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新規事業を担当している私が、戦略立案でに役にたつと思った本を紹介します

      2017/09/29

「うちの会社には戦略がない!」「こんな戦略じゃ、うまくいかない!」
「あの会社は戦略が明確だよね。」「戦略がしっかり会社は伸びてるよね」などなど・・・。
みなさんも、このような発言をいったり、聞いたりしたことありませんか?

けっこう気軽に使われている「戦略」ですが、本当は「戦略」ってとっても難しい概念なんですよ。
むかしから、多くの人がこの戦略の正体を見つけようとしてきましたが、実はまだはっきりとした定義すらされていません。
私自身も戦略とは何かを一言で説明しようとすると、いつも、さっき自分で説明した戦略の定義と矛盾してしまうような疑問が沸いてきてしまいます。

たとえば、私が「戦略とは、競争相手に勝つための方法である」と定義したとしても、戦略には必ずしも競争相手はいるとは限らないのでは?とか、もし必ず勝てる方法があったら誰もが勝てちゃうよ?とか、勝つためといっても最終的に「勝った状態」とはどういう状態を指すの?時間的な定義はないの?などなど、いろいろ相矛盾した疑問がでてきたり、定義をひとつに決めることが出来ないような疑問がでてきて、いっこうに結論が出せなくなってしまうのです。

では、自分で考えるのには限界があるので、他の人の戦略の定義を調べてみたらどうでしょう?
たとえば、wikipediaで戦略を調べてみたところ、

「戦略(せんりゃく、英: Strategy)は、一般的には特定の目標を達成するために、長期的視野と複合思考で力や資源を総合的に運用する技術・科学である。」

とされています。どうやらwikipediaによると、戦略とは力や資源を運用する技術・科学のようです。
では、はたして本当に戦略とは「力や資源の配分の技術や科学」なのでしょうか?

この定義にしたがえば、戦略の定義とは、戦略を実行するために必要な人員や資金・資材などの取得や利用・消費に関する計画と手続き、そしてそれらの資源をより効率的に活用するための研究と解釈できてしまいますが、これだと「戦略」の定義が「戦略」が存在していることを前提にしているので、矛盾してしまいます(ちなみに、こういった誤謬を「先決問題欲求の虚偽」といいます)。
また、この定義では「特定の目標」ありきになっていますが、むしろ、戦略には目標を設定する行為も含まれているのではないでしょうか?
そう考えていくと、本当は技術や科学といった概念よりももっと大きな概念でなければならないのではないでしょうか?

さらに言えば、戦略は科学でなければならないのでしょうか?
現実の戦いでは、自分のところの計画や手続きよりも、競争すべき相手(自分自身もふくめ)との駆け引きといった精神的・心理的な要素にもっと重点が置かれているのではないでしょうか?
なんとなくですが、戦略とは計画や手続きというよりも、相手を出し抜く発想力や想像力であるような気もします。

このように、今のところ私がしっくりといくような戦略の定義はない状態なのですが、ひとつだけうっすらとわかったことは、戦略は誰かに定義されるものではなく、自分自身で解釈するようなものなのではないかなぁ?と言うことです。
そういう意味では、戦略自体は確実に存在しています。
それは私が戦略を考えて実行に移し、成功なり失敗なりをしているからです。
戦略は、定義もうすぼんやりとしていて、実体も目に見えないのかもしれませんが、確かに存在だけはしているようです。

今回の記事では、新規事業を立案して実行するにあたって、「戦略」なるものを自分なりに解釈するのに役に立った書籍をいくつか紹介したいと思います。
定義が明確にできていないテーマを解説するのも妙な感じですが、興味があったら読んでみてください。
すくなくとも、私には今でもとっても役に立っている書籍です。
では、どうぞ。

戦略って何?を学べる本

まずは、戦略って何?を学べる書籍です。
これらの本で述べられている「戦略が本領を発揮するのは、逆転現象である」というメッセージは、とっても新鮮な驚きでしたし、実感できる内容でした。また、すぐれた戦略とは、計画からではなくヒラメキから生まれるというのも、納得です。あきらかな定義は見出せませんが、これらの書籍を読めば「戦略とはなんぞや?」的な問いに対して、薄ぼんやりとイメージできると思います。

『戦略の本質』野中郁次郎
戦略の生い立ちから、現在までの系譜がわかる。軍事戦略を題材にとって、逆転現象こそ戦略の本領発揮として、逆転がうまれるメカニズムを研究している。考え方はビジネスでも共通している。


