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セブンイレブンの強み分析 記事から読み解くケーススタディ

      2016/02/05

日本には優良企業がたくさんあります。
とくに小売業界では、セブン-イレブンの強さが強調されることがよくあります。先日も、ダイアモンドオンラインに「コーヒーに続きドーナツも話題沸騰 セブン−イレブンはなぜ“最強”なのか?」という記事が掲載されました。そこで今回は、ダイアモンドオンラインの記事を元にさらにセブン-イレブンの強みを分析してみたいと思います。
セブン-イレブンの強さの代名詞としていちばん有名なのは、なんといっても小売分野で世界ではじめて導入されたPOSシステムです。でも、POSシステム自体がセブンイレブンの強みの源泉と考えるのは、ちょっと短絡的すぎかもしれません。むしろ、POSシステムはセブン-イレブンの強みを強化していると考えたほうがいいのではないでしょうか?これはトヨタのカンバン方式やジャストインタイムが強みなのではなく、「5Whys(問題が発生したときに、5回「なぜ?」を繰り返す思考習慣)」という強みの本質を補強しているのと同じ関係だと思います。
それでは、POSシステムを補強しているセブン-イレブンの本当の強みとは何なのでしょうか?

1.エンドユーザーの嗜好が迅速に反映されるしくみが競合より優れている。

たとえば4月から、チョコオールドファッションにかかっているチョコレートの量を増やし、生地も少ししっとりさせた。「『毎日食べても美味しい』を実現するため、まだまだ改良を加えていきます。
(中略)
味だけではない。ドーナツはレジカウンターに専用の什器を置いて販売している。パン売り場での袋売りも実験したが、レジ横に置いた方が売れ行きがいいという結果が得られたのだという。工場での製造過程、店頭での売り方、価格など、さまざまな実験を重ねた結果が、今のスタイルだというわけだ。

まずひとつ目は、POSシステムを活用する全社システムとしての「強み」です。
この全社システムからみると、POSシステムはあくまでもツールのひとつにしか過ぎません。POSシステムだけであれば、同業他社も導入しているはずです。ではなぜ競合他社はセブン-イレブンにかなわないのでしょうか?その答えはPOSシステムを活用しているのが「人」だからです。
どんなすぐれたシステムを使って情報を収集しても、それを分析するための視点は人が提供します。また、市場のニーズがコロコロかわってしまう環境の中では、独自の視点でニーズを分析をしないと市場の変化に追いついていくことも、市場に新しい価値を提供することも、競合他社に勝つこともできません。セブン-イレブンの場合は、POSシステムを世界初で導入した経緯もあるとおり、競合他社のまねをして導入したシステムではありませんでした。セブン-イレブンならではの視点で情報収集し、実験をくりかえしながら改善しているところがセブン-イレブンが他社からまねされにくしかけになっているのです。
おなじような考え方は小売業界だけで起こっていることではありません。ユニクロやワールドのSPAもそうですし、DELLのダイレクトモデルなども市場の変化を察知するしくみとして有名です。いずれも鮮度が重要な商品において顧客ニーズの微妙な変化を察知できる全社システムがあることが共通点です。

2.戦略的なレバレッジを意識して経営している。

セブンは出店にあたり、ドミナント方式(高密度多店舗出店)を貫いてきた。全国津々浦々に出店するのではなく、地域ごとの集積を重視してきたのだ。(中略)そうすることで、弁当や惣菜、今回のドーナツといった、メーカーの専用工場でセブン向けに作る商品の完成度を上げることができる。たとえば弁当や惣菜の場合、店舗が集積しているエリアに工場を持つことで、効率的な物流体制を組め、配送時間が短くて済むから保存料が必要ない。
 また、メーカー側からしても、物量が多いから、セブンへのロイヤリティが必然的に高くなり、より積極的に商品開発に応じるという好循環となる。
(中略)
たとえば、ローソンは今月、宅配事業で佐川急便と提携したが、セブンはすでに既存店のスタッフが運ぶかたちで始めている。当然、セブンの方がコストがかからない構造だ。店舗の集積度が密であるため、配達エリアをきっちり店舗がカバーできるというのも大きな理由だが、オーナーたちが協力的だからできているという側面も見逃せないのだ。

