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新規事業の始め方 5つの基本ステップ

      2016/02/05

会社の中で自分のやりたいことを実現したかったら、新規事業を立ち上げることがいちばんの近道です。言い出しっぺになってその分野の一人者になれれば、きっと誰もがあなたの意見に耳を傾けるようになってきますし、うまくいけば自分のアイデアを比較的自由に反映させたり、事業そのものをコントロールしやすいポジションにつけることもあります。
そのためには、まずは新規事業を立ち上げるための大まかなステップを知っておく必要があります。私の経験からすると、おおきく5つの基本的なステップがあると思うのでここでざっくりと紹介します。

1.アイデアを思いつく

自分の中であたためつづけてきたアイデアがあればベストですが、かならずしもそうとは限りません。むしろ「最近、うまく行ってないなぁ。何かいい打開策ないかなぁ」と悩んでいることのほうが多いと思います。そんなときには、むやみやたらに悩むのではなく、次に紹介するようなアイデアをひらめくための「足がかり」が必要です。

他業界のケースを研究したり、世の中の出来事から類推する。

日ごろから新聞などで他業界の動向に気をつけて情報収集をしておくことや、ビジネス書などで成功事例を見知っておくことが重要です。たくさんの事例を独自の視点で分類しておけば、業界がちがっても同じような要因で成功していることや、失敗していることがわかるようになってきます。私はどれだけ多くの、そして質の高いケースを頭の中できれいに分類できているかが、発想の転換を促す土壌になっていると思います。

お客さまの理想を邪魔しているボトルネックを探す。

結局は、お客さまにどれだけ評価してもらうかが新規事業が成功できるかどうかの基準になると思います。もし、お客さまが抱えている悩みを解決できるにもかかわらず、それを提供できない業界のしくみ(ボトルネック)を見つけることができれば、あなたの新規事業の半分は成功しているといっても過言ではありません。そのためには業界の構造的な理解が必要になってきます(後述「2.分析する」)。

とにかく書き出してみる

アイデアをたくさん出すためには、ひたすら書き出すことがいちばん近道だと思います。手で紙に書き出すことで、頭の中でぼんやりしていたことを論理的に組み立てることができるようになって、考えが足りなかった箇所とか矛盾している箇所とかが見えるようになってきます。また、ひとつのアイデアから他のアイデアに飛び火して視野が広がったり、思いもしなかったひらめき(エウレカ)が生まれることがあります。

寝かせる

どんなにいいアイデアが思いついても、自分のアイデアに酔っている間はとっても危なっかしいものです。そんな独りよがりのアイデアになっていないかどうかを見極めるには、しばらく放置しておくことがいちばんです。自分の頭の中からきれいさっぱり忘れてしまった後に、もう一度見返してみたときに、「やっぱりいけるよ!」と思えるようだったら次のステップに進めると思います。

現場に聞いてみる

現場の意見を集めてブレーン・ストーミング(ブレスト)をする方法もあります。ただ、この場合は注意が必要です。意見をあつめるつもりが批判合戦の場になってしまったり、常識的なアイデアに落ち着いてしまっては意味がありません。それを避けるためにも、あくまでもブレストの基本的なルール(どんな意見であっても否定しない)を徹底しておく必要があります。また、場の空気に左右されない自由な社風でないと意見がでてこないなんてことも多いものです。まずは他人にたよらず自分で考えてみることをお勧めします。

『アイデアのつくり方』
 1988/4/8
 著者:ジェームス W.ヤング

2.分析する

すでにアイデアを持っていたり、なんとなくよさそうなアイデアがでてきたら、次にやるべきことは分析です。分析の目的は、ずばり説得力を持たせる根拠づくりや裏づけ情報の収集と作成ですね。では、どういった視点での根拠づくりが必要なのでしょうか?

勝てそうか?

一番目の視点は、戦略の視点です。かんたんに言えば「あなたのアイデアで、競合に勝てるの?」という視点です。競合といっても同じ業界にいるライバル企業だけではありません。業界の上流や下流、代替品業界などの隣接業界への進出を考えていると、その業界のプレーヤーが分析の対象になります。また、一度勝つだけではだめです。勝ち続けるためには、かんたんにまねできない仕組みづくりが必要です。そういった視点での根拠を探していく作業です。戦略を学んできた人にとって、いちばん面白い分野です。

喜んでもらえそうか?

競合がまねできない商品やサービスを思いついたとしても、だれも見向きもしなかったら意味がありません。やはりお客さまに、何を喜んでもらえるのか?どれだけ喜んでもらえるか?を考えておく必要があります。この視点がないと、供給側の一方的な自己満足で終わってしまいます。お客さまに喜んでもらった対価として、どの程度の市場が見込めるのか?成長しそうなのか?といった分析がないと説得力のあるアイデアにはなりません。

できるか?

