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業界構造ならファイブフォース分析です。目的とテンプレートを解説してみました。

      2018/08/13

ファイブフォース分析をする目的とは?

ファイブフォース分析(5フォース分析や5つの力分析とも言います)とは、市場のプレーヤーの力の源泉を市場内での位置づけによって5つに分類した分析方法です。
企業が市場の中でいろいろな競争相手と戦って勝ち抜くためには、どうやって戦うのか?といった競争するための戦略を考える必要がありますが、やみくもに情報を収集して分析してもあてずっぽうの戦略になってしまいますので、成功を運にまかせることになってしまいますよね。
だから、もう少し賢く戦おうとするには、まずは市場の中のパワーバランスを分析しないといけません。

自社が手がけているビジネスが、儲かりそうもないビジネスなのか?そして、なんで他社は儲かっているのか?儲からないのか?といった理由を、市場や業界内の競争相手などとのパワーバランスから割り出して、いちばんいいポジションをとってしまおうという考え方が根っこにある分析方法なのです。
簡単に言ってしまえば、業界内の力関係を分析しようとするのがこのフレームワークなのです。

そんなファイブフォースは、フレームワークの名前にもあるように、市場で起こっている競争優位性は5つの要因(ファイブフォース)によって決まると、ハーバード・ビジネススクールの教授であるマイケル・ポーターが1980年に著した『競争の戦略』によって提唱されました。
同書は、企業が属する業界を分析し、これに基づいて競争に勝つ戦略を策定する技法を解説したもので、MBAホルダーや経営学者でなくても、ビジネス戦略を学ぶ人なら誰もが知っているほど有名な書籍となりました。

ファイブフォース分析のテンプレート 5つの競争要因

では、5つのフォースとはいったい何なのでしょうか?
それは、「新規参入者の力」「業界内の競争業者の力」「代替品・代替サービスの力」「買い手の力」「売り手の力」の5つの影響力のことです。それぞれの「力」が業界全体に対する影響力がいったい何なのかを知るだけでなく、どのような状況になると(なっていると)不利なのか?または競争が激しくなってしまうのか、また、そのような状況に陥ったときに取れる対策とは何なのか?を知ることが、競争を勝ち抜く上で重要だという考え方に基づいています。
余談ですが、このような考え方は経営戦略の用語で、ポジショニング戦略と言われ、自社のもつリソースが勝敗を決するという考え方(リソースベースドビュー戦略)と対立する考え方で、経営戦略上の議論をまき興した思想のひとつです。
ファイブフォース分析とは、業界全体の構造(パワーバランス)を知ることだけでなく、一般的にどのような原因が考えられるのか?そして基本的な対策手段について考察を進めるための分析手法なのです。

それでは、ひとつひとつ見ていきましょう。

「新規参入者の力」

まず、「新規参入者の力」では、業界にあらたに参入してきた新規参入企業の力のことです。
一般に、ある業界に自分と戦う相手が増えれば増えるほど、価格競争になったりして自分の取り分が小さくなるので、できるだけ新規参入者がないほうが望ましいので、新規参入者の力(参入のしやすさ)を分析することで、業界への参入障壁の大きさを分析したり、検証したりすることができます。
逆に、参入障壁がたかければたかいほど、新規参入者が参加してくる意欲は薄れ、業界が脅威にさらされる可能性は減ります。

たとえば、いくつかの大手企業が、すでに大量生産をするために工場などの設備投資をがんがんやっていて、規模の経済で市場をがっちりおさえているとしたら、新規参入者はライバル以上の設備投資を強いられるはずなのでリスクが高くなります。
つまり、参入障壁は非常に高くなるのです。
逆に、インターネットを利用した商取引のように、比較的、誰にでも始めやすいビジネスは、投資金額も少なくてすむし撤退もしやすいので、参入障壁は非常に低いもののになります。
しかし、その一方で競争が激しくなり、利益も小さくなってしまうかもしれません。
当然、参入障壁が高いほど、既存企業が競争優位に立てることは言うまでもありません。

新規参入の障壁が低くなる要因

新規参入の障壁が低くなる要因は、簡単にいうと業界内のプレーヤー一社が負担する市場の構築・成長・維持にかかる費用が少ないことです。代表的なものとして、商品やサービス提供時にかかる技術、法規制、市場にニーズの変化にかかる費用が小さくなったときなどです。たとえば、これまで業界内に閉じていた独自の手法が、何らかのテクノロジーによって一般化されることで参入障壁が低くなるなど、様々なトリガーで低くなることがあります。わかりやすい例として、インターネットの普及などがそれです。
自分の業界への参入リスクに目を向けるだけではなく、他業界への参入を検討するためにも、常に目を光らせておく必要があります。

  • 技術的に誰にでも出来る商品やサービスの提供
  • 法律や規制がない、小さい
  • 事業の立ち上げにかかる費用が小さい
  • 市場ニーズを自分で作る必要がない
  • 販売チャネルなどが整備されている
  • 既存企業の認知度に影響されない
  • 自社の認知度を利用できる

<対策>新規参入の障壁をつくるには?