『クラウゼヴィッツの戦略思考』BCG
現代的な「戦略」の生みの親であるクラウゼヴィッツの「戦争論」をわかりやすく解説してくれている良書。眼力、天才、摩擦、相互作用といった概念をわかりやすく解説している。


『ナポレオンの直観』『戦略は直観に従う』ウィリアム・ダガン
すぐれた戦略は計画からではなく、直観によって形成されるというテーゼを数々の事例によって証明した良書。直観が生まれるメカニズムを解き明かしている。




『良い戦略、悪い戦略』リチャード・ルメルト
計画を重視した戦略立案の欠点を解説した書籍。


戦略を思いつくための基本的な考え方を学べる本

続いて、戦略を思いつくための基本的な方法論を学べる書籍です。
といっても、一冊しか紹介しません。
なぜならば、戦略を思いつくための方法論は、これだけでもいいくらいだと言ってもいいと思うからです。
これを読めば、天才的なヒラメキには、天才的な能力はいらないと言うこと、そして、豊富な研究、体験、熟慮、洞察、そしてひらめくまでの忍耐力が重要だと言うことがわかると思います。

『アイデアの作り方』ジェームス・ヤング
アイデアがひらめくためのステップを解説した超有名な書籍。自分の体験としても納得感の高い書籍。上の『ナポレオンの直観』と『戦略は直観に従う』とあわせて読みたい。


どうやって戦略スキルを身につける?

ジェームスヤングの『アイデアの作り方』に則って、戦略をひらめくにいたるステップを紐解いてみると、大きく以下の流れになると思います。

 1. 圧倒的なケーススタディで疑似体験すること
 2. 現状や解決すべき課題を自分なりの尺度で解釈すること
 3. いろいろな視点を組み合わせて解決策を考え抜くこと
 4. ヒラメキが降りてくるまで、忍耐強く待つこと
 5. 状況の変化に応じて1~4を繰り返すこと

これらのステップを踏んで戦略を描くことを、何度も何度も繰り返し経験することで、次第にすぐれた戦略が描けるようになってくるはずです。

戦略に関して書かれたケーススタディ集

すぐれた戦略をひらめくためには、過去の先人の経験を、圧倒的なボリュームで疑似体験することが肝心ということですが、私がアイデアをひらめくために読み漁った書籍の中でも、とくに世の中的にも有名で私も参考になった書籍を紹介しましょう。
ケーススタディの書籍は山のようにあるので、日ごろのケーススタディの収集と詰め込み&独自解釈が必要です。また、自分との相性もあるので、最終的には自分で探しだして、できるだけ毎日たくさん読むようにしましょう。

『ビジネス・ケースブック 一橋ビジネスレビューブックス』一橋ビジネスレビュー
かつて一橋ビジネスレビュー編集部が毎年だしていたケーススタディ集。MBAではケーススタディを豊富に経験できるが、学生でない場合はチャンスが少ない。またやって欲しい。


『逆転の競争戦略』山田英夫
逆転現象が戦略の本領発揮だとすれば、逆転現象を起こしたケーススタディを集めて体系化したのがこの書籍。個人的にはいちばんおすすめの書籍。



『ブルーオーシャン戦略』W・チャン・キム、 レネ・モボルニュ
『逆転の競争戦略』と同じ主旨で、逆転現象を起こした多くのケーススタディから、フレームワークを提供した書籍です。世界的にも有名な本ですが、私としては『逆転の競争戦略』のほうがインパクトは大きかったです。

『ストーリーとしての競争戦略』楠木建
すぐれた戦略とは、まるで物語のように文脈の流れに一貫性があり、誰かに話さずに入られないよなモノだとしたベストセラーです。タイトルどおり、大量のケーススタディをストーリーとして吸収しやすくできていて、読みあきません。



そのほか、司馬遼太郎などの歴史小説や、軍記とか伝記とかもいいケーススタディになると思います。

ちょっと古いけど、戦略という視点が盛りだくさんの事例研究書

今から見ると、ちょっと古いですが、ひとつの事例を取り上げて戦略という概念がわかりやすく述べられているビジネス書です。
むかしは、こういった戦略の視点でかかれたケーススタディ本が多かった気がしますが、私の気のせいなのか、最近は少ないような気がします。

『失敗の本質』野中郁次郎
太平洋戦争で日本軍が敗退した理由を、おもに組織論的な視点で分析した良書。上であげた『戦略の本質』の姉妹本。世の中的には、『失敗の本質』のほうが有名。



『巨像も踊る』ルイス・ガースナー
IBMが90年代に大復活した際の話。『失敗の本質』と真逆の視点で描かれた本。大企業がいかにして変革の壁を乗り越えるかを研究したケーススタディとして解釈することもできる。


『アサヒビール大逆転』藤沢摩弥子
IBMのケーススタディと同様に、倒産寸前の企業がV字回復した事例のケーススタディ。誤った戦略の立て方や組織論的な過ちがわかる。『失敗の本質』とあわせて読むと面白い。

『久多良木健のプレステ革命』麻倉怜士
90年代にゲーム市場を席巻したSONYのプレイステーションが生まれた秘話。戦略的な視点が盛りだくさん。こういった本がもっと出ていいのになかなか出てこないのは、おそらくここまで抜群に戦略が機能した事業が少ないから?

