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ワールドの成功とビジネス・モデル【古典ケース・スタディ】

      2016/02/05

ワールドは、1959年設立のアパレル・メーカーの業界トップ企業です。
OZOCやUNTITLEDなどの女性向けブランドから、タケオキクチなどの男性向けブランドや雑貨なども幅広く手がけていますよね。
そんなワールドですが、有名ブランドを数多く手がけているだけではなく、ある革新的なビジネスモデルの導入によって業界トップにたどり着いた会社としても大変有名です。

今回は、ワールドの成功例を見ていきましょう。

背景

ワールドに限った話ではありませんが、バブル崩壊前の80年代までは、アパレル・メーカーはアパレル卸を通した販売形態が一般的なビジネスモデルでした。
アパレル卸を通した販売とは、展示会での専門店やデパートへの卸売販売による業態のことですが、このような業態では実際に消費者に販売するのは小売店になるので、市場とのずれがでてきてしまっていました。
その結果、実際の販売状況がタイムリーに把握できず、消費者ニーズの多様化に対応できなくなってトレンドの後追いになりがちでした。

現状認識と発想の転換

メーカーが消費者のトレンドをいち早く把握するためには、消費者と直接コミュニケーションすることが大切です。
そのためには、メーカーの直営店経営がいちばんの近道です。いわゆる直販化ですね。
このようなメーカーによる小売業態のことを、業界の専門用語では、SPA(Specialty store retailer of Private label Appareの略)といいますが、実はアメリカに成功例がありました。
それがGAPです。
ワールドは、GAPが成功していたSPAを導入することで、消費者のニーズを1~2週間で把握できるようにして、適切な商品を開発し品薄や品切れを回避しつつ、在庫費用の圧縮によるコスト削減とタイムリーな商品提供で、売上拡大を目論んだのです。

この考え方は、実はパソコンのDELLのダイレクトモデルと同じ思想ですね。
1990年代から2000年代にかけては、このようなメーカーが消費者に直接販売するスタイルが、いろいろな業界で普及した時期でもありました。

解決策としくみ

SPAの導入

具体的な解決策としては、まず上で述べたSPAの導入があります。
アパレル・メーカー(ワールド)が直営店を経営することで、消費者に安く商品を提供できるメリットがありますが、本当の狙いは価格ではありませんでした。
直営店の販売状況を随時商品開発と製造ラインで共有し、適切に修正を加えることが最大の狙いだったのです。
つまり、毎日の直営店で売れ行きのよいラインナップとそうでないラインナップを製造ラインに伝えることで、売れ残りを削減しつつ、機会損失も削減できるのです。
しかも、売れ筋商品の変化も随時把握できるので、どこよりも早くトレンドを捕まえることもできるようになります。

情報システムの構築

このような消費者ニーズやトレンドの変化をいち早く開発や製造ラインに反映させるには、情報システムが重要な役割を果たします。
ワールドはSPARCS構想というコンセプトのもと、強力なリーダーシップでシステム化を成し遂げていきます。

複数ブランドの構築・展開

ユニクロを展開するファーストリテイリングもワールドと同じくSPAで成功しましたが、ブランド戦略は大きく違っていました。
ファーストリテイリングでは、「ユニクロ」というブランドの下でいくつもの商品を展開しています。このような展開の方法をブランド・アンブレラ戦略といいます。

ブランド・アンブレラ戦略には、ひとつのブランドに集中投資をすることができるので、とっても効率のよい戦略なのですが、リスクもあります。それは、ひとつのブランドが失速すると、全体に波及してしまうということです。
また、ブランドのイメージがひとつに固定されてしまうため、ほかの分野への参入が困難になってしまうこともあげられます。
そこで、ワールドは、マルチ・ブランド戦略を採用します。複数のブランドを立ち上げることで、ひとつの成功事例(この場合OZOC)を横展開することにしたのです。

スモールスタート

ひとつの成功事例を横展開するためには、いくつもの小さいブランドを立ち上げ、それぞれ小さく投資して大きく育てていくことが成功要因になります。
そこで、直営店の経営ノウハウや情報システムなどのリソースを最大限活用することで、範囲の経済を最大化する方針をとりました。これにより、ひとつのブランドが失速しても、次々と新しいブランドを立ち上げることで、リスクの分散と抑制ができるようになりました。

短期間での仮説検証スキーム

SPAの導入、情報システムの構築、そしてスモールスタートによる複数ブランドの立ち上げ。これらのすべてが絡み合うことによって、ワールドはこれまでできなかった短期間での仮説検証を実現することができました。
その結果、卸を通していたためにおこっていたタイムロスをなくすことができただけでなく、トレンドにあった商品展開をどこよりも早くできるようになったのです。

決め手

SPAはメーカーによる直販だと説明しましたが、このようなやり方は「中抜き」といわれ、当然アパレル卸各社や小売店からの抵抗や反発は予想されました。
消費者に直接販売するという形態は、アパレル卸各社をないがしろにするだけでなく、小売店の商売を奪う形になってしまうから当然ですよね。
そこで、ワールドは考えました。

新たに直営店を大規模に展開するようなことはせず、もともと市場調査目的で経営していた直営店をつかって、少しずつ始めることにしたのです。
そして、その間に情報システムを整備し、実績を積み重ねていきながら、このビジネスモデルがうまく行きそうだという空気を作っていくのです。
さらに、その小さな成功を横展開していきながら、消費者のニーズごとに新しいブランドを立ち上げていくことで、ここでも小さな成功を積み重ねていきながら実績を見せたことで、社内外の反発を抑えることができたのではないでしょうか?
その結果、大手百貨店チャネルに参入することができたのです。

ワールドが消費者のニーズやトレンドを最重視していた経営姿勢こそが、このようなビジネスモデルを実現させることに至った要素だと思います。消費者との直接対話をするためには、SPAしかないという判断だったのでしょう。

このように小さな工夫を積み重ねていくことが、結果的に大きな成功を生み出すことになったのです。まさに、メーカーによる直販化とスモールスタートのお手本といえる成功例だったと思います。

さいごに

つい先日、ワールドに関する記事『ワールドが大量閉店、「再生請負人」に高い壁 -アパレル名門、栄光の軌跡と失速後の展望-』が東洋経済オンラインに掲載され、リーマンショック以降の同社の苦境が報道されていましたが、景気がよくなってきたこれからどこまで盛り返せるか勝負どころだと思っています。
今回解説したSPAが今回の苦境の直接の原因ではありませんが、SPAを実現したときと同じように新しいビジネスモデルによって打開することを期待しています。

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