上で述べたような参入障壁が小さくなるトリガーは、基本的にはいつ起こるかわかりません。そのため、常に参入障壁の構築の努力が必要なのですが、それでは新規参入者の力をそぐ対策にはどのようなものがあるのでしょうか?
代表的な参入障壁には以下のようなものがあります。これらの参入障壁になりそうな要素が少ない業界は、競争相手が増え自社の取り分が少なくなるはずです。

  • 仕入先の切り替えコストを高くする
  • 必要な資材の入手を難しくする
  • 巨額な投資を行う(サンクコスト)
  • 大量生産ラインをもつ
  • ブランド・エクイティを高める
  • 流通チャネルを抑えてしまう
  • 大量販売チャネルをもつ
  • 独自の技術で製品の差別化を行う
  • 経験曲線効果で生産効率を高める
  • 政府の規制や制約で守ってもらう
  • 学習の優位性を高める
  • 報復する構えを見せる

「競争業者の力」

次の「競争業者の力」は、業界の中でおこっている直接の既存競争業者の力のことです。
ここでは、市場でよくぶつかるライバル企業の強さの大きさや源泉を分析します。
この場合、日常の業務の中で、お客さまから自社の製品と比較される会社が業界内の「競争業者」だと思って間違いないでしょう。
商品開発の場合は、シェアを競い合っている相手であったり、機能が似通っている製品を開発している相手であったりします。

競争業者との競争が激しくなる要因は?

業界内の競争業者の力を測ることは、自分の業界の力を測ることに他なりません(相手にとっては自社が競争相手ですからね)が、どういった症状が現れたとき競争業者の力、ひいては業界内の競争が激しくなったといえるのでしょうか?
業界内の競争が激しくなると言うことは、競争に勝つための費用が高くなり、自社の取り分が少なくなってしまうと言うことです。

成長産業では、できるだけライバルよりも先に多くのお客さまを獲得したいという気持ちから、少しでも安く提供できるようにムリな価格競争をしてしまったりしてしまいますし、競争相手が多い場合は、お客さまから見たときに自社が多くの選択肢の中のひとつにしか見られなくなってしまうため、自社の魅力度が相対的に小さくなってしまいます。
つまり、競争相手が多ければ多いほど、1社当りの力が小粒になってしまうということですね。
このように、一般的には、成長産業や同一業界内に競争相手が多すぎる業界などでは、競争がより激しくなる傾向があるといわれています。

  • 同業者が多い
  • 類似した規模の会社が多い
  • 業界の成長が遅い、成熟産業である
  • 付加価値当りの人件費、設備投資、広告費、在庫コストが高い
  • 製品の差別化が少ない
  • 買い手が容易に乗り換えられる
  • キャパシティを一挙に増やさなければならない
  • 一時的な業界の過剰生産力、供給過剰が発生しやすい
  • やめたくてもやめられない、撤退障壁が大きい

<対策>競争業者の力をそぐには?

いかに効率よく付加価値を高めることが鍵となってきます。そのためには差別化が重要であり、簡単に真似されない仕組みやビジネスモデルを構築することが出来れば、競争に勝つことが出来ると言われています。

  • 商品やサービスの品質、価格、デザインなどを他社よりも良くする
  • 商品やサービスを他社よりも、容易に手に入れることが出来るようにする
  • 商品やサービスを提供するコストが他社よりも小さくする
  • 特許などで真似することができない技術を開発する
  • 圧倒的な販売網やブランドを構築する

「代替製品、代替サービスの力」

これまでは直接競合する関係になかった企業の製品やサービスが、ある日突然、競争相手になってしまったりすることがあります。代表的な例が「代替製品、代替サービス」の脅威です。

たとえば、デフレが続いていた時代、有名牛丼チェーンや有名ハンバーガーチェーン店は、値下げを繰り返していました。
業界内のライバル企業もこぞって追随したので、昼食時の牛丼チェーンにはサラリーマンがあふれかえし、ハンバーガーチェーンには学生や子供連れの主婦層でごった返していました。これらのチェーン店は信じられないくらい値下げをした結果、大量の集客を実現しつつ、利益も出していたのですが、よく考えてみると、業界内で激しい競争が起こっていたはずです。それにもかかわらず、なぜ彼らはこのような芸当ができたのでしょうか?

