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モチベーション理論とリーダーシップ論は二つでひとつということ

      2017/11/10

部下がいうことを聞かない、指示どおりのことができない。なんとなく壁を感じる。なにを考えているのか、わからない。…こんな悩みありませんか?真面目なリーダーであろうとするほど悩んでしまう問題ですが、経営学の理論ではこういった悩みに関しても長いこと研究され続けています。それがモチベーション理論とリーダーシップ論です。
モチベーション理論とリーダーシップ論は、車の両輪です。片方だけわかっていても役には立ちません。この研究分野ではいろいろな理論が乱立していて網羅的にとらえるのに一苦労ですが、重要なポイントだけおさえておけば大丈夫です。それぞれの理論のエッセンスをおさえて日々のチーム・マネジメントに生かしましょう。

モチベーション理論
  = 人が動く理由と条件の研究(メンバーの動機付け論)

リーダーとしてチームメンバーのやる気の基を知っておく必要があるという考えから研究されているのがモチベーション理論です。
そもそも、やる気って何?モチベーションって何なの?といった視点から始まっているので、心理学とか行動経済学とかに近い側面もあります。では、さっそく代表的な理論を見ていきましょう。

マズローの欲求5段階説

モチベーション理論でまず押さえておかないといけないのは、マズローの5段階欲求です。ほかの理論の基礎理論となっていることも多く、人間の基礎本能として理解しておく必要はあります。

生存の欲求 … 生命維持のための食事・睡眠・排泄等の本能的・根源的な欲求です。

安全の欲求 … 経済的安定性・良い健康状態の維持・良い暮らしの水準、事故防止、保障の強固さなど、予測可能で秩序だった状態を得ようとする欲求です。

所属の欲求 … 情緒的な人間関係・他者に受け入れられている、どこかに所属していたいという欲求です。

承認の欲求 … 自分が集団から価値ある存在と認められ、尊重されることを求める欲求。

自己実現の欲求 … 自分の持つ能力や可能性を最大限発揮し、具現化して自分がなりえるものになりたいという欲求。

この理論が普及してから、一時、自己実現をもとめて自分探しの旅に出ることがブームのようになった時期がありました。社会に出ても自分のやりたいことや想像していた仕事じゃないと言いながら、今やれることややるべきことを放棄してしまい、あてもない本来の生きる目的を探す「青い鳥症候群」の問題です。こんな問題を引き起こすほど影響力も大きく、現代社会において根が深い問題を抱えている理論といえます。

『完全なる経営』
 2001/11/30
 著者:アブラハム・マズロー

期待理論

期待理論は、「何をどの程度」やれば「どんないいこと」があるのか?そして、それは達成できるものなのか?というのがモチベーションの源泉だといった理論です。そこで、この理論ではモチベーションをあげるために以下の要素の掛け算として表現できるとしています。

努力や手段

明確な目標

魅力的な報酬

もし、上の要素のうち、ひとつでも0であればモチベーションは0になってしまいます。たとえば、ちょっと努力するだけで目標をかんたんに達成できるけど、なんのメリットもなければモチベーションはあがりません。また魅力的な報酬があって、努力する準備も整っているものの、目標があまりにも高すぎると諦めてしまいます。このように、リーダーがこの3つの要素を適切に設定することで、モチベーションをコントロールできるという理論です。よく期初に各自の目標を設定して適宜管理すること(MBO)のも、この理論にもとづいた考え方ですね。

X理論、Y理論

X理論、Y理論は簡単に言えば、性悪説になってメンバーを扱うか、性善説にたってメンバーを見るかの違いです。

X理論

メンバーに言うことを聞かせるために目標に達成したら褒美をあたえるかわりに、達成しなかったときに罰を設けるなどして強制的に働かせようとするマネジメントする方法です。恐慌などの生活水準が担保できない状況のときには、メンバー間の競争が促されて効果がある方法だといわれています。

Y理論

X理論の逆でメンバーは高い意識を持っている前提で、かれらの目的を実現するためにチャンスを与えることでモチベーションを高めるマネジメント手法です。会社と個々人の利害関係が一致した場合は、最高の結果をだすことができると考えられています。

