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新規事業の企画が進まない本当の理由を知っていますか?

      2016/02/05

新規事業が進まないのは意思決定者のスキル不足が原因かも??

新規事業を担当していると、気がついたときには1年以上何もすすんでいない企画があったりして、本当にがっかりしてしまうことがあります。そんなときはいつも努力が報われない思いがして、おもわず「おれの時間をかえしてくれ~!」と叫びたくなってしまいます。
そんな新規事業の企画がなかなか進まない理由として、発案者や担当者の能力が足りないことを指摘する声があるのはもちろん知っていますが、本当にそうなのでしょうか?わたしは、ちょっと懐疑的になっています。
むしろ新規事業の場合は、発案者や企画担当者の能力の問題よりも意思決定者側の問題のほうがずっとずぅっと大きな問題なのではないでしょうか?

担当者レベルに求められているスキル

たとえば発案者や企画者の能力不足として指摘されやすいスキルとしては、「アイデア発想(仮説立案)スキル」、「調査分析・情報収集スキル」、「論理的思考スキル」、「プレゼンスキル」、「ドキュメンテーションスキル」、「ファシリテーションスキル」、「調整スキル」などがありますが、これらのスキル不足が新規事業の企画進行にとって致命傷になるようなことはありえません。これらのスキルは、あとからリカバリーできるものがほとんどですしトライアンドエラーの中で育てることができるものばかりなので、工夫次第で試行錯誤しながら比較的短期間で大幅に伸ばすことができる分野です。また、スキルが不足している分は周囲の協力者に補ってもらいながら進めることだってできます。特にスモールスタート(最初は費用をかけずにはじめる事業アプローチのこと)で実証実験を繰り返しながら育てていく新規事業にとっては、それほど大きな問題にはなりえません。

意思決定者レベルに求められているスキル

しかし、意思決定者のスキルとなると事情がまったくかわってきます。意思決定者に必要なスキルとして代表的なものは、「マネジメントスキル」、「戦略立案スキル」、「意思決定スキル」、「モチベーション向上スキル」などですが、これらのスキルはトライアンドエラーの中で反復練習するようなことができないので、簡単には身につきません。もちろんビジネス書を読んだりビジネススクールに通って勉強したりして知識を増やせば身につくようなスキルでもありません。また、やっかいなことに、これらのスキルを身につけるには非常に時間がかかるだけでなく、これまでの実務経験や所属する組織の企業文化・価値観などのバックグラウンドによっても得られるスキルが変わってくるのです。したがって、管理職になる前までにどのような企業文化で、どのような価値判断をもって、どのような経験をつんできたかによって得られるスキルが大きく異なるのです。

新規事業を進めるために一番大切なこと

そもそも、新規事業のような投機的要素がつよい企画は、先が読めない企画がおおいはずです。いや、むしろ先が読めないからこそ投機的な要素が強いのです。そのような特性がある新規事業においては、完全な情報をあつめることや、完璧なロジックを突き詰めることにはあまり意味がありません。むしろ、宝探しの冒険にでかける勇気とトライアンドエラーの中で経験をつみながら冒険を続けるための、特有の「勘」が必要なはずです。
このように新規事業は、「まずははじめてみる」ことが非常に重要なのです。手元にある情報はすくないけど、そして決して合理的な判断とはいえないのだけれども、まずははじめることができる能力。つまり「決断力」が、意思決定者にとってもっとも重要なスキルなのです。
インターネットの環境が整ってきたことで、比較的容易に、安価にスモールスタートできる事業が増えてきましたが、たとえ小さな事業であったとしても過去に新規事業を立ち上げて失敗したり成功したりした経験がないと、費用のかけ具合や想定されるリスクの大きさや、勝負にでるタイミングを見極めることができません。そして結局小さなリスクをとれずにいつまで経ってもスタートできず、気づいたときにはライバル企業に先を越されていることになるのです。特に、これまで細かいことによく気がつくことで高く評価されてきた人は、いわゆる「満点病」にかかってしまい、ついつい些細なことに目がいってしまい、いつまで経ってもスタートできずに担当者のモチベーションまで下げてしまうことが多いのです。

…いかがでしょうか?もしあなたの組織で担当者のスキル不足ばかり叫ばれているようだとすると、もしかしたら担当者が単なるスケープゴートにされているだけかも知れません。心当たりはありませんか??

動きだすために必要なことは何か?

はっきりいって、担当者のスキルをどんなに高めたとしても、意思決定者に必要なスキル(特に「決断力」と「勘」)が伴っていなければまったく意味がありません。なぜならば多くの場合、意思決定者がリスクをとって「GO」の判断をしないかぎり新規事業は実行することができないからです。では、意思決定者レベルで新規事業を成功させた経験がある人材がいない組織は、もう手遅れなのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。私としては、大きく二つの道があると思います。

一つ目としては、担当者にかけられる時間と費用を示して、すべてを任せてしまう方法です。企画担当者にかなりの裁量権をあたえて、意思決定者や関係者は一切口を挟みません。もちろんコンプライアンスは前提として最低限の守るべき原則を示したうえで前向きなアイデアやアドバイスは与えるべきですが、評価基準だとか、目標値だとか、会議の進め方だとか、議事録の書き方だとか、社内ルールだとか業界常識だとかは一切言わないことがポイントです。できれば専任化し、オフィスすら分けたほうがいいと思います。このようにすべてを自分で判断しなければいけない環境におかれる経験によって、その企画担当者は短期間で圧倒的なスキルを身につけることができるはずです。そしてもっとも重要なことですが、その事業が成功しても失敗しても高く評価してあげることがポイントです。また副次的効果として、社内に対しても新規事業を本気でやっていくんだという姿勢を示すことができるはずです。

二つ目としては、今からでも遅くないので意思決定者自ら新規事業を企画し実行する方法です。特に大企業ではレポートラインの階層が深いため業務も細分化されているため、俯瞰的な視点にたってビジネスモデルを立ち上げた経験がある人材がいない場合が少なくありません。その場合でも、課長・部長クラスから新規事業のアイデアを募り企画を立案させて、意思決定者みずからのアイデアとコンペをするなどしてハードルをつくって、新規事業を立ち上げさせます。また、最終意思決定者レベル(たとえば社長)でも、自ら新規事業を立ち上げるべきです。自らリスクをとって実行しながら「勘」どころを養っていくしかないと思います。新規事業がそだっていないのは、もしかしたら社長が新規事業を立ち上げた経験がないからなのかもしれません。であれば、部下のせいにするのではなく自ら率先してリスクをとっていくことで、つねに新しいアイデアが出てくる会社に生まれ変わらせることができるはずです。

組織的なスキル不足で新規事業がなかなか進まない場合は、逃げていてもだめです。真正面から本題にぶつかっていくのが、結局は近道だと思います。私は、何事もみずから経験しない限り「勘」は育たないし耐性もつかないはずだと信じています。自転車に乗るためには本で自転車のしくみを勉強していてもだめです。実際に乗ってみて転びながら「勘」をつかんでいくしかないのです。

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