『iモード事件』松永真理
これも90年代~2000年代に携帯電話市場で圧倒的な市場を築くにいたったiモードの開発秘話。大企業で戦略を立案して実行に移すことの難しさがわかる。


さいごに  戦略とフレームワークの関係について

戦略って何?という疑問から突き詰めていくと、なんだかひとつの正解を出さないといけないような気になってしまいます。
そのようなプレッシャー(?)から、多くの戦略研究者は視覚的に明確なフレームワークを導きだしてきました。
たとえば、経営学で有名なマイケルポーター教授の、5フォースやバリューチェーンといったフレームワークがそれです。
では、これらのフレームワークは、はたして「戦略」なのでしょうか?
そして、これらのフレームワークを使えば、すぐれた戦略をえがけるのでしょうか?

私の場合、もし誰かに「戦略を考えるためのフレームワークを教えてくれない?」と頼まれたとしたら、きっと私はフレームワークに頼らないで考えることをお勧めすると思います。
なぜならば、フレームワークを使えば事象を「構造的」に分析できるとしても、事象の「本質」は発見できないと思うからです。
事象の本質がわからない限り、戦略を産むヒラメキは起きるはずがありません。

私の対応を、冷たい対応だと思いますか?確かに、世の中には無数のフレームワークがあります。それらを使えば、戦略を考えるの糸口だけでも見つかりそうな気はします。
でも、そもそも事象の本質とは、フレームワーク上の「フレーム」をどう解釈するのか?といった事象の捕らえ方や、フレームとフレームの間の依存関係と相互作用そのものであるはずです。
(たとえばSWOTを使って分析しても、どのような基準で「自社の強み」と認定するのかといったことは明らかに出来ません。さらに、事象の本質とは、「強み」や「弱点」そのものにあるのではなく、自社の弱点をどうやって強みや機会につなげるのかといった文脈や依存関係や相互作用にあるのです。)

その事実を理解しないで容易にフレームワーク使ってしまうと、フレームワークはただの穴埋め問題になってしまう危険があるのです。
どんなに包括的に、網羅的にいろいろなフレームワークを使って穴埋め問題をまとめてみても、事象の本質を捉えたものでなければ、それは戦略ではありません。

つまり、どれだけ優れたフレームワークをつかったとしても、戦略が効力を発揮する根拠である戦場の「制約条件」や「レバレッジ」、「パラダイム」や「駆け引き」といった競争環境との相互依存関係を考慮に入れたダイナミックなアイデアを引き出すことはできないのです。
かりにフレームワークからアイデアが生まれたとしても、それは誰から見ても正しい予定調和のアイデアになり、驚きやインパクトを生むものではないでしょう。
予定調和で驚きがないアイデアは、競争相手からかんたんに予測されたり対処されてしまうため、すぐれた戦略とはいえません。

だから、フレームワークは、ひらめいた戦略やアイデアを理路整然とまとめるくらいの役にしか、たたないのだと思っています。
フレームワークを学ぶのは結構ですが、フレームワークから戦略をひねり出そうとするのは、時間の無駄だと信じています。
フレームワークには、戦略を立案するツールとしてよりも、もっと他の適した用途があると思います。
たとえば、フレームワークを使えば、現時点の産業やビジネスの基本構造を、わかりやすく表現することができるかも知れません。つまり、この瞬間に起こっているビジネスのKSFや勝ちパターンとか、様々なプレーヤーの相関関係や力関係をポイントにまとめてわかりやすく整理したり、これから調査すべき事柄のチェックリストとしての役割を担うことができると思います。
要するにKISS(Keep it sinmple, stupid!)ですね。そういった使い方では、フレームワークは有益であることは間違いないでしょう。
戦略をヒラメく道具ではなく、ひらめいた戦略をわかりやすく伝え、浸透させる役割としても有益かもしれませんね。
ちなみに、代表的なフレームワークは過去に記事を書いているので、興味があればご覧ください。

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