ブラック企業などの問題もありますが、現代の日本では、一般的に比較的生活水準がある程度たもたれていると考えられているので、Y理論が有効だといわれています。

『企業の人間的側面』
 1970/8
 著者:ダグラス・マグレガー

マクレランドの欲求理論

さいごはマクレランドの欲求理論です。これは、メンバーのモチベーションを次の3つの欲求に類型した理論です。

達成欲求 … まるで求道者のように、困難なタスクをこなすこと自体に価値を求める欲求

権力欲求 … 権威をもつことなどによって、他者に対して影響力を持ちたいという欲求

親和欲求 … 頻繁にコミュニケーションをとるなど、まわりとの関係を友好的に保ちたいという欲求

だんだん、生々しい欲望の世界に入ってきます。さいごは個人が仕事や人生にもとめる欲求レベルに対して、組織がどこまで対応することができるかに依存するというわけです。もちろん、ひとつに集約されるわけではありませんので、複合的にどの欲求が高いのかを把握することが重要です。

「メンバーの動機付け論」まとめ

モチベーション理論は心理学に基づいた研究ということもあり、納得感は高いものがあると思います。しかし、ここで述べた理論のひとつひとつは、人間の動機付けをある側面のみにフォーカスした研究結果なので、ひとつの理論だけを信じるようなことはせず、いくつもの視点を網羅的に抑えておくべきだと思います。実際、人によって働く理論も違うと思いますし、同じ人でもその人のキャリア・ステージによっても当てはまる理論は変わってくるはずです。
このように比較的柔軟な理論ではありますが、ただ、現実に使おうとするときに、どのようなコンテンツであるべきなのか?という答えまでは準備していません。理論をいかに応用し、現場に即した形で実践するかは、それを実践する組織にまかされているのです。結局、理論を知ってマネジメントすることにどれだけの意味があるかは、リーダー当人のリーダーシップに任されているのです。それが理論の限界なのかも知れません。

リーダーシップ論
  =すぐれたリーダーの特長の研究(リーダーのあり方論)

優れた業績の会社には、すぐれたリーダーがいるものだ。だから、優れたリーダーの特長を真似れば、業績もよくなるはずだ。
という視点で研究するのが、リーダーのあり方に着目したリーダーシップ論です。この視点にたった研究の最大の特徴は、ズバリ「わかりやすい」ことでしょう。なんとなく、優れたリーダーの特長を備えている人のほうが、業績をあげることができそうですよね。また、リーダーを選抜しやすいというメリットもあります。次世代のリーダーや社長交代を考えたとき、感覚的にリーダーの特徴を備えている人を選べれば安心できるし、周囲の賛同を得られやすそうですよね。

カリスマ的リーダーシップ論

カリスマと呼ばれるリーダーの特性をいくつかの項目にまとめた分析です。この分野の草分け的存在として、コンガーとカヌンゴが有名ですが、いろいろな説が入り乱れている分野でもあります。
ロビンスの『組織行動のマネジメント』によると、以下のような特徴があるといわれています。

1.自信を持っていること

2.ビジョンを持っていること

3.ビジョンを強く信じていること

4.並外れた行動力があること

5.現状に満足しないこと

この手の分析は、よくビジネス書とか経済雑誌でも取り上げられます。ジョブスのカリスマ性とかやゴーンの指導力とかをまとめた書籍だったり、雑誌では有名人やプロ・スポーツの監督から理想の上司をランキングする特集するとかですよね。わかりやすくはありますが、結局実績を出した人の人気投票みたいになっちゃって、結果論的な側面もつよいですよね。

『カリスマ的リーダーシップ―ベンチャーを志す人の必読書』
 1999/12
 著者:コンガー,ジェイ・A.、 カヌンゴ,ラビンドラ・N.

変革的リーダーシップ論

リーダーシップ研究の第一人者であるコッターは、環境変化が激しいときにリーダーシップがいちばん必要とされるとし、マネジメントとリーダーシップを比較して理想像を描き出しています。そして、変革を実現するためには、次の8つのステップを踏む必要があると説きます。

1.組織の中で危機感を生み出す

2.変革を推進するチームを作る

3.ビジョンと戦略を作る

4.ビジョンを伝える

5.社員の自発を促す

6.短期的な成果をあげる

7.成果を広げて変革をすすめる

8.企業文化に根付かせる

変革型リーダーシップ論では、環境変化が激しいときの業績はリーダー次第だという議論になってしまいがちです。本来は、リーダーだけでなく過去に蓄積してきた技術力や販売チャネルなどのリソースも考慮にいれるべきですが、リーダーシップだけに注目してしまうことで、本質的な議論がぼけてしまうこともあるので注意が必要です。

