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新規事業の人材育成とスポーツ界の人材育成の、当然といえば当然の共通点

      2017/11/13

私がビジネス・スクールで学んでいたときのMBAの教科の中に、マネジメント理論(経営管理論)がありました。
マネジメント理論は、経営資源をマネジメントするための、多くの理論からなりたっているのですが、その中でもとくに私が面白いと思ったのは「リーダーシップ論」と「モチベーション理論」でした。

いま私は新規事業の企画と立ち上げを担当しているのですが、今から考えてみると、ビジネスでこれらの理論がいちばん顕著に必要とされるのは、実は新規事業の立ち上げなんじゃないか?と思われるほど、新規事業の立ち上げにとって重要な知識だったと思っています。
既存のビジネスや事業では、ある程度作業が定型化され、ひとつのやり方をいかに問題なくうまく処理できるかといったことや、いかに指示したことをこなせるかといったことが評価の基準になってしまい勝ちですが、新規事業については、頼まれもしていないことを、自ら考え、決断し、実行することが求められます。このような新規事業には、まさに上長のリーダーシップと発案者のモチベーションが必要とされるものです。

ただ、理論と実践はいつの時代でも、そしてどの分野でも大きな隔たりがあるものですし、相手は人間なので理論通りにスムーズにいくことなんてめったにお目にかかることがありません。身の回りの事例を探していても見つからないし、他業種の事例を聞いてもなかなか肌感覚としてわかりにくいものなのが欠点ですよね。

そこで、リーダーシップや人材育成の視点をビジネスの現場ではなく、ビジネス以外のほかの事例で参考になるものがないかと探していたところ、昨年NHKで放送された「奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち~」という番組を見て、新規事業を立ち上げ人材の育成とスポーツ界の人材育成は似ているんじゃないか?と思いはじめました。

スポーツ界の人材教育と新規事業の人材育成との対比という視点で紹介します。

スポーツ界の人材教育のかかえる課題

「カギはメンタルにあり」勝てるチームには、必ず名伯楽あり。「奇跡のレッスン」は、プロチームで活躍する現役の「名コーチ」による短期集中レッスンに密着し、そのヒミツを惜しげもなく見せる全く新しいドキュメンタリーです。
今回は、スペイン出身のフットサル日本代表監督と日本の小学生が出会いました。スポーツドキュメンタリーを多数制作してきた岸ディレクターも驚いた、「2分に一度は名言が飛び出す魔法のようなレッスン」とは? そして「奇跡」とは…?

これは上で紹介したNHKの番組の紹介記事の一部の引用です。

実際に、番組で「名コーチ」は、日本のコーチが子供たちの自主性を奪うような指導がなされていることを指摘しながら、次々と新しい方法で子供たちを導いていく姿を映し出していきます。
まさに、日本のスポーツ界の育成方法、指導方法の問題点をはっきりと映し出した番組だったと思います。

見終わってみてから、大変面白かったし興味もわいたので、できればサッカーの指導で同じようなことを分析している書籍はないものか?と思って、自分なりに探してみたところ、一冊ありました。
「サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法」という本で、ちょっと古い本ですが、子供のサッカー教育を通して自立心を育てるといった内容の本でした。非常に納得性が高く、まさに新規事業の立ち上げに必要な人材を育てるときに必要な視点と同じ視点で書かれた本でした。

番組の主張とこの本の主張をまとめて簡単に要約すると、現在の日本のスポーツ界の育成システムの限界として、「勝敗にこだわりすぎる」ことと「指導者が先回りしている」ことに尽きると思います。

たとえば、コーチや父兄などの指導する立場の人たちが勝敗にこだわってしまい、一喜一憂することの弊害を指摘しています。勝敗にこだわりすぎると、コーチや父兄が試合中に指示や命令ばかりするようになり、子供たちは自ら考えることなく、言われたことを指示通りにうまく処理することを最優先にします。
その結果、その時々で、自分でゴールを決めようとする動きや周りを見てパスをつなげようとする動きがとれず、失敗します。そしてその失敗を、「練習が足りない」とか「気持ちが足りない」という根性論に帰結させているのです。

もちろん「名コーチ」も同書の著者も、このような指導方法が正しいとは考えていません。この考え方とはまったく逆に、子供たちがいかに自分で考えて、決断し、行動できるか、そういった自主性こそが成長を促すと考えているのです。
失敗したときもフォローは答えを示しません。そうではなく、なぜうまく行かなかったのかを自分で考えさせるように、促すのです。このような指導こそが、子供たちの自己肯定感を育て、新しいことにチャレンジする精神を育てると考えるのです。

新規事業立ち上げの人材教育のかかえる課題

新規事業の立ち上げでも同じことが起きていると思います。
「でも子供と大人は事情が違うでしょう?」とか「仕事なんだから、勝敗にこだわるのは当たり前なんじゃないの?!」なんて思っていませんか?このような考えこそが、まさに上のスポーツでの人材育成と同じメンタル・ブロックなのです。人生経験の浅い子供のほうが、より勝敗が与える影響は甚大だとも言えます。また、勝敗にこだわるあまり短期的な利益や売上を追い求め、結果的に新規事業がうまく離陸しない理由なのです。
確かに、企業としては利益をださなければいけません。そうでないと、会社はつぶれてしまうでしょう。しかし、それはあくまでも企業体全体として、継続して利益をだしていけるかどうかという視点であるべきです。

