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クックパッドの成功とビジネスモデル【古典ケース・スタディ】

      2016/02/05

インターネットが普及したことで世の中は大変便利になりました。
必要な情報を一瞬で入手することができるような手軽さと身近さ、そして便利さを手に入れたことで、私たちの生活は飛躍的に快適になってきました。

人が生きていくために基本的な必要条件は、「衣」・「食」・「住」の3つですが、これら3つの要件のうち「食」でこれまでになかった形で成功した会社がクックパッドです。

クックパッドは、インターネット黎明期の1997年に設立された、いわゆるネットベンチャー企業のひとつでした。
同じ時期に設立された同じようなネットベンチャー企業には、Yahoo!や楽天などの急成長を遂げた企業も数多くありましたが、クックパッドはそんな中でもかなり遅咲きの企業でしたが、今となっては驚異的な営業利益率を誇る大企業に成長しました。
さっそく、クックパッドが成功した理由と、そのビジネスモデルを見ていきましょう。

背景

 
1990年代は、情報技術と通信技術の飛躍的な発展によって、パソコンとインターネットが家庭に急速に普及しはじめた時期でした。インターネットが普及するまでは、家庭でパソコンをもつ理由もなかったものですが、ネットの普及でメールなどのコミュニケーションツールとして、家庭に浸透しくようになっていきます。

そんな中、日本経済はまだ大不況のど真ん中で、当時「失われた10年」(その後「20年」に)という表現でいわれていたように、元気がない時代でした。
そんな時代だったので、女性も結婚したら退職するというようなこともなくなり、結婚後も働くことが一般的になってきます。しかし、いまほどワークライフバランスも進んでおらず、イクメンも存在しないし、その結果家事の分業もなく女性の家事負担だけが増すばかりでした。
そんな中、佐野創業社長の個人的な海外生活体験と、家庭料理や郷土料理が継承できない事実に対する問題意識の中で、クックパッドの前身となるコインを立ち上げたのです。

現状認識と発想の転換

佐野社長は、食文化で社会貢献したい気持ちで、ユーザーがインターネットへのレシピを公開することで、家庭料理や郷土料理のレシピを継承できないか考えます。
女性の負担を軽減するためにも、家庭に普及しはじめたパソコンを使ったレシピを無料で閲覧できるようなサービスを考え出したのです。
料理のレシピ自体は、当時でもインターネット上に個人が公開するなど、特別なことではありませんでしたが、レシピ専門サイトとしてはクックパッドはパイオニアだったのです。
数多くある個人サイトのレシピは、閲覧時のインターフェースもばらばら。そして他の人のレシピを見たい場合は、あらためて調べなおさなければならないなどとっても手間がかかるものでした。
そこでクックパッドは、ユーザーの利便性を第一に考えたインターフェースを追求することになります。
その結果、幸運にもスマホやタブレットとの相性が抜群にいいインターフェースとなり、爆発的に普及することになるのです。

対策

直感的な投稿ページと検索エンジン

ユーザーインターフェースの追求を最優先すると、自然と直感的でわかりやすい操作性が求められるはずです。写真のアップロード方法から、コメントの記載方法など、どこまでもユーザー視点での設計になっているはずです。
また、独自の検索エンジンも独自開発することで、同じ食材でもどのようなキーワードで検索されているのるか、目的や調理方法によっても、検索したい事柄が違っている事実を踏まえた設計になっているのです。

シンプルな交流のしくみ

クックパッドの楽しみのひとつは、掲載したレシピの評判を見ることができることです。
それが「つくれぽ」です。つくれぽでは、レシピを見て作った料理の写真と感想をかんたんに投稿できるしくみですが、コメント欄には文字数制限を儲けるなど、過剰な書き込みはできないような仕組みになっています。このつくれぽは、ソーシャルサービスの特長を先取りした仕組みだったのです。

収益モデル

佐野社長は、本当にユーザーのことを第一に考えるのであれば、「無料」にこだわったビジネスモデルができないか模索していました。そのため、レシピを閲覧するのは無料とし、レシピを掲載したい人から登録料をいただくビジネスモデルで立ち上げました。しかし、それでもなかなか成長軌道に乗れなかったとき、採用した社員の進言により広告収入モデルへの路線変更を果たし、成長路線に乗り出すことになります。

プラットフォーム戦略

クックパッドのビジネスモデルとしては、昔からよくあるマッチングビジネスのひとつに過ぎません。レシピを掲載したい女性、レシピを見たい女性のマッチングであるし、調理道具や食材、調味料を販売したいメーカーとのマッチングでもあります。クックパッドが特徴的なのは、あくまでもプラットフォーマーとしての位置づけであることです。マッチングする土俵を提供するだけで、レシピそのものは制作しません。プラットフォーム戦略によって、コンテンツの品質をコントロールし、win-winを創造することに成功しているのです。

圧倒的なレシピ数

そもそもレシピの数が少なかったら、レシピサイトの意味がありません。数多くの参加者を募り、数多くのレシピを投稿してもらうだけではなく、いろいろな企画やイベントによって「場」を提供することができているのです。

決め手

クックパッドの成功の決め手を挙げようとすると無数に出てくるかもしれませんが、絶対に忘れてはいけないことが二つあります。それは、女性の「承認欲求」を満たすことに成功したことと、圧倒的な数のレシピによる「ドミナント戦略」です。

女性は、家庭の中心的な存在です。その女性が毎日の料理を楽しむことができることが、クックパッドの最大の目的でした。そのため、つくれぽやレシピコンテストによって女性の承認欲求を満たすことができたことが、自己表現の場としてクックパッドへの愛着が生まれることになったのです。

もうひとつは、ドミナント戦略です。一般的にドミナント戦略とは、コンビニエンスストアなどのチェーン店がとる戦略です。一定地域に集中的にチェーン展開することで、その地域をなかば独占することで、参入の余地をなくしてしまう戦略です。クックパッドは圧倒的な数のレシピによって、検索エンジンにひっかかるレシピの大半で上位を占めることに成功しました。これによって、楽天レシピが市場参入してきたときに、撃退することができたのです。

さいごに

クックパッドは不思議な会社です。なんだか、意図しない方向で模索していく中で、活路を見出して成長してきた会社のような気がします。
ドミナント戦略もそうです。クックパッドが検索エンジンが普及するまでの10年間ひたすら苦労したからこそ、楽天はネットレシピ市場には参入しなかったのです。これは、Googleの圧倒的な普及と成功によって、間接的に得られた成果だといえないでしょうか?
また、女性の承認欲求を満たしたことにしても、家庭料理や郷土料理の継承のあとづけのような気もします。もともとの狙いは、もっと崇高な理念だったのでしょうが、結果的に、女性の承認欲求を満たすという新たに生まれた価値を満足させることになったような気もします。
スマホやタブレットの普及、そしてソーシャルネットワークの普及も同様です。すべて最高のタイミングで、外部環境が整って入ったような気がしてなりません。

クックパッドは、なぜこんな幸運を引き寄せることができたのでしょうか?

私には、わかりません。佐野創業社長の人柄なのかもしれません。人材や幸運を呼び寄せる力があるのかもしれません。いや、外部環境の変化に柔軟に対応できた結果なのかもしれません。
いずれにしろ、クックパッドは自身の意図と戦略、そして幸運によって、世界最大のレシピサイトになり、異常なほど高い利益率を生み出すお化けサイトに成長することができたのです。
クックパッドは、いまでは雑誌出版やコラボレーションなど、リアルな世界への進出し始めています。この快進撃はどこまで続くのでしょうか?

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