにだまされて、本来の効用を知らないままでいるのではないでしょうか?

表面上の利便性や美しさにだまされてしまうと、ついフレームワークで使われる図表のとおりにまとめようとしてしまいます。しかし、図表はあくまでも「フレームワーク」の理論を説明しているだけであって、使い方やまとめ方を指図するものではありません。
フレームワークは、ある理論をMECEに分割することで、網羅的に要素分割できることを示し、「こういった視点が有用である」こととか、「検討すべき要素である」こととかを証明しているに過ぎません。そう。理論を証明している図式に過ぎないのです。

結局、フレームワークを使いこなすには個々人の分析力に依存することになります。
フレームワークで分割された要素(3Cでいうと、Company、Competitor、Customerの3要素)を個別に分析することで、たしかに全体的な網羅性はカバーできますが、全体として意味のあるものになるとは限りません。
全体として一貫性のある意味を持たせるには、企画者の意図や目的が関係してくるのです。

たとえば、SWOTは強み、弱み、機会、脅威を分析するフレームワークだといわれていますが、それは間違いです。
むしろ、個別の要素を分割して分析してしまうと、全体が見えなくなってしまいます。
たとえば、自社の強みが業界No1の販売網であったとしても、それは環境変化によって陳腐化され弱みになってしまうかもしれません。個別の要素に分割して、それぞれを分析していると、外部の影響を無視して「マーケティング近視眼」が起きてしまいます。

そもそも、戦略上、相手の強みを知り、自社の弱みを知り、チャンスをうかがい、リスクを把握してコンティンジェンシー・プランを準備すべきだといっているだけであって、こんなことフレームワークがなくても競争している上では当然知っていないといけないことです。小学生のときに、鬼ごっこや缶けりをして遊んだ経験があれば、だれでも知っているはずです。

ただの穴埋め問題を解くような使い方になってしまったときには、どんなに最適なフレームワークを使って説明しても、「で、いったい何が言いたいんだっけ?」とか「本当にそういえるんだっけ?」といった質問に答えられなくなってしまいます。残念な人の説明でよくある風景ですよね。
結局、「フレームワークでは正しい解を求められない」のが真実です。これを十分に理解していないと、フレームワークは情報を整理するツールやチェックリストなどの、ただのお絵かきの道具に成り下がってしまいます。

企画者の意図がすべて。

上で述べたように、理論的な背景を抑えておかないと、フレームワークはただの整理ツールやチェックリストになってしまいますが、それでは本来のフレームワークの役割を果たすためにはどのような考え方をすればいいのでしょうか?
上で述べたSWOTで分析すべきことの例を挙げてみます。

よく長所は短所って言われるけど、その逆もしかりで、自社の「弱み」は別の視点から見てみると「強み」にすることができるはずだよね。
「市場機会」と思ってみても、実はライバル企業も同じように考えているだろうから、この先きっとレッドオーシャンになるはずだし、一見「脅威」なんだけど、競合の参入障壁が低いメリットがあるかもしれないよね。

この例では、正しい答えまで導くことはできませんでしたが、SWOTはこのように、考え方を示すだけの役割しかもてません。
限られた役割なのですが、これはこれでとても重要です。なぜならば、これによって「常識」を疑うことができ、ライバルの意表をつく戦略を立てることができるようになるかもしれないからです。整理するだけでは意味がないことでも、正しい使い方でフレームワークの本来の役割を果たすことができるようになるのです。

自社の「弱み」を「強み」に変える意図。「脅威」を参入障壁に変える狙い。あえて「市場機会」を手放す決断。など、企画者の狙いによって、SWOT分析の結果は変わってきます。同じ環境にさらされていても、人が違えば環境を認識する内容は違います。それは人によって感じ方が違うのとまったく同じことです。だから、SWOTの結果だって企画者の数だけ違うものが出てくるはずです。だから、フレームワークを使って正しい解を出すことを期待してはいけないのです。

