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いまさら聞けないM&A!初心者でもわかるM&Aの効果と進め方!

      2016/02/05

M&Aって何?その前に

M&Aのことを解説するためには、最初に「株式」と「会社の所有」について簡単に述べておく必要があります。

株式会社は「株式」を発行することで会社の事業資金を集めています。株式を発行することで投資家を募り、その会社に魅力を感じた出資者に株式を購入してもらうことで、資金を調達することができるのです。
その一方で投資家は、購入した株式が、株式市場(株式を売買する市場)で値上がりしたときに売却することで利益を得たり(キャピタルゲイン)、会社のキャッシュフローが増えていくことで配当を得て利益を出したりします(インカムゲイン)。
このように、株式会社と投資家はおのおのの目論見があって、株式を売買することで自分の目的を果たそうとします。

また、株式を購入した人は購入した株式の割合(出資割合)に応じて、会社の一部またはすべてを所有することができます。つまり、投資家は、株式を購入することで会社の一部を買っているとみなされるのです。
しかし、この「所有」は多数の出資者と共同で所有しているという意味で、一般的な意味での「所有」とはちがいます。そこで日本では、会社法によって、購入している株式の数量に応じて、以下に示すような権利を持っていることが、いわゆる「所有」しているという意味になっています。

株主の権利

1株以上
 ・・・ 会社組織に関する行為無効訴権や、新株発行差止請求権、代表訴訟提起権、取締役の違法行為差止請求権
総株主の議決権1%以上、または300個以上の議決権
 ・・・ 総会議題、議案提案権
総株主の議決権1%以上
 ・・・ 総会検査役選任請求権
総株主の議決権3%以上
 ・・・ 株主総会招集請求権
 ・・・ 取締役等の定款授権による免責に対する異議申出権
総株主の議決権3%以上、または発行済株式3%以上
 ・・・ 会計帳簿閲覧・謄写請求権
 ・・・ 取締役、監査役等の解任請求権
総株主の議決権10%以上もしくは発行済株式10%以上
 ・・・ 解散判決請求権

「議決権」と「発行済株式」があるので混乱するかもしれません。
実は、株式にはいくつか種類があって、議決権がなかったり制限されている株式もあるのですが、「議決権」というのは議決権が付いている株式のことを指しています。
もし、すべての発行済み株式に議決権が付いていれば、「議決権」と「発行済株式」は同じ意味になります。

このように株主には様々な権利があり、これらの権利を行使することができるようになります。
つまり、経営者が考えている方針や事業計画に対して意義を唱えることで、株主の思惑通りの経営を強制することができるのです。
結局、オーナー企業でない限り、株式会社の場合は社長は株主から委任されているに過ぎないのですね。

しかし多くの場合は、株式を保有しているのは自分だけではないはずです。他の株主が反対しては、自分の思惑通りに進めることができません。株主の権利を行使するためには、株主総会などで賛成多数を獲得できるだけの、多くの株式が必要になるのです。
では、会社法では、議決権の保有比率と実質的な会社の支配について、どのような取り決めがなされているのでしょうか?

会社の支配について

・議決権の2/3以上を保有した場合
 ・・・ 株主総会において、以下のような「特別決議」を行えます。
    ・定款の変更
    ・役員の解任
    ・合併、会社分割、株式交換
    など
・議決権の50%以上を保有した場合
 ・・・ 株主総会において、以下のような「普通決議」を行えます。
    ・役員の決定
    ・役員報酬の決定
    ・剰余金の配当
     など
・議決権の1/3以上を保有した場合
 ・・・ 特別決議を否決することができます。

このように、株主が議決権のうちどの程度を保有するかによって、会社の支配の程度が変わってきます。
議決権のうち50%以上を保有することで役員を送り込むことはできますが、役員の解任や事業の売却などはできません。
本格的に会社を支配するためには、議決権の2/3以上が必要です。

M&Aって何?