ひとつ目がお客さまの視点にたったニーズ把握のしくみづくりなら、ふたつ目はライバル企業に対して勝ちやすいしくみづくりです。
セブン-イレブンは、ひとつの強みを生かすことでほかにも強みを作り、ますます競合に真似されないようにしたり勝ちやすくしたりしています。まず、ドミナント戦略でひとつの地域で優位な状況をつくります。出店地区を集中することで、商品の完成度を高めたり物流コストや品質維持コストをひくく抑えることができ、競合よりも品質のよい商品やサービスを提供することができるようになります。その結果商品が売れ、商品メーカーや業者との連携もスムーズになり、ますますコストがかからなくなります。このようにセブン-イレブンは、ひとつの強みから様々な強みへの連携させて好循環をつくっています。
こうやってセブン-イレブンは、ドミナント戦略を支点として物流コストや商品開発コストなどをひくく抑えるという新しい強みを生みだしてきました。おそらく、ひとつの強みからバリューチェーン全体の価値を高めてライバルよりも有利にすすめることが、とても上手な企業なのだと思います。

さらに別の側面もあるようです。
それは、強みをうまく「レバレッジ」していることです。レバレッジとはテコの原理のことですが、物理の授業でならった「作用反作用の法則」を利用しさえすれば、ちょっとした工夫で、いままで持ち上げることができなかった重い石でも軽い力で動かすことができるというような、物理原則のことを言います。具体的にはクギ抜きや缶きりがそれです。
物理原則とビジネスは関係ないと思われるかもしれませんが、実はレバレッジは物理の分野だけでなくビジネスの分野でも応用することができます。
今回のケースでは、商品展開において強みがレバレッジされています。弁当や惣菜で作り上げた強みの連鎖をコーヒーに展開し、つづいてドーナツなどにも広げ、ほかの業界の脅威になっています。本来なら進出がむずかしかった専門分野でない商品でも、強みをレバレッジすることで比較的ひくいコストで効率的に進出することができるようになっているのです。
セブン-イレブン以外にも、自分の強みをレバレッジした商品展開が得意だった企業はありました。ヤマト運輸です。宅急便につづいてスキー宅急便、ゴルフ宅急便、クール宅急便・・・へと広げていきましたが、これは典型的なレバレッジです。ほかにもマイクロソフトはMS-DOSから、Windows、MS-Offics、Internet Explorerへ広げレバレッジで大成功した企業そのものです。
ひとつの強みをレバレッジする能力がたかいのは、優良企業の共通点かもしれませんね。

3.実験を繰り返した後の垂直立ち上げが得意。

また、ドーナツをスタートから10ヵ月で全店舗に展開するというやり方も、セブン独特だ。ほかのコンビニは全店舗展開が遅かったり、そもそも全店舗展開にまでたどり着かなかったりすることがある。「セブンの戦略は平等主義と言えるものです。ATMもいち早く全店一律サービスにした。理由の一つは、一気に投資をする体力があるということ。もう一つは、売上が極端に低い店舗がないため、投資を伴う商品やサービスでも、きちんと利益を出せるのです」(正田アナリスト)。

どうやら、セブン-イレブンは仮説検証実験を繰り返して感触を得た後に、本格展開時におもいきった投資で競合を引き離すのが得意なようです。もちろん投資体力があるからこそ垂直立ち上げができるのでしょうが、逆に言えば粘り強く「強み」をレバレッジしてきたおかげで、一気に投資できるだけの資金力を養えることができたのだともいえます。そういう意味では、投資体力も強みのレバレッジの延長上であるとも言えそうです。
また、ただ強みをレバレッジすることだけでなく、一気に仕掛けるタイミングを見極める判断もよいのでしょう。その結果、消費者に「コンビニ・ドーナツといえばセブン-イレブン」という印象をもってもらうことに成功しているのだと思います。
またこのような投資ができるのは、お客さまの好みをきちんと分析する全社システムがあることも重要になっています。お客さまの好みがわからないまま一気に投資して全国展開するのは、あまりにもリスクが高すぎます。セブン-イレブンがお客さまのニーズを分析してひくいコストで商品化する仕組みをもっているからこそこういった投資ができるのです。そしてそのしくみ自体がライバルに対して圧倒的にすぐれているから、簡単にまねされないのです。
結局、ひとつの強みがすべての強みとうまく融合して、総合力として力を発揮できるているのだと思いました。

私は記事を読んで、これらの3つがセブン-イレブンの伝統的な強みだと感じましたが、みなさんはどのように読み解きましたか?

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