企業体としての勝敗の帰結は、現在の稼ぎ頭である既存事業が大半を担うべきことであって、新規事業としては将来の稼ぎ頭になるために、むしろ今のうちに多くの負け(失敗)を経験しなければならないのです。
既存事業だって、かつては新規事業であったはずです。そして、今稼ぎ頭になれているのは、数多くの失敗を経験したからにほかなりません。つまり、新規事業の立ち上げについては、自分で考えて、自分で決断して、自分で行動した結果、できるだけ多くの失敗を経験することで学習を積むことが不可欠なのです。

これは、まさにスポーツの人材育成のケースと同じことではありませんか。
新規事業を担う人材が育たないと嘆いている会社では、いまだに無用な実力主義、成功至上主義がはびこっているのではないでしょうか?
また、発案者の企画に対して横槍を入れたり、先回りをしたり、既存事業と同じ評価軸を用いて、新しいことに挑戦するモチベーションを奪っているのではないでしょうか?
あるいいは、なにがなんでも利益を出さないといけないとか、絶対に失敗できないとか言って、企画者を追い込んでいるのではないでしょうか?

新規事業担当者を育てるための鉄則

もし、新しいことに挑戦しようとする人材がでてきたら、リーダーは以下をしなければなりません。

1.しっかり聞く →自主性を評価する。

どんなに陳腐なアイデアだと思ったとしても、真摯に、真剣になって聞くべきです。そもそも新規事業を立ち上げたことがある経験者であれば、すべてのアイデアに可能性があることを知っているので、無神経な批判や否定はできるはずがありません。まずは、発案者、企画者の自主性を高く評価すべきなのです。ただし、実際に実行するかどうかは別です。社内のリソースの問題もあるので、もしやるとしても、どの程度の予算でどの程度の期間行うかを明確にすべきです。

2.任せる →先回りしない。

与えられる予算や期間を決めたら、あとはコンプライアンスなどの最低限のこと以外は、何も口出しすべきではありません。企画者が支援を求めているとき以外は、自由にやらせるべきです。発案者にとっていちばん厄介なのは、無神経な横槍です。この横槍を防げるのは、上長しかいないのです。大変な度胸がいることですが、リーダーシップを示す良いチャンスだと思います。このような寛容な態度によって、新規事業を立ち上げる企業文化が育ってくるはずです。

3.たとえ、失敗しても高く評価する。 →モチベーションを維持する。波及させる。

誰だって、高く評価されるともう一回挑戦しようという気になるものです。また、誰かがそんなふうに楽しんで挑戦しているところを見たら、自分もやりたくなるのが人情です。もし、部下がこっそり「サラリーマンだから、言われたとおりにしなきゃ」といったり考えているようだとしたら、新しいことを自分で考える努力を放棄させているのは誰なのか、もう一度考えてみるべきです?リーダーこそ「仕事はつらいもの」という固定観念を払拭しなければならないはずです。

さいごに

まとめていて気づいたのですが、なんとなく、かつての昭和の名経営者がやっていたことと、カブっていませんか?

松下幸之助は人の話を聞く、傾聴の名人だったそうです。
鳥井信治郎の「やってみなはれ」精神はとくに有名ですよね。
本田宗一郎は「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」といいました。

もしかして、バブル崩壊前の日本の産業が元気だったのは、リスクを恐れないで新しいことに挑戦する姿勢をリーダー自ら体現して、挑戦すること自体を高く評価し、組織全体のモチベーションをあげていたからなのかもしれませんね。
テクノロジーや新しい技術の開発は、新しいことに挑戦できる人材が育つかどうかにかかっています。
その人材育成そのものは、結局、リーダーが「聞いて」「任せて」「評価する」ことができるかどうかにかかっているのではないでしょうか?

ちなみに、NHKの番組、スペイン人のフットサル・コーチの指導の結果は、まさに劇的な効果を出しました。
番組の最後に、同じくらいの実力のチームと試合をしたら、これまでにないくらいの大差で勝ったのです。また、これまで積極的にプレーできなかった子がゴールを決めたりして、やらせじゃないの?って思わせるぐらいの「奇跡」がおきたのでした。

おなじような奇跡は、ビジネスでも起こりえるはずです。
新規事業の立ち上げや社内ベンチャーだって、楽しんでいいはずです。
サラリーマンだから、上司の指示に従わなければならないなんて、だれが決めたのでしょう?
仕事はスポーツや趣味と違うと、あまりにも思いすぎていませんか?

きっと、自分のやりたいことのために働くこと、自分が挑戦したいことを会社で実現すること、そんなことに楽しみながら取り組んでもいいはずです。そんな社会にすべきだと思います。

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