会社の所有について簡単に説明したところで、さてM&Aです。
M&Aは Mergers and Acquisitions の略です。Merger とは「合併」で、Acquisition とは「吸収」のことなので、自分の会社以外の会社を合併したり吸収したりすることをM&Aといいます。
具体的には、株式を一定の割合集めることで、議決権を獲得したり会社の経営権を取得できる方法のことです。
株式を集める手段は、株式を購入する立場の違いや目的の違いによっていろいろあります。

TOB(株式公開買い付け)
株式市場外で株式を集める方法です。「買い付け期間」、「価格」、「買い付け株数」を公示して、不特定多数の株主から株式を買い取る方法です。

MBO(マネジメント・バイアウト)
会社の経営陣が自社の株式を買い戻す方法です。MBOによってオーナー企業になりますが、投資家からの経営陣への発言力や影響力を切り離すことができます。

EBO(エンプロイー・バイアウト)
MBOと似ていますが、自社の株式を買い取るのが経営陣ではなく、従業員である点が違います。中小企業のM&Aではよくある手法です。

LBO(レバレッジド・バイアウト)
買収したい会社のキャッシュフローや資産などを担保にして資金を借り入れて買収する手法です。買収した後にキャッシュフローを改善して収益を増やして、借金を返済します。

M&Aの効果

時間をお金で買える

新規事業を興す場合や、周辺市場への参入する場合では、自分たちで新しく事業を興さないでも、M&Aによって他人の成果を買うことができます。

企業価値の増大

買収先のフリーキャッシュフローによって、自社の企業価値を増大させる効果があります。M&Aによって、将来のお金を今のお金で買うことができると言い換えてもいいかもしれません。

シナジー

M&Aによって、ビジネスモデル上のいくつかのシナジーが期待できます。
・売上拡大のシナジー
 ・・・ 取扱商品を増やすことで、範囲の経済効果による売上拡大が期待できます。
・コスト削減のシナジー
 ・・・ 出荷数量を劇的に増やすことで規模の経済効果によるコスト削減効果が期待できます。
・ネットワーク外部性
 ・・・ 利用者数を増やすことで、抱え込み効果が期待できます。
・上流または下流への侵入
 ・・・ バリューチェーン上の上流または下流市場への参入が期待できます。

競争の緩和

M&Aによってライバル企業を買収することで、市場のバイイングパワーを抑制できるかもしれません。
または、将来的には強大なライバル企業に育ってしまう可能性がある新興企業がある場合は、今のうちに取り込んでしまって将来の脅威を小さくすることができたり、新しい収益の柱に帰ることができるかもしれません。

参入障壁を下げる

M&Aによってライバル企業を買収することで、買収先の企業が持っている資格や免許も一緒に取得できます。
参入したい市場が法律によって規制されている免許事業であったり、利益を上げるためには買収先が持っている特許を手に入れたい場合がありす。そんなときは、M&Aで免許や資格ごと買収して、参入障壁を一気に下げることができます。

フリーキャッシュフローの有効活用

無借金経営で内部留保も十分で、今の事業領域ではフリーキャッシュフローの有効な使い道がわからない場合、収益性の高い事業を買って多角化を進めることができるかもしれません。

M&Aによって獲得できる「価値」は何?

このように、買収側の狙いによって獲得できる「価値」は変わってくるはずです。
M&Aでは、狙ったとおりの効果を生み出す企業や事業を買収しないと意味がありませんから、具体的に何が欲しいのかといった「価値」を明確にする必要があります。
この「価値」は、かならずしもM&Aする企業全体の価値とは限りません。対象企業のひとつの事業だけかも知れませんし、プロセスや知的財産権だけかもしれません。
M&Aによってどのような価値を得たいと思っているのでしょうか?

買収先の持つ販売プロセスやバリューチェーンによって、自社の営業力を補完したり補強できる?
自分たちが苦手としている市場セグメントや商品群、技術やテクノロジーを獲得したい?
買収によって、業界のデファクトスタンダードを獲得し競争力を高めたい?

どうやって?