たとえお客さまに喜んでもらえるアイデアでも、それが実現できないと提供することができません。技術的な問題だけでなく、販売店のネットワークがないとか、業界内でのしがらみが強いとか、開発資金や人材が足りないとかいろいろ問題があります。この視点にたって分析することではじめて、業界のボトルネックがわかってくるケースも多いものです。

続けられそうか?

あなたのアイデアを事業として実現するのなら、その事業から利益を生み出し続けていく必要があります。そのためには、どれくらい収入があれば利益ができるのか?という損益分岐点の分析だったり、どれくらい続ければ初期投資を回収できるのか?という投資回収分析が必要になってきます。具体的な分析手法はいろいろあるのでここで説明はできませんが、利益を考慮に入れた視点を忘れていてはだれも納得してくれるはずがないことは常に頭に入れておいてください。

最初のステップと行き来しながら精度を高める

これまで4つの視点「勝てそうか?」「喜んでもらえそうか?」「できそうか?」「続けられそうか?」で分析することが大切だと述べてきましたが、すべてを一度で満足させることなんてできません。そこで、最初の「1.アイデアを思いつく」ステップに戻って再検討を繰り返すことになります。時間がかかりますが、アイデアに説得力を持たせるには必要なことです。多くのアイデアはこの段階で諦めてしまっていることが多いようです。

『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』
 2010/4/23
 著者:楠木 建

3.仲間を集める

自分のアイデアにある程度説得力を持たせることができて、自分もそれなりに自信がついてきたら、次に進むのが仲間を集めることです。たったひとりだけの意見であれば、ひねりつぶすのは簡単です。無視すればいいのです。しかし、それが不思議なもので何人か協力者がいるとわかると「ちょっと聞いてみようかな?」という気になるものです。意思決定者にぶつける前に、かならず協力者を集めるように心がけましょう。

5人あつめる

違う部門から協力者を集めることが理想です。営業、開発、販売促進、技術、サポートの各部門にそれぞれ一人ずつ協力者がいれば心強いです。これだけいれば、定期的に会合を開いてこっそりプロトタイプをつくったりして、すこしずつ進めていくこともできます。Googleの20%ルール(就業時間の20%を自分の時間にあてていいという社内規定)のような社内規定がある先進的な企業に勤めていれば、比較的人数も集めやすいかもしれませんね。各部門すべてで協力者をあつめられなくてもいいですが、少なくとも一人は関連部門に協力者がほしいものです。

リーダーになる

仲間を集めるときに注意しなければならないのは、言いだしっぺのあなたがリーダーになるということです。よくアイデアは出したけど技術のことや営業のことはよくわからないから、あとは各部門の専門家に考えてもらおうと考えている人もいますが、その姿勢ではぜったいに成功しません。そもそもそういう考えだから、各現場の意見が見えなくなってしまうのです。このたとえがいいかはわかりませんが、第二次世界大戦のいわゆるバトル・オブ・ブリテンで劣勢のイギリスが圧倒的優位のドイツを駆逐できたのは、チャーチルが専門外のレーダー技術や航空機の技術まで精通していたからだといわれています。新規事業を成功させるためには、ある分野が重要成功要因(KSF)だと判断したら、たとえ自分の専門外の分野に対しても、とことん引っ張っていくべきだと思います。

『人を動かす』
 1999/10/31
 著者:デール カーネギー

4.説得する

ここまできたら、事業開始までもうすぐです。分析結果で得られた説得力と協力者の力を借りて、意思決定者にプレゼンしましょう。ここがあなたのアイデアが離陸するかどうかの瀬戸際になります。

リスクをとる

承認をもらうということは、信頼される・信じられるということです。ということは、もし期待通りの結果が得られない場合は、あなたの評価は地に落ち「あいつにだまされた~!」なんてことになりかねません。実際、私の場合でも当初の計画通りに受注が伸びなかったため、陰口を言われていました。一度信頼が落ちると、回復するのは結構大変です。事業が軌道にのったいまでも私はトラブル・メーカーとして多くの人から心象悪く思われています。承認を得られていない段階なら、まだ引き返せます。自分のキャリアと引き換えに、どこまでリスクを取れるか?取るべきか?自分の本気度と比べてから乗り出すようにしましょう!