それは、これらの牛丼チェーンやハンバーガーチェーンは、これまでのサラリーマンや学生たちの主な外食先であった、商店街の定食屋やファミリーレストランなどからお客を奪いつづけていたため、値下げをしてでも利益を出せていたのです。
つまり、牛丼やハンバーガーは、定食屋やレストランにとっての「代替品・代替サービス」だったのです。
このように、目先の業界の競争だけでなく、はばひろく代替製品や代替サービスを事前に分析しておくことが重要なのです。

代替品、代替サービスの力が強まる要因は?

上で説明した牛丼チェーンのようなケースになるときは、どのような場合なのでしょうか?
簡単に言えば、代替品や代替サービスが、自社が提供する商品やサービスと同じ機能と性能を提供できるかどうかがポイントです。
もし、代替品や代替サービスが自社の製品の機能と同じ性能を提供でき、価格やその他の付加価値で勝るようになってくれば、代替品・代替サービスの力が大きくなってしまいます。

  • 代替品が自社の商品と同じ機能や性能を提供できるとき
  • 代替品のコスト・パフォーマンスが高いとき
  • 高収益を上げている業界によって生産される製品が、同じ機能を実現したとき
  • 自社が提供する商品の機能や性能が供給過剰になったとき
  • 代替品のブランドに対して、買い手の許容意識が高まったとき
  • 代替品の認知度が高まったとき

<対策>代替品、代替サービスの力をそぐには?

代替品、代替サービスの脅威は、自社の商品やサービスと同じ機能を提供できるかどうかがポイントでした。これは基本的に同業内の競争者と同じ構図になっています。したがって対抗策も差別化など似たようなものになるのですが、業界内の論理や文化、特異性を代替品に対しても押し付けることが出来れば、別の手段で対抗することも可能です。たとえば、流通チャネルの独占・維持、ネガティブキャンペーンやOEMを持ちかけることで自社のラインナップに取り込んでしまうことも可能でしょう。要するに地の利を生かした戦い方が出来れば勝つチャンスは大きくなるでしょう。

  • ハイエンド化、機能の高性能化、高品質化
  • ターゲット顧客の再定義、絞込み
  • 商品のサービス化
  • 保有技術の二次利用化
  • OEMによる取り込み
  • チャネルの維持
  • ネガティブキャンペーン

「買い手の力」

「買い手」とは、お客さま、顧客のことです。
つまり、買い手の力を分析することとは、顧客の交渉力を分析することですね。
買い手市場、つまり顧客の力が売り手より上回っている場合では、顧客が値下げを要求してきたり、売り手同士を競争させて値を下げさせようとします。
その結果、業界の収益性は低下することになります。

買い手の力が増す要因は?

では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
それは、パワーバランスというものが、売り手の数が少ないと強くなり、多いと弱くなる特性があることに関係してます。簡単に言うと、お客に、たくさんの売り手の選択肢があったら「ほかから買っちゃうよ?」といえるようになってしまうと言うことです。
これを希少性といいますが、交渉力を高めるには、自社しか提供できない価値や持っているか、相手が知らない情報を持っているかどうかが、大きな鍵を握っているのです。
このように、買い手市場になる理由や売り手市場になる理由を探ることで、自社を最適なポジションに位置づけることができるはずです。

  • 買い手が集中化して大量購入するとき
  • 買い手が売り手と同じ情報を知りえるとき
  • 買い手のコスト全体に占める割合が大きいとき
  • 簡単に取引先を変更できるとき
  • 買い手が川上統合に乗り出す動きがあるとき
  • 売り手の製品が、買い手の製品やサービスの品質に影響をおよぼさないとき

<対策>買い手の力をそぐには?

5つの力のいずれの場合もそうですが、対策の基本はスイッチングコストを高めることです。買い手への対策についても同じで、買い手が他の売り手に移ってしまわないようにすることが基本となります。たとえば、自社のほかに業者がいない状況を作り上げたり、または、他の売り手に乗り換えた場合に大変なコストが発生する状況を作り上げることです。
代表的な例としては、情報の非対称性をうまく作ることがあげられます。もし買い手が商品の原価まで知ってしまったら、そこまで値引きしようとするでしょう。逆に、買い手が、もう原価ぎりぎりだと思ってくれたら値引きする意欲はなくなるでしょう。このように売り手だけが知っている状況をつくることが基本的な対策となってきます。
このような工夫をして、さらに「買い手は他にもたくさんいるから、あなたに買ってもらえなくても平気だもんね!」という強硬なメッセージを伝えることができれば、買い手の力をそぐことができるはずです。ようするに言葉は汚いですが、「相手の足元を見る」ということですね。
いくつか対策があるので、以下、簡単に述べておきます。

