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イノベーションとマーケティングの違いを知っていますか?

      2017/11/10

イノベーションとマーケティングの違いを知っていますか?

ドラッカーは『マネジメント』でイノベーションとマーケティングを解説していますが、なんとなく言っていることはわかるんだけど、ちょっとしっくりこないなと思われている方もいるかもしれません。(もしかしたら私だけなのかもしれませんが・・・。)
同書を読まれた方の中には、「マーケティングはすでにある商品やサービスを市場に届けるためのもので、イノベーションは新しい商品やサービスを開発するための新しいテクノロジーのことだ」というふうに誤読されてしまっている方もいるかもしれません。もちろん、このようなことはどこにも書かれていません。もし、ドラッカーが上のような定義をしてしまえば、マーケティングと販売活動との違いを明確に区別することができませんし、イノベーションと発明との違いも明確に区別できなくなってしまいます。

イノベーションは「現象」、マーケティングは「手段」

私なりに解釈しなおしてみた結果なのですが、もう少ししっかり理解するためには『マネジメント』で述べていることとは少し違った視点でとらえ直したほうが、イノベーションとマーケティングの違いをより深く理解できるような気がしています。つまり、イノベーションは「現象」として、マーケティングは「手段」として、それぞれとらえ直したほうが理解しやすいのではないかと思っています。

参考までに、「イノベーションとは何か?」について述べた記事<イノベーションをおこすにはどうすればいいの?知らないと出来ないイノベーションのポイント>もありますので、ご興味あればご覧ください。

そもそもイノベーションという名前をつけたのはシュンペーターという経済学者ですが、シュンペーターは、すでにある「何か」と「何か」を組み合わせて新しい何かを生み出すことをイノベーションと名づけました。
そして、イノベーションが「組み合わせ」のことを指すのであれば、ある意味、化学反応の諸現象とおなじように解釈することだってできるのではないかと思うのです。(ちなみに日本では当初イノベーションのことを「新結合」と訳されていました。)つまり、水素と酸素を足し合わせて水が発生するように「いくつかのすでにあるアイデアや発想を組み合わせることで新しいアイデアが生み出される現象のことをイノベーションと言うのだ」ととらえることもできると思うのです。またイノベーションは、一度起こるとなんどでも繰り返し使用できることも化学反応と似ているかもしれません。ただイノベーションは一度おこってしまうと、二度目以降はイノベーションとは呼ばれることはありません。あくまでも一度限りの「現象」にしすぎないのです。そのため、「起こった」「起こらなかった」といった科学実験的な要素が大きいのです。

一方、マーケティングはあくまでも「手法」であって、モノやサービスを作ってから届けるまでの全体の流れや、流れの中の一部の機能を指す人為的な行為を指します。つまり、人と人との間での意識的・無意識的な決め事や約束事を対象としています。マーケティングとは簡単にいってしまえば、それらの約束事をより深く理解することと言い換えることもできるのです。もうちょっとだけ具体的に言うと、マーケティングには「市場調査」から始まって、「商品開発」や「販売促進」、「営業活動」や「保守サポート」など多様な要素がありますが、それぞれの要素にしても全体的な流れにしてもすべて人間たちがきめていること、または人間たちが求めていることなのです。たとえば、ニーズを把握するために市場調査をするのは人間の行動を把握したいがためおこなう行為ですし、商品開発にしても人間が利用する場合にもっとも効果的なデザインや機能を考えるということと同じことです。販売促進は、商品やブランドをいかに魅力的に感じてもらうかが課題です。このように人間の特性や傾向をより深く理解し、実践することがマーケティングなのです。当然、そこに化学反応的な要素はふくまれません。だからマーケティングが「起こった」とは言わず、マーケティングを「する」「しなかった」など、人が主語となる使われ方がされるのです。

もちろん、マーケティングにもWebマーケティングなどのようにテクノロジーがおおきな比重をしめるようになってきたし、データマイニングなどによる解析などが新しいマーケティング手法の開発につながっているのは事実です。しかし、これは実はマーケティングの分野ではなく、イノベーションの分野なのです。マーケティングの領域でイノベーションが「起こった」結果、新しいマーケティング手法が「生まれた」のです。

イノベーションは「変革的」、マーケティングは「改善的」

このように、マーケティングはあくまでも人にフォーカスした方法論の話であり、イノベーションとはまったく次元がちがう話なのですが、ここで注目すべきポイントは、マーケティングは商品やサービスを提供する会社側の意図や意思を反映しやすくコントロールしやすいのに対して、イノベーションは必ずしもコントロールできるとは限らないことです。
イノベーションがコントロールしにくいことをうまく説明している書籍に、クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』という書籍があります。一見、非合理的で無価値で変哲のない破壊的技術が、結果的に優良企業を駆逐するという有名なテーゼを提唱した書籍です。つまり、人間が合理的な判断をすることによって、常識的に考えれば無価値と思われる技術によって生み出された非合理的な商品やサービスが、いままで評価されつづけてきた商品やサービスを駆逐してしまう現象をイノベーションのジレンマと呼んだのです。クリステンセンによれば、このような現象はこれまで数多く存在したし、これからも起きると考えられています。このように、何が正しいのか、どうすればイノベーションが起こるのかは合理的には判断することができず、やってみないとわからないことだらけなのが実情です。しかし一旦イノベーションが起きれば、その後ドラスティックな変革を起こすことができるのがイノベーションの特徴でもあります。
その一方で、マーケティングはたとえ中途半端でもある程度は実行することができるという一点でまったく違います。そもそも商品やサービスを人に売る行為自体がマーケティングの要素なので、会社を経営している以上なんらかのマーケティング活動はしているものです。資金に余裕がある企業であれば、広告費を多めに出したり、市場調査に時間と人件費をかけることもできるでしょう。このようにマーケティングでは、所詮人間同士の決め事や人間が考えそうなことを対象としているので、ある程度コントロールすることができます。要するに、マーケティングは実行に移すことは可能ですが完璧を目指すには継続的な努力が必要であって、常に0点から100点の間を行ったり来たりしている活動といえます。

どうでしたか?このように視点でもう一度『マネジメント』を読んでみてはいかがでしょうか?

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