あきらめない

いちどリスクをとる覚悟ができたら、あとは前進のみです。どんどん反対されて、どんどん批判されましょう。筋のいいアイデアというものは、本来非常識に見えるものです。だから反対意見が多ければ多いほど、成功したときのインパクトは甚大なものが期待できます。なかには、いちど却下されたらもうダメだと思ってしまう人もいるみたいですが、私は何度却下されてもトライしつづけました。自分が納得するまであきらめる必要なんてありません。

ロゴス

アリストテレスによれば、相手を説得するには3つの要素が必要だといっています。「ロゴス」「パトス」「エートス」の3つがそれです。まず最初に「ロゴス」ですが、これはいわゆるロジック(論理や理屈)のことです。一般的に事実や論理的なつながりは普遍的な説得力を持つと言われていて、説得術の基本中の基本です。しっかりと論理的な説明ができるように日々努力しましょう。ただ、ロジカル・シンキングや論理的思考が万能かというと、けっしてそんなことはありません。世の中理屈だけでは動いていないものです。

パトス

パトスは説得する相手(聞き手)の感情のことです。この場合、新規事業を承認してもらう意思決定者の気分のことです。もしプレゼンで意思決定者の気分が最高にノリノリなったら、リスクはあっても比較的スムーズに承認してもえるかも知れません。このように、説得する時に聞き手の気分を前向きにさせるなど、承認しやすい気分に誘導することも説得のひとつのテクニックなのです。

エートス

エートスとは、あなた自身がもっている人間性や経歴、これまでの実績などの背景です。おなじ内容のプレゼンでも、だれが話すかによって説得力は変わってきます。おなじ事業計画でも、起業家によるプレゼンと学生によるプレゼンでは説得力はまったく違うはずです。起業家の意見は、これまでの成功経験を踏まえていると思って聞きいってしまうものです。学生の話は、想像で話していたり理想ばかり話しているような錯覚に陥ってしまいがちです。パトスとあわせて、ロジカル・シンキング信者が見落としがちな要素ですね。

『影響力の正体 説得のカラクリを心理学があばく』
 2013/12/17
 著者:ロバート・B・チャルディーニ

5.小さく始めるて、大きくなったら手放す

意思決定者から承認をもらったらおしまいではありません。こっからが勝負です。でも市場拡大を見越して、最初から大きな投資をして垂直立ち上げしたほうが得策なのか、それとも小さな投資でリスクを小さくしてからはじめたほうがいいのか、判断にまようこともあるかも知れません。

初期投資は小さく

新規事業で了承をもらうときのコツでもありますが、新しいことにはあまり金をかけないほうが承認を得られやすいものです、お金を出す側の心理としては、当然ながら、うまくいくかどうかもわからない企画に対して、大きな投資をするわけにはいきませんので、できるだけすくない資金で始めるように心がけましょう。また、失敗しても損害が小さいほうが再挑戦しやすいともいえます。私の場合は、テスト・マーケティングの一環ですという位置づけではじめました。そのおかげで、しばらく思ったより受注が伸びなかったときもありましたが、すぐやめさせられるようなことにはなりませんでした。

成功までには時間がかかるもの。小さいほうが隠れやすい。

投資が小さいほうがいい理由は、他にもあります。新規事業は市場に認知されるのに時間がかかったりして、事業が伸びるまでには時間が必要なものですが、そんなときに投資回収不可能だなんて思われないためにも、小さな投資ではじめていたほうが得策です。投資が小さいとほかの事業と比較する規模も比較にならないほど小さいので、大きな事業の影に隠れることができるし、横ヤリも入りにくくなります。隠れている間に損益分岐点を越えられるだけの準備をすすめましょう。

がまんする

成功までには時間がかかるとはいいつつも、自分が言いだしっぺだと、なかなか実績がでないと事業の行く末やまわりからの評価が気になってくるものです。でもそこは、じっと耐えましょう。信じてガマンするしかありません。運よく早く立ち上がってくれればいいのですが、失敗することも多いと思います。そんなときは、自信喪失、自己嫌悪になってしまいますが、めげずに何度でも挑戦しつづけましょう!それが事業家というものなのですから!

手放す

ようやくコツをつかんで、うまく軌道に乗った場合の話です。これまでは自分がすべてを企画して、手足も動かして来ました。そのおかげで事業を立ち上げることができたのかも知れませんが、いまからはゆっくり自分の手から離していく方法を考えていかないと、これ以上の成長が望めなくなってしまいます。新規事業の立ち上げが得意な人が、事業をまわすのが上手いとは限りません。そもそも、なにからなにまで自分でやろうと思っている人は、自分がいなくなったときに事業がどうなるかを考えていないことがあるものです。ある程度までうまくやったら、あとは成功を他人に渡してもいいぐらいの器の大きさをみせつけるくらいが、ちょうどいいと思います。

『企業変革のプロフェッショナル』
 2004/7/9
 著者:一條 和生

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