  • 競合企業の買収による売り手の数の削減
  • 顧客数拡大による1社当りの売上依存比率の低下
  • 商品やサービスの業界標準化
  • 買い手が容易に代替品に切り替えられないような機能やサービスの開発
  • ドミナント戦略等による顧客アクセスの制限
  • 価格のブラックボックス化、複雑化

「売り手の力」

今度は、買い手の力の逆のケースですね。
「売り手の力」を分析することとは、資材や部品の調達先などの供給業者の交渉力を分析することと同じです。仮に原材料調達先の企業が大きな力を持っている場合、調達先のいいなりで原料を仕入れなければなりません。その結果、収益は低くなってしまいます。買い手の力のところで述べたことと、同じこと(希少性、情報の非対称性)が起こるのです。
つまり、売り手市場のときは、高い価格でも買わざるをえないので、業界の収益性が低下し企業にとっては好ましくない環境になります。

売り手の力が増す要因は?

売り手の力が増す要因は、買い手の力が増す要因とまったく逆のことです。重複してしまいますが、簡単におさらいながら説明すると、売り手の数が少なく、買い手の数が多いと、顧客は自社以外から購入することが出来ないため、売り手の力が強くなります。また、売り手だけが知っている情報が多く、買い手は知りえなくなると、売り手の力が強くなります。

  • 売り手の業界が、少数の企業によって牛耳られているとき
  • 代替品や代替サービスがないとき
  • 買い手が売り手にとって重要な顧客ではないとき
  • 売り手の製品が買い手の事業にとって重要なとき
  • 売り手の製品から他の製品に簡単に変更できないとき

<対策>売り手の力をそぐには?

売り手の力をそぐには、ここでも基本的に買い手への対策と逆のことをやることが中心です。つまり、いつでも他の売り手に移れるという状況をつくることが基本となります。たとえば、ほかに買い手がいない状況を作り上げたり、または、売る側が他の買い手を捜すのに大変なコストが発生する状況を作り上げることです。

代表的な例としては、たとえば相見積です。競合業者の提示してきた価格やサービスを見せることで、情報の非対称性をうまく解消する工夫などがあげられます。もし買い手が大量購入しようとしている場合、競合よりも安い価格を提示したり、より高い付加価値サービスを提案してくるでしょう。このように売り手だけが知っている状況を回避することが基本的な対策となってきます。

しかし、寡占化がすすんだ業界では、そのような対策が難しくなってきます。たとえば、Google、Apple、Facebook、Amazonなどのネット企業は寡占が容易であるがゆえに、乗り換えが困難で、売り手の力が強くなってしまいます。
それ以外でも、一般的に、売り手は企業合併したり、業者間で連絡を取り合ったり、製造原価を知っていたりなどして、売り手側に有利な情報の非対称が生まれやすいのが、世の常です。そのため、根本的な売り手の力をそぐ手段というのはなく、独占禁止法という法律によって、買い手に不利な情報の非対称が生まれないように監視しているのです。

  • 相見積をする。または競合企業の提示内容をちらつかせる
  • 売り手に対して、自社の売上依存比率の高める
  • 代替品や新規参入企業の商品と比較する

ファイブフォース分析を使った戦略立案と分析の進め方

ファイブフォースの理屈は、業界の構造がゲームを左右するという考え方に基づいています。
したがって、業界構造のありかたを分析することは、企業が戦略を策定するうえでの基礎作業になるという考えです。
上述の提唱者であるマイケル・ポーターの言葉を借りると、業界構造のあり方は「会社が今後とりううる戦略に大きな影響をもつだけでなく、競争ゲームのルールを大きく左右する」からだというのです。
戦略策定にあたっては、これらの5つの要因を分析して、業界のパワーバランスと自社の位置づけ(ポジショニング)を適切に認識する必要があるのです。

ただ、5つの力といっても、基本的には、交渉力の源泉は「希少性」と「情報の非対称性」です。
そして、競争相手といってもしょせんは人間ですから、人間に特有の「サンクコスト」や「スイッチングコスト」などの心理的な側面も考慮に入れて、各種プレーヤーの立場になって考えればいいことなのです。

つまり、分析をするにあたっては、自社が希少性を持っているか?自社だけが握りえる情報があるかどうか?といった視点から分析を始め、5つの力の源泉として、サンクコストやスイッチングコストがどこまで大きな影響を持っているかということを分析することで、業界にとどまり続けるのか、新たに魅力的な業界を見つけて参入するかを決断することができるはずです。

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