以下は、M&Aの一般的な流れです。

1.M&Aに対する考え方、戦略

これまで述べた内容を踏まえてM&Aのポリシーや方針を決めておきます。なぜM&Aをやるのか?どこまで出せるのか?などをあらかじめ腹に落としておくことで、想定外の状況変化が発生した場合や、最終的に買収を判断する際の投資基準となるでしょう。M&Aによって、以下の要素が将来的にどのように変わるのかを策定します。

 ・事業ドメイン ・・・ 市場はどの程度成長したい?
 ・競争環境 ・・・ 競争優位性が高めたい?
 ・ビジネスモデル ・・・ 利益を生み出す仕組みをどう変えたい?
 ・企業価値 ・・・ キャッシュフローをどの程度良くしたい?
など

2.M&A対象企業の選定

M&Aに対する方針が決まったら、次にM&Aする相手の企業を探します。いわゆるスクリーニングの段階ですが、買収先を自分で探したり、銀行やコンサルにお願いして探したり、いくつかの方法があります。ターゲット企業を選ぶには、通常は以下のアクションが必要です。

ロングリストの作成
 ・・・ 買収する条件を明確にして、買収先企業を20~30社程度洗い出します。
ショートリストの作成
 ・・・ 詳細情報を入手して、目的に合致するか分析し、10社程度に絞り込みます。
ターゲットを決定
 ・・・ M&Aの目的に沿った優先順位付けを行い、さらに数社程度に絞り込みます。

3.交渉

コンタクト
 ・・・ 買収先企業のキーマンに連絡をとって、交渉に入るための準備をします。自ら直接コンタクトするのではなく、外部に委託して仲介してもらうこともあります。
基本合意書
 ・・・ 交渉に移る前に、一定の合意内容について事前に取り交わすことがあります。買収価格を決めるために必要な情報を入手するので、秘密保持や独占的交渉権、誠実交渉義務などの約定がなされます。
デューデリジェンス
 ・・・ 対象企業の根付けです。買収に必要な金額の計算や、買収後のリスクなどを把握するために必要な活動です。DDと表記することも多いです。デューデリジェンスには、M&Aコンサルティングサービスを提供する会社によって、様々な種類や呼び方がありますが、基本的には大きく分けて4つあります。

・ビジネス・デューデリジェンス:将来的なビジネスの価値を算定します。当事者や会計コンサルタントが調査します。
・財務デューデリジェンス:財務状況の視点から問題がないか調査します。公認会計士などが調査します。
・法務デューデリジェンス:係争中の問題がないか、ビジネス自体に法的な要素がないかなどを調査します。
・人事デューデリジェンス:労務関連や業績評価基準、ひいては組織の価値観や組織文化などを調査します。

これら以外にも、税務ディユーデリジェンス、環境デューデリジェンス、ITデューデリジェンス、不動産デューデリジェンスなど多岐にわたります。

4.締結と事業統合

デューデリジェンスがおわり、さまざまな問題の調査と解決をクリアしたら、最後は買収価格の調整や契約の締結です。最後に事業を統合して完成になります。

・価格や条件などの調整 ・・・ 事前に合意した条件にあわせて価格を微調整します。
・買収等契約書 ・・・ 買収等契約書を締結し、決められた期日に受渡を完了します。
・事業統合(PMI) ・・・ 契約締結後速やかに両社の事業の統合に取り組みます。

M&Aだけなの?業務提携は?新規事業を興すのは?

これまで述べたようにM&Aにはいくつかの効果が期待できますが、いずれにしろ、「なぜ他の会社を欲しいと思うのか?」その理由を明確にしておく必要があります。
自問自答した結果、もしかしたら目的によっては、M&Aだけが手段ではないかもしれません。自社にない技術を獲得したい場合であれば、業務提携という方法もあります。
もしかしたら、M&Aで高いお金で新興企業を買うよりも、自分たちで新しい事業を興したほうがノウハウの蓄積がすすみ、自社のコアコンピタンスに磨きがかかるかも知れません。

このように目的によって最適な手段は他にもあるかもしれません。いろいろな手段の中で、M&Aが最適だと考えられる根拠が必要です。

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