『企業変革力』
 2002/4/13
 著者:ジョン・P. コッター

パス・ゴール理論

パス・ゴール理論は、リーダーの役割はメンバーの目標達成であるという視点でリーダーの役割を類型した理論です。

指導する役割 … 部下の行動計画、目標と実績の管理をすることで目標達成を促す役割

支援する役割 … 自ら部下に働きかけて友好的な関係を築くなど、内面から支援して勇気付ける役割

関与する役割 … 部下の意見を尊重しながらも、業務上の問題解決に相談に乗り解決に向けて働きかける役割

達成させる役割 … 部下が自信を持ち経験をつみながら努力することで、高い目標を達成できるよう導く役割

この理論は、リーダーシップはいつも同じスタイルだとは考えず、その時その時の環境によってもスタイルを変えるべきだという理論(条件適合理論)のひとつです。メンバーの目標達成を主目的においているという視点で考えると、下に示すサーバント・リーダーシップに似た概念かもしれませんね。

サーバント・リーダーシップ

「サーバント」とは召使のことですが、「サーバント・リーダーシップ」がリーダーが部下の召使になるべきだとを説いてるわけではありません。これまでの権威主義的な指導方法を変えて、コーチングなどを用いて部下を成長させることがリーダーとして重要な素養だとする理論です。これもいろいろ賛否両論ですが、リーダーに求められる特性として次のような項目があります。

1.傾聴 … 相手が望んでいることを聞き出すために、まずは話をしっかり聞き、どうすれば役に立てるかを考える。また自分の内なる声に対しても耳を傾ける

2.共感 … 相手の立場に立って相手の気持ちを理解する。人は不完全であることを前提に立ち相手をどんな時も受け入れる。

3.癒し … 相手の心を無傷の状態にして、本来の力を取り戻させる。組織や集団においては、欠けている力を補い合えるようにする。

4.気づき … 鋭敏な知覚により、物事のありのままに見る。自分に対しても相手に対しても気づきを得ることが出来る。相手に気づきを与えることができる。

5.納得 … 相手とコンセンサスを得ながら納得を促すことができる。権限に依らず、服従を強要しない。

6.概念化 … 大きな夢やビジョナリーなコンセプトを持ち、それを相手に伝えることができる。

7.先見性 … 現在の出来事を過去の出来事と照らし合わせ、そこから直感的に将来の出来事を予想できる。

8.執事役 … 自分が利益を得ることよりも、相手に利益を与えることに喜びを感じる。一歩引くことを心得ている。

9.人々の成長にかかわる … 仲間の成長を促すことに深くコミットしている。一人ひとりが秘めている力や価値に気づいている。

10.コミュニティづくり … 愛情と癒しで満ちていて、人々が大きく成長できるコミュニティを創り出す。

(via)http://www.servantleader.jp/10s.html

なんだかリーダーたるもの聖人君子でありなさい的な理論のようにも思えますが、ただしく努力しようとしている部下から見れば、このような指導をしてくれるリーダーのもとだと成長できる気になりますね。でも、やるきがない部下はどうすればいいのか?また、リーダーに実績が足りない場合でも、おなじように有効なのか?などの課題も残されていると感じますね。

『サーバントリーダーシップ』
 2008/12/24
 著者:ロバート・K・グリーンリーフ、 ラリー・C・スピアーズ

「リーダーのあり方論」のまとめ

リーダーのあり方に対する研究では、形式論理的な誤り(「代表性ヒューリスティック」「前後即因果の誤謬」)が指摘されがちな理論がおおく、「これって結果論じゃないの?」といった賛否両論がある研究分野です。優れた業績のリーダーの特長を集計して分析したといっても、どうしても偏りが生じてしまいます。
世の中には業績の優れていない失敗が山ほどあるものです。もしかしたら業績のよかったのは、リーダーが優れていたことよりも、ちょうどいいタイミングで環境が変化したからかもしれません。また、すぐれた業績は、それまでに数多くの失敗を経験して生まれたはずなのですが、リーダーシップ論ではそれを担保できません。なぜならば、同じリーダーの特長でも業績が悪い場合と、よい場合がでてきてしまうからです。しかしながら、当然、失敗事例はあまり表に出てこない(失敗のほうが圧倒的に多いにもかかわらず)ので、どうしても分母に偏りが生じてしまうわけです。もしジョブスの名前をふせてジョブスの失敗事例だけを取り上げた分析をしたら、おそらくだれも優れたリーダーだとは思わないはずです。このように、リーダーの特長の研究に一般論や恣意性が含まれてしまうのは、宿命なのかもしれません。
とはいいながら、一般論としてはなんとなく説得力があるのは不思議ですよね。それは自分がそういうリーダーを求めていたり、そういう姿になりたいなぁと思っているからかもしれません。

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