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マーケティングとは一体何者?人によって定義がかわる「マーケティング」を理解しよう。

      2017/11/13

「マーケティング」あるある

「マーケティング」って仕事上で気軽に使われている言葉ですが、マーケティングとは一体何なのか、きちんと理解できていると感じている人はどのくらいいるでしょう?

マーケティングはいろんな意味や役割を持っているので、同じ言葉でも使う場面や、使う人によって定義が異なってくるので、わかりにくくなっていると思います。

たとえば、営業の人が使っている「マーケティング」と、プロモーション担当の別の人が使う「マーケティング」では、同じ言葉でも使い方が違います。
営業が使う場合は、無意識のうちに市場調査やニーズ調査、ときには顧客満足度調査といった意味合いが濃いと思います。一方で、プロモーション担当が言うマーティングは、宣伝広告の手法の意味合いが濃くなります。マス・マーティングなのか?ウェブ・マーケティングなのか?といった具合にです。
開発が使うマーティングは、どちらかといえば、機能や性能がニーズにどの程度合致しているかを分析することであったり、ターゲット顧客のセグメント別に将来の市場規模を分析することであったりします。

このように、市場調査のことをマーケティングと言ってみたり、販売促進のことをマーケティングと言ってみたり、販売活動のことをマーケティングと言ってみたり、CS調査や改善活動を無自覚にマーケティングと言ってたりもします。人によってはもっと上位の概念である「戦略」をマーケティングと言ってみたり、逆に手段である「分析」や「計画」をマーケティングと言っている人もいます。つまりどこに属しているかによってマーケティングという用語の定義が変わると言うことですね。

会社名でもいろいろな使われ方がありますよね。有名どころでは「キヤノン・マーケティング・ジャパン株式会社」がそれです。もともとは「キヤノン販売」だったのが、マーケティングというコンセプトを社名に書くことで、より広範な意味合いを持たせています。キヤノン・マーケティングの場合は、中心的な活動は販売なので、やはり「販売」という意味で「マーケティング」という言葉を使われてるのだと思います。

さすがに、社内の活動のことをマーケティングという人はめったにいませんが、社外のあらゆる活動が「マーケティング」という言葉で便利に使われているような気がします。
似たような言葉で「戦略」も同じ使われ方がされていて、便利な言葉って、いろんな使い方がされるので、むしろ、よくわからなくなってしまうものなのですね。

そもそも「マーケティング」とは?

そもそもマーケティングとは一体何者なのか?アメリカのマーケティング協会の定義によると・・・

マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。

アメリカ・マーケティング協会によるマーケティングの定義

とあります・・・。どうです?理解できましたか?しっくり来ますか?少なくとも私はすっきりしません。
そもそもマーケティングって、概念が広すぎなんですよ。

学者によっても定義が違います。
『マーケティング近視眼』で有名なレビットは同著でマーケティングの定義を、「顧客の創造」としています。
ドラッカーは『マネジメント【エッセンシャル版】』のなかで「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と述べています。コトラーは、『コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版』で「マーケティングを最も短い言葉で定義すれば「ニーズに応えて利益を上げること」となろう。 」と述べていますが、いずれもシンプルに定義されているが故に、概念が広くなりすぎて、なんでもかんでもマーケティングになってしまっているような気がします。

だから、何かうまくいっていない状況になると、すぐ会議で「マーケティングが出来ていないんだよ!」といった言葉が平気で出てきたり、マーケティングが思考停止ワード化してしまい、複雑な状況を一言で片付けようとすることが起きてしまうのです。マーケティングの定義すら共有されていないのに・・・。

こんな感じで、マーケティングという言葉は網羅的な言葉で、解釈の幅が広いが故に、使い方が非常に難しいと思っています。定義が複雑な用語は、わかりにくさ故に使われずに用語の持つコンセプトが社内に浸透しないことになってしまいますが、逆に定義がシンプルすぎると、解釈の幅が広すぎて混乱を招くことにもなってしまうのです。
マーケティングは社外活動の、ほとんどすべての要素を含んでしまっているのです。いや、すべての要素を含んでいると考えるので、すっごくわかりにくくなってしまっているのです。ということは、「マーケティング」に含まれないものをはっきりすることで、よりマーケティングの輪郭がはっきりするような気がしませんか?なら、「マーケティングっぽいけど、マーケティングではない」ことを、自分たちで明確にすることでマーケティングを定義してみてはいかがでしょうか?

たとえば、マーケティングっぽい言葉として、販売、販売促進、宣伝広告、市場調査、商品企画、商品開発、顧客満足調査などがあります。
その一方で、マーケティングっぽくない言葉としては、仕入れ・調達、戦略、ビジョン、オペレーション、生産・製造・加工、品質改善、生産技術開発などがあると思います。
もちろん、企業によっては違和感がある場合もあると思うので、こういった活動については、マーケティングという言葉を使い、こういった活動には使わないといったルール作り(暗黙的に使われている共通言語を明示化する)をすることで、議論の混乱をおさえることができるのではないでしょうか?

概念としての「マーケティング」

社内で使う用語としての「マーケティング」は、なんらかのルールを設けることで、混乱を抑えることが出来るかもしれませんが、本来のマーケティングの概念をわかっていないと、間違った使い方を共有してしまいかねません。そうなったら、社外の人たちとマーケティングについて語るときに、問題になってきます。
なので、概念としてのマーケティングも理解しておく必要があるでしょう。

マーケティング・ミックスという言葉を知っていますか?前にも記事を投稿しているので詳しくはそちらを見て欲しい<誰でもできる!マーケティングの4P(マーケティングミックス)分析の進め方と事例>のですが、マーケティング活動をいくつかの要素に分解して、個別に理解をすすめつつ、包括的・網羅的にマーケティングを把握しようとするコンセプトやフレームワークがあります。
具体的には、上位概念としてSTP分析、下位概念としてマーケティング・ミックス(4P)分析です。

マーケティング分析その1 STP分析

簡単に説明すると、マーケティングの上位概念であるSTP分析で、まずは自社の立ち居地を明確にします。
それには、まずどのような顧客層や顧客セグメントを対象とするのか?
(STP分析の”S”に当たります=Segmentaion)
次に、顧客セグメントの中からターゲットとする顧客はどのような顧客なのか?
(STP分析の”T”に当たります=Targeting)
最後に提供する商品やサービスは競合と比べて、どのような位置づけなのか?
(STP分析の”P”に当たります=Positioning)
といった手順を踏みます。

も少し詳しく説明すると、STP分析では、顧客セグメントを明確にするために、市場規模の全体像を理解することから始め、商品やサービスが利用されるシーンを想像しながら、できるだけ広い用途から市場の全体像を割り出します。この時点で、まったく市場規模がない、もしくは、あまりにも小さすぎるという分析結果が出たら、残念ながらここで終了となります。
いろいろな視点や用途を想像しながら、市場規模が十分にあると考えられた場合、次に、想定市場の中でもっともその商品やサービスによって価値が得られる、より具体的な顧客の属性などを絞込みます。絞り込まれた顧客層がターゲットとなります。
最後に、ターゲットにもっとも受け入れられる要素(たとえば価格や機能、性能、ブランドなど)が、競合他社とどのような違いであるべきかを明確にすることで、自社の商品やサービスの立ち居地を明確にするのです。

このような分析結果から、どのような顧客層の具体的なターゲット顧客に対して、どのような差別化をもった商品やサービスを提供するのかをあらかじめ明確にしておきます。

マーケティング分析その2 4P分析

STP分析を乗り越えたら、次はマーケティング・ミックスを分析します。有名な4P分析ですね。
STP分析では、マーケティングの要素が縦の関係の分析(従属関係があり、ステップを踏んで行う分析)である一方で、4P分析はマーケティング要素が横の関係の分析(比較的独立した要素、並行して実行できるの要素の分析)と言えます。

つまり、4Pの要素である価格(Price)、チャネル(Place)、販売促進(Promotion)、製品(Product)は、それぞれ個別に検討することができます。当然、まったく因果関係がないというわけではなく、それぞれ密接に関連していますが、STP分析のように必ずしも包含関係はありません。横のつながりで並行して検討することができるものです。
このように4つの要素が並行して検討されるので、「ミックス」という言葉が使われているのです。
そして、並行して検討できるということは、この4つの要素が持つ機能で組織も分割できるということです。たとえば、チャネル開拓であれば営業部門の専任事項であったり、販売促進はプロモーション部門の担当であったり、製品開発は開発部門や事業部門であったりします。価格については、企業によって様々です。原価積み上げ式であれば生産部門が中心になるかもしれませんし、市場変動が激しい場合は、顧客に一番近い営業部門が影響力を持つこともあります。
このようにマーケティングの機能によって組織を分けることで、効率的なマーケティングが実施できるのです。

話が戻ってしまいますが、逆に言うと、マーケティングの機能にしたがって適切に組織が働いているが故に、「マーケティング」という用語の使われ方が違ってくるということなのです。

ちなみに4Pの要素については、様々な意思決定の手法があります。価格の決め方(プライシングともいいます)であれば、浸透戦略や上澄み戦略など、チャネルの決め方でも直販戦略や間接販売戦略などがあるので、興味があればこちらをご覧ください。
誰でもできる!マーケティングの4P(マーケティングミックス)分析の進め方と事例

マーケティングのフレームワークから言えること

縦の分析のSTP分析では、市場、つまりお客さまの全体像を分析し意思決定するフレームワークでした。横の分析のマーケティングミックス(4P)は、社内活動を分析し意思決定するフレームワークでした。
ということは、この二つのフレームワークから言えるのは「マーケティングとは、市場と自社が出会えるにはどうすれば良いのか?どうすればより効果的に自社の製品やサービスを、お客様に気に入ってもらえるか?」を考えることに尽きると思います。

そういう風に考えると、商品やサービスとお客さまが出会うシチュエーションを、5W1Hに落とし込むと一層理解しやすいかもしれません。
まず、お客さま(Who?)がどのくらい沢山いるのかを知るのが、セグメンテーション。
そして、お客様のプロフィールや属性を絞り込んで、実態に沿った「お客さま像」を決めるのが、ターゲッティング。
お客さまにとって一番良い商品やサービスが何か(What?)を考えて作るのが、商品開発。
お客さまのお財布の具合(How much?)と開発にかかる費用のバランスを見て値段を決めるのが、プライシング。
出会いの時(When?)と場(Where?)を演出するのが、プロモーションとチャネル。
そして、なぜこの商品やサービスを買わなければならないのかの理由(Why?)を提供するのが、ポジショニング。
といった具体です。

分析手法や理論を学ぶことも重要ですが、マーケティングの根本的な機能は、このような「人」との出会いを計画することだと理解しておくといいと思います。

「マーケティング」分析ツールもいろいろ

マーケティングには、分析ツールもいろいろあります。
以下のフレームワークは、一般的にマーケティングの分析ツールとして紹介されることも多いので、ここで簡単に述べておきます。
私見としては、「マーケティング」と「戦略」がごちゃまぜになっている気もするので正直あまり賛成しないのですが、キーワードとして知っておいても問題はないので、こだわりを捨ててご紹介します。
※最も代表的なフレームワークであるSTP分析と4P分析(マーケティング・ミックス分析)は割愛します。

PEST分析

PEST分析は、マクロ環境を「Politics(政治)」、「Economy(経済)」、「Society(社会)」、「Technology(技術)」の4つの視点で分析し、環境変化を把握するフレームワークです。ニーズ変化を察知するための手法です。
PEST分析の記事はこちらにもありますので、ご興味があればご覧ください。<PEST分析は教科書どおりにやったら失敗しますよ。と言うこと書いてみました。

SWOT分析

SWOT分析は、外部環境や内部環境を「Strengths(強み)」、「Weaknesses(弱み)」、「Opportunities(機会)」、「Threats(脅威)」 の4つの視点で分析するフレームワークです。自社のポジショニングを明確にするための手法です。
SWOT分析の記事についてはこちらの記事もどうぞ。<戦略の基本は強みと弱みを知ることから。SWOT分析のやり方とテンプレート。

3C分析

3C分析は、「Customer(顧客)」、「Competitor(競合)」、「Company(自社)」の3つの視点から、業界内の力関係を分析するビジネスフレームワークです。これも、自社のポジショニングを明確にするための手法です。

5フォース分析

5フォース分析は、(供給企業の交渉力)、(買い手の交渉力)、(競争企業間の敵対関係)、(新規参入業者の脅威)、(代替品の脅威)の5つの視点から、業界の魅力を分析するビジネスフレームワークです。これも、自社のポジショニングを明確にするための手法です。
5フォース分析の詳しい記事はこちらです。<業界構造と競合相手の分析なら、5フォース分析? 目的と分析項目まとめ

AIDMA

AIDMAは、顧客が購入にいたるまでの5つの視点「Attention(興味)」、「Interest(関心))、「Desire(欲求)」、「Memory(記憶)」、「Action(行動)」から、購買行動を分析するフレームワークです。販売促進のストーリーを明確にするための手法です。

アンゾフ・マトリックス

アンゾフ・マトリックスは、「製品」と「市場」を、「新規」と「既存」でわけた4つの視点で、今後の商品開発の方向性を分析するフレームワークです。製品の開発の方向性を明確にする手法です。

製品ライフサイクル

製品ライフサイクルは、製品が生まれてから市場から消えていくまでの4つの段階(導入期)、(成長期)、(成熟期)、(衰退期)でとるべきアクションを分析するフレームワークです。商品開発と価格ポリシーを明確にするための手法です。

ここでは、特にマーケティングの要素が関係するフレームワークだけを紹介しました。
そのほかのビジネスフレームワークは別の記事でも書いているので、そちらも参考にしてください。
<いまさら聞けない、よく使うビジネスフレームワークざっくりまとめ!>

結局「マーケティング」って何者?

これまで、マーケティングに関するいろんな視点で述べてきましたが、こんなに広い概念である「マーケティング」は、要するに、個別に見ると、すべて正解なようだけど、すべて不正確なんだということなんだと思います。
部分的には正解だけど、本当の意味はもっと広いんだよ。あなたが言っている「マーケティング」というのは、実は他の言葉で言い換えることが出来るんだよ。ということなんだと思います。

もっとも、ひとつひとつの「マーケティング」(またはマーケティングの機能)を見て、これこそがマーケティングだ!いや、あれが本当のマーケティングだ!なんていっても仕方がありません。いろんな定義やがあったり、人によっては違う使われ方がされていても、結局はコンセプトでしかないので有効に使われないと存在価値がありません。だから、その場その場で使われている「マーケティング」を理解したうえで、TPOをわきまえて適切に使うことが重要だと思います。
そのためには、ここに書いてきたマーケティングの視点や捉え方、使い方といった「マーケティングが網羅的な活動」であることを理解しつつ、個別の要素についても理解する必要があるのです。

ただ注意すべきなのは、マーティングを数字や電気信号、プログラミングコードのように無機質なものとして、無意識のうちに捉えてしまうことがあるということです。
マーティングが対象としているのは、購買行動や願望、期待などなので、あくまでも人の行動を理解することなのですが、数字を使って市場セグメントを分析していたり、アンケート調査を集計していたりすると、つい無機質なものと捕らえてしまうことがあるので危険です。
仮説と検証の繰り返しという意味では科学的ですが、数理的、物理的には解決できないことばかりなのが、マーケティングの特徴でもあるのです。
いろいろ机の上で分析したり集計したりして、考えてみてもわからないことばかりでも、実際に使ってもらっているシーンを観察したり、自分で試してみたりしたほうが近道だったりします。最終的に利用するのは「人」なんです。だから人との効果的な出会いを考えるマーケティングは「人」のことを避けていてはいけないのです。

手法を覚えるのも大切だけど、人の行動を理解しようとする姿勢を忘れてはいけない。
自戒を込めてそう思っています。

 - マーケティング, 新規事業