SWOTに限らず、すべてのフレームワークは、こういった企画者の狙いや意図を深く掘り下げるための道具であるべきなのです。
たとえば、バリューチェーン分析も同様です。各項目を埋めつくすことには大きな意味はありません。業界のライバル企業と比較して苦手な箇所を補強する方法を探したり、「アウトソーシングして全体最適を目指すのだ!」といった企画者の訴えたいと思っている事柄がないと、お絵かきになってしまいます。つまり、自社のコアコンピタンスがどこにあるか、どこをコアコンピタンスにすべきかといった意図を掘り下げるのが、バリューチェーン分析の真の価値なのです。

行間を読み取る力

フレームワークとは、企画者の意図を深く掘り下げるための道具だと説明しましたが、企画者の意図があっても使いこなせないと意味がありません。そして、使いこなすためには、それなりのスキルが必要です。まず最初に取り組むべきことは、フレームワークが示す理論的な背景を知っておくことです。

たとえば3Cというフレームワークがありますが、3Cを使いこなすためには、各要素が何を指しているかだけでなく、要素間の関係性を理解しなければなりません。3Cの各要素は、Company(自社)、Competitor(競合)、Customer(顧客)でした。
分析される事柄としては、たとえば、

市場で生き残るためには、業界内のパワーバランスを知っておかなければならないよね。
業界の主なプレーヤーとしては、自社と競合のパワーバランス、競合と顧客のパワーバランス、自社と顧客のパワーバランスなどを自社に有利なように傾けるには、現在の硬直的なチャネル構造ではダメだ。だから・・・(後略)。

ここでは、たとえとして「パワーバランス」を書きましたが、上で述べたように企画者が何を意図しているかによって、変わってきます。後略した箇所も同様です。

ここで注目すべきは、フレームワークの要素そのものではなく、要素間の関係を考慮していることです。フレームワークは要素に分割されているため、つい個別の要素を分析して書き並べる作業のように思ってしまい勝ちですが、それは間違いです。もっとも訴えるべき箇所は、要素間の関係にあります。それぞれの要素は他の要素に対して影響力をもっているので、相互作用が起こります。それでも全体像が何も変わらないというのはウソです。全体像に影響を与え、全体像は各要素に影響をあたえるという事実を踏まえておかないと、再び穴埋め問題のお絵かき状態に戻ってしまいます。

そもそも要素間の影響を考慮にいれつつ全体像を考えるためには、戦略の行間を読む必要があります。

お絵かきレベルを超えて、ただしく3C分析をするのに、ひとつのシートで説明するのにはムリがあります。なぜならば、戦略の全体を通して3つの要素がちりばめられるはずだからです。そもそも、フレームワークを使ってまとめられるようなものではないのです。
そのほかのPESTや5forcesやVRIOや戦略マップも同じです。これらは全体を通して主張されるべきものであって、フレームワークとしてまとめて済むものではありません。
結局、重要なのは、要素間の関係性と全体の一貫性です。企画者の意図した戦略の行間を、ある視点で切り抜いたものがフレームワークだとすれば、戦略の行間(各要素間の相互作用)を読み取ってフレームワークに落とすことができて初めて、理想的な形になると思います。
この行間を読んで適切にフレームワークに落とし込む作業は、高いスキルが必要なのです。

フレームワークの功罪

すこし話はそれてしまいますが、そもそもフレームワークでまとめさせようとする側にも大きな問題があると思います。フレームワークを使えば簡単に分析できて、手軽に正解が得られるなんて思って、楽しようとしている下心が丸見えです。
もしほんとうに、誰でも簡単に分析できて、競合を出し抜いて、市場を独占できるようなツールがあれば、誰もが勝者になってしまいます。
そんなこと勝負の世界ではありえない話です。

戦略は、もっと頭をいじめて、いじめて、いじめぬいた人がひらめくものです。だからこそ、簡単には真似できない仕組みを作り、市場に驚きとインパクトを与えることができるのだと思います。

私は、マネジメントクラスがフレームワークを使って「楽しようとして間違う」構図そのものに憤りを感じています。
フレームワーク云々いう前に、自分が企画を出すべきなのです。
フレームワークは、意図を持った企画者のための、頭をいじめるための